第24話 次の春
俺とアニタは、毎日早朝、ダリミルから拳法を習っている。アニタは才能に恵まれているようでダリミルと組手をしている。
しかし俺はいまだに基礎を繰り返し練習している。彼は俺たちに言う。
「最後に良い弟子に巡り合えた。感謝しているよ。」「感謝するのは、私たちの方です。」
「アニエス様、あなたは魔法に秀でているが何に使うつもりか。」「私は宮廷魔法士を目指していますので、その手段です。」
「あなたはこの度、飢餓から人々を救ったと聞いています。魔法も同じように使ってください。」「はい、そのようにします。」
「アニタ嬢、あなたは剣の腕がいいようですね。拳法の才能もある。何に使いますか。」「アニエス様を守るためです。」
「そうですか、期待してますよ。」「はい。」
俺はダリミルが最後の務めを果たそうとしているように見える。そこで彼に言う。
「ダリミル様、炊き出しを手伝っている少年たちに護身術を教えていただけませんか。」「私の技は人を傷つけるものばかりです。護身術は教えられません。」
「では基礎だけでも教えてください。」「分かりました。アニエス様の言う通りにします。」
ダリミルは早速、炊き出しを終わった少年たちに拳法を教え始める。
こうして、俺たちは無事に次の春を迎える。アニタはダリミルにまだ勝てないが技をほとんど習得している。また、剣の腕前は騎士団でも太刀打ちが出来る者が数人になるほどに上達している。
俺は拳法は才能がなく基本的な技が使えるだけである。魔法は上級魔法士の試験を余裕で受かるだけの知識と技術を身に着けている。
少年たちは炊き出しが終わってもダリミルから拳法を教わっている。
ローズの手紙で魔法省が今年の魔法士試験を開催するかどうか検討しているそうだ。昨年は飢饉のため魔法士試験は中止になっている。
俺は早く宮廷魔法士になりたいので試験は実施してもらいたいが俺の力ではどうにもならない。神にでも頼るしかない。「うっ、神!」女神がいた。
(テイア様、俺、困っているんです。)(何かありましたか。)
(魔法省で今年の魔法士試験を行うか検討しているのです。開催されないと宮廷魔法士になれません。)(それはいけないですね。手を打ちましょう。)
うん、困ったときのテイア頼みである。俺はローズからの次の手紙で魔法士試験が急遽開催されることに決まったことを知る。
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