第33話 過酷な実技試験

 防御の実技が終わって休憩時間に入る。アネットは俺に言う。

 「宮廷魔法士はみんなあんなにすごいの。」「分からないけど、ローズ先生はアネット並みに魔力が大きいわよ。」

 「アニエス様、いつの間に私にキャリブレイトを使ったの。」「中級魔法士の試験の時にちょっとね・・・」

 「私にもキャリブレイトを使わせなさい。」「いいわよ。アネットより少し小さいくらいだから。」

 「なら、いいわ。アニエス様の場合、魔力の持続力が脅威だから。」「少しスタミナがあるだけよ。」

そこにアニタが来て言う。

 「競技場の中に魔物の気配があるんですけど。」「魔物、こんなところにいるのかしら。」

アネットが探知の魔法を使う。

 「いるわよ。おそらく9匹いるわ。」「まさか、魔物と戦わせるつもりかもしれないわ。」

 「魔法士が単独で魔物と戦うなんて試験でやるわけないわ。」「そうならいいけど。」

俺とアネットは悪い予感がする。休憩時間が終わって、残った4人の受験者は観客席に集められる。5人の試験官も観客席に上がる。

 すると檻が運ばれてくる。中には黒い毛並みの大きな牙と爪を持つ2本足で立つ魔物が入っている。アネットがつぶやく。

 「ワーウルフよ。」

俺は初めて見るがかなり強い魔物のはずである。試験官の1人が説明する。

 「ワーウルフ1体と1人で戦ってもらいます。命の保証はできませんので棄権するのなら申し出てください。」

最初はポールが戦うことになる。ポールがグランドに降りると檻の扉が開かれる。ポールは素早く詠唱してファイヤーボールを撃つ。

 ファイヤーボールはワーウルフに当たるが止まらない。炎に包まれながらポールに迫り、彼の右腕を肩から食いちぎる。

 さらにワーウルフの爪が彼の首に伸びる。その瞬間、ワーウルフの頭がはじける。ローズが魔法を撃ったのだが何を使ったのかわからない。

 ポールは救護者に運ばれていく。ちぎれた腕も腕のいいヒーラーなら元通りに出来るだろう。次の受験者は棄権してしまう。

 俺の番が来る。グランドには新しい檻が運び込まれる。俺がグランドに降りると檻の扉が開かれる。ワーウルフは俺に迫って来る。

 ワーウルフの動きは早いが対処できないほどではない。ワーウルフは右手の爪で俺を引き裂こうとする。俺は半歩足を引いて体をずらして爪をかわしながら右手を払う。

 俺は右手を払った瞬間、サンダーボルトを放つ。ワーウルフは黒焦げになって倒れる。一瞬のことで観客はざわめくが落ち着くと拍手に変わる。

 最後はアネットの番である。アネットがグランドに降りると新しい檻の扉が開けられ、ワーウルフが飛び出す。アネットは高速詠唱でファイアーランスを10本作りだし撃ち出す。

 ワーウルフは素早く動いてかわすが2本の槍に貫かれる。しかし、動きは止まらない。彼女はワーウルフの爪が届く直前にマグマウォールの防壁を作りだす。

 マグマウォールに突き上げられたワーウルフは焼かれて命を落とす。

 俺は次に何をさせられるのか構える。試験官が言う。

 「これにて、実技試験を終わります。」

アネットが安心したように息を吐きだす。俺とアネットは結果発表を待つ。

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