第3話
「 ユゥルティア・フォン・ヒューガルド辺境伯閣下。拝謁致します。643代目
「いやはや、
先触れを出してから程なくして、領主の館にて応接間に通されたロゥグンは、辺境伯の歓待を受けていた。
「ありがたく。……さて辺境伯閣下、早速本題なのですが、私は、自らの持つ
ロゥグンの来訪した理由を告げられた辺境伯は、その
「……ほう、今代の
領主でありながら、優秀な経営者としての才も併せ持つ
「……我ら
「人類のものにならない?」
「はい、閣下。ご存知の通り、この世に存在するあらゆる酒は、我ら
「……なるほど、あなたの望みは分かった。しかし、それでも解せないことがあるね。何故わざわざこのような辺境の我が地でする必要があるのかどうか。そして人の作りし琥珀酒に、濃密なマナが含まれているのかどうか。仮に琥珀酒の味を再現できたとしても、マナが含まれないのであれば偽物との
この世界のあらゆる生物は、食物を摂取することによって大気や食材に含まれるマナを取り込み、その一部を自身の力とする。食事は修行や生死をかけた戦いによって
そして食事の質が高いほどにマナの吸収効率は上がるため、貴族は幼い頃から質の良い食事を続けることによって、強力な
貴族の役割は質の高い訓練や食事を保証されることと引き換えに
ヒューガルド辺境伯家の一人娘であった彼女は、20年前の魔王との戦いで戦死した父親から若くして
「琥珀酒を作るためには、良い水、良い木、そしてよい麦が必要です。このヒューガルド領に流れる川は美しく、その川が流れる肥沃な山は下流へと土砂を運び、農村地域での豊富な麦の生産を可能にしております。この地にはその全てが揃っているのです。そして閣下はご存知かとは思いますが、旧魔王領との境界には、泥と枯れ草の広がる
泥炭とは、寒冷な気候によって堆積した植物の腐敗が遅くなり、堆積したものだ。非常に軟弱な地盤であるため、家屋や道路を敷設することも出来ない厄介な代物だ。
ヒューガルド領は、旧魔王領との国境付近に存在する泥濘地帯を
「ああ、確かに存在するね。あそこで取れる泥は乾燥させてよく燃える優秀な燃料になるが、いかんせんあの泥濘地帯はかなりの広さを持つ。あれが琥珀酒を作るのに関係あるのかい?」
「はい。琥珀酒の濃厚で芳醇な香りと味わいには、あの
「……よろしい。私の目に狂いは無かったようだね。侍従長、
「お話中のところ申し訳ありません!火急の用にて失礼いたします!」
「どうしました?水でも飲んで落ち着きいてから報告なさい。」
息を切らしながら部屋に乱入してきた狼獣人の男は、侍従長に水を渡されると一気に飲み干し、伝令を伝えた。
「フリエリより北東の泥濘地帯の監視部隊より、
その知らせは、魔王が滅び、平和を享受しようと歩み始めたフリエリの街を揺るがした。
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