第2話ー2023年12月(1)

 ヒロアキは、カリナを何となく意識していた。

 先日、カリナは、ヒロアキにチョコレートを渡したのだから、と思った。そして、そのチョコレートは、美味しかったと言える。

 もう、季節は、2023年12月になっている。

 外は、寒くマフラーがないとやっていけない時期になっている。

 ここ、最近では、どうも、一番の寒さらしい。

 確かに、カリナは、女優の上白石萌歌に雰囲気が、似ている。

 瞳が、大きいと分かるし、顔の輪郭が似ている。

ーもう、12月かぁ

 とため息をついた。

 そうだなぁと思った。

 今年も、彼女がいないまま、人生が終わるのかと思っていた。

 ここの会社に勤めて、何年か経ったけど、もう、そんなに経つのかとも思った。

 ヒロアキは、何となく、椅子に座って、スマホで、上白石萌歌の画像を観ていた。どうも、2023年秋には、フジテレビで『パリピ孔明』というドラマに出ていて、歌手の月見英子の役をしていた。

 普通の女の子が、歌手になる話だった。

 いや、ヒロアキだって、何かしたいと思いながら、いつも勇気がなかった。

 それで、もう40代になっている。

 こんな人生が、それで良いのかと悩む。

ーああ、オレは、上白石萌歌が演じている歌手の月見英子みたいになれないのかなぁ

 と思っていた。

 だけど、それ以上に、テレビドラマを観て思ったのは

ー本当は、上白石萌歌と付き合いたい

 は、誇大しているとは思いながら

ーカリナと一緒に遊びたい

 などと思っていた。

ー付き合いたい

 などと思っても、職場でそうではない時

ーこれからご飯へ行きませんか?

 と言えなかった。

 言いたいのに、言えなかった。

 だが、と思った。

ー食事へ行きたい

 気持ちと

ーかっこ悪くて言えない

 気持ちが、拮抗していた。

 そんな時だった。

 職場の上司の大川が

「太田君も、今日は、みんなで、お酒を飲みに行かないか?」

 と言った。

「え、良いんですか?僕、お酒を飲めないから」

「いや、良いよ、だって、僕だって、お酒を飲むことができない、下戸だから」

 と言った。

 そうだ、と思った。

 ヒロアキは、大学生の時、お酒で失敗をして、それで、お酒で、随分、コンプレックスを抱いていた。

 だが、大川課長だって、「僕だって、そうだ」と言っている。いつも、部下のヒロアキを、優しくフォローしているこの上司は、優しいなと思ってついていくことにした。

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