第26話 ファヴィアンの相談

 バレーヌ伯邸の門の前に馬車が止まると俺とアニタは降りる。御者は馬車を裏へ回す。門番が門を開けてくれるので中に入ると玄関にはバレーヌ夫妻が迎えに出てくれている。

 「ファヴィアン様、お久ぶりです。」「アニエス嬢、見違えるように美しくなったね。アニタも従者を立派に勤めているようだね。」

 「ありがとうございます。アニタも剣の腕を上げていますわ。」「ボドリヤール伯領では、飢饉による飢餓を回避したと言うが本当かね。」

 「はい、私が食料の備蓄を進めたのです。」「飢饉を予測していたのですか。」

 「いいえ、食料の備蓄がされていなかったので改善したのです。飢饉は偶然に起きたことです。」「素晴らしい、私の所にもアニエス嬢のような才覚のあるものがいれば・・・」

 「今は、立て直すことが大事だと思います。」「そうですな。ぜひ、ご相談に乗ってください。」

他の領主の財政のアドバイスをすることになるとは思わなかった。バレーヌ伯領は途中の村で見てきた通りひどい有様である。うーん、どうしたものか。

 俺たちは広間で夕食を取る。アニタは従者なので別に食事をとる。俺は、ブレーズ・フォン・バレーヌがどうなったのか気になったが話題にすることを止める。

 するとファヴィアンが息子のブレーズについて話す。

 「息子のブレーズはバレーヌ家から追放して、今は冒険者をやっています。中級魔法士ですので何とか食べていけるでしょう。」「そうですか。」

 「処分が甘かったですか。」「いいえ、処分はファヴィアン様に託されたのですから、申し上げることはございません。」

 「寛大な処置を感謝しています。」「今は領民のことを考えるべきだと思います。」

 「そうです。餓死者が出ていると聞いています。」「街の中は食べるものが無いのですか。」

 「いいえ、春から少しづつ食料が入ってきましたので値段は高いですが食料はあります。」「問題は村々ですね。」

 「はい、このままでは税を取れません。」「今年は村から税を取ることを止めませんか。」

 「それでは収入が減ります。」「村の状況を調査して食料の無いところには食料の配給をしましょう。」

 「私が食料を買い上げて村に送るのですか。」「はい、村がつぶれてしまってはおしまいです。」

 「確かにそうですが・・・」「ボドリヤール家では庭で炊き出しをして貧民に食事を配りました。」

 「ジルベール殿がそんなことをしたのですか。」「はい、お父様は皆に優しいです。」

 「分かりました。アニエス嬢の言う通りにしましょう。」「ありがとうございます。」

これでバレーヌ伯領の村も少しはましになるだろう。

 夕食の後、俺はアニタと一緒に風呂に入る。俺には最近気にしていることがある。俺の胸はつるペタである。まだ7歳だし仕方がない。そうに違いない。

 しかし、アニタの胸が膨らんできているのである。1歳年上だし仕方ないのかもしれない。だが、納得はできない。アニタが俺の視線に気づいたのか。

 「アニエス様、どうかしましたか。」「アニタ、胸大きくなっているよね。」

 「そうですね。戦闘の邪魔です。」「・・・」

持てる者の余裕か。けしからん。しかし勝敗はすでに決しているので黙っておくことにする。

 夜、アニタは俺の部屋に来る。俺たちは一緒に寝ることにする。もちろんドアにはカギをかけて、検知の魔法をかけておく。

 アニタとは久しぶりに寝るので耳をもふらせてもらう、これでローズがいれば最高なんだが・・・

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