第3話ー2023年12月(2)

 そうだよなぁ、と思った。

 今日の飲み会には、カリナも来ていた。

 カリナは、別の女の子たちと話をしていた。

 ヒロアキは、少しだけ、内気だったから、やはり、話ができなかった。

 それでも、上司の大川が、みんなと一緒に、これから、飲みに行こうとしていた。実は、お酒を飲みに行くとは、言いながら、課長も飲めないし、ヒロアキも、飲めなかった。

 ヒロアキは、内心

ーカリナは、飲めないのか?

ーカリナが、お酒を飲むことができて、オレが、飲めないなら、嫌だな

 と変な自尊心が、あった。

 ヒロアキは、少しだけ、変なこだわりが、あった。

 身内で、お酒が飲めないヒロアキは、何となく肩身の狭い思いをして

ーオレ、何か、男らしくない

 なんて勝手に思っていた。

 誰かが

ーヒロアキ君は、飲めないからって、そんな事を、気にする必要はないよ

 なんて言葉をかけてもらえなかったから

 とは、思えなかった。

 ヒロアキは、大阪に従弟が、いるが、相性の悪い従弟に

ーヒロアキ君、そんなお酒の飲み方は、あかんで

 なんて言われて、何となく傷ついていた。

 大阪の従弟は、出来が良かった。

 従弟は、京都公立大学工学部にいて、アメフトをしていて、身体が大きい。一方で、ヒロアキも、大阪の従弟と背丈は同じだが、身体が、少しだけ、痩せている。何故か、コンプレックスが、あった。

 そして、ヒロアキは、自分の母親が

ーまあ君は、優秀だね。勉強もして、アメフトもして

 なんて言われて、何となく比べられて、嫌だった。

 …

 ただ、今は、カリナが、みんなと楽しそうに、歩いている。

 夜の街を、みんなで、歩いている。

「今日さ」

「はい、大川さん」

「お酒が、飲めない人って、僕と大川君と長澤君だって」

「え?」

「だから、今日は、飲めない僕と大川君と長澤君の3人で、一つのテーブルだから」

と言った。

 何だか、急に、親近感が湧いてきた。

 カリナって、お酒が飲めないのと思った。

 居酒屋へ行くと、カリナは、ヒロアキと課長と3人で座った。

 飲み会が始まった。

 カリナとヒロアキは、オレンジジュースを頼んだ。

 課長は、メロンジュースを頼んだ。

 そして、他のみんなは、座敷で、顔を赤らめて、刺身やら唐揚げを食べている、ビール片手に。

 お酒が飲めないカリナと、ヒロアキと課長は、何となく、安心して、唐揚げを食べ、刺身を食べて、良い雰囲気で、何やら雑談をしていた。

 勿論、ヒロアキは、カリナが、お酒を飲めないということで、寂しい思いをしなくて済んでいた。

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