東京まで

坂中祐介

第1話

ここは、東北新幹線新青森駅の近所のある街の話だ。40代になった中高年のミツルは、ある日、バイト先で「お前の仕事は、何だ?」と言われて、凹んでいた。いや、バイトとは塾講師である。一応、社会の講師をしているが、同僚の西内と口論になっていた。

 実は、色んな事情から、大学から大学院に行き、そして、社会人になったが、未だに、ミツルは、苦労をしている。

 そして、2023年12月は、災害級の大雪が、この青森県にも降るとニュースで言っている。

 いや、ミツルは、国立大学は、出ていた。山形大学を出ていて、優秀だったが、勉強ばかりして、遊びができず、中高年になった。そして、家に帰ったら、両親がいて、「ミツルは、ずっと家にいて欲しい」といつも言われていた。

 ミツルは、優しいのだが、だが、悶々としている。

 そして、ミツルは、いつも欲求不満になっていた。

 そう、彼女が、いない。

 山形大学にいた時は、彼女が、いた。

 彼女は、横浜の女の子だったが、彼女は、ミツルに弁当を作って、ピクニックへ連れて行ったこともあった。

 ところが、今は、ミツルは、新青森駅の近所の地元にいて、40代後半の彼には、「冒険したいが、できない」も、あった。そもそも、寒いで有名な青森県だが、それ以上に、年を取った両親が、心配だった。弟のキヨシは、もう家にいないが、今では、3人で、暮らしている。

 でも、ミツルは、40代後半になっても、未だに、女優の有村架純だの上白石萌歌だのたまに、AV女優を好きになって、そうした手合いの動画をよく観ていたが、この中高年になって、同僚の西内に揶揄われたことが、悔しかった。ただ、ミツルは、本当は、「東京の大学へ行きたい」もあった。

 でも、ミツルは、母親に「頼むから、東京へ行かないで欲しい」と言われて、山形大学へ進学をした。

 ところが、ミツルは、塾のバイトで、西内が嫌になっていた。

 それで、バイトの愚痴をこぼしに、ミツルは、キャバクラへ行った。

 そこには、女の子が、座っていた。彼女は、それこそ、有村架純に似ているとミツルは、思って、チューハイを頼んだ。

 そして、ミツルは、有村架純に似た彼女と話をした。

 「名前は、何?」

 「リカ」

 「最近、入ったの?」

「うん、そうよ」

「へぇ」

「有村架純に似ているね」

「よく言われる」

「可愛いね」

「ありがとう、ところで、お兄さん、元気なさそう」とリカは、心配そうに言った。

「バイト先で嫌なことがあって」とミツルは、言った。

…「だったら、遊んだら?」とリカは、言った。

「遊ぶ?」

「うん」

「例えば…?」と言った。

 リカは、生まれは、東京だが、会社勤めをしていた時、ショックで北陸新幹線で金沢まで日帰りをした、と言った。

 それで、地方暮らしも良いと感じた。

 そもそも、空気が上手い。だが、「東京は、色んな人が来る」とも言った。

 マイペース『東京』という音楽が、あった。あれは、ドラマ『東京タワー』のBGMにもなっていたな。リリーフランキーさんが、書いたのだったか。「ミツルも、一度、東京へ旅行してみたらどう?」と言った。ミツルには、神奈川県三浦市の三崎口に、従兄が、住んでいる。

 次の日、土曜日・日曜日と、休みだったから、ミツルは、両親に「旅行へ行ってくる」と言って、新青森駅から東北新幹線はやぶさ、で、東京へ向かった。

 そもそもグリーンのはやぶさ号は、早い。

 ミツルは、何て言えば良いのか分からない。

 東北新幹線はやぶさ号は、新青森から盛岡過ぎて、あっという間に、東京まで着いた。

 ミツルは、少し、思い出した。そうだ、と。上野駅から山手線で、品川駅まで出て、そこから京急快特三崎口行きに乗った。

 人の数は、確かに、青森県より東京の方が多いだろう。そして、ごった返している。そして、京急快特三崎口行きを乗った時、ミツルは童心に帰った。

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