第5話 父を説得する
商人ギルドからの帰り道、アニタは俺に聞く。
「飢饉は起こるのですか。」「分からないわ。起きないに越したことはないわね。」
「ジルベール様に今日の話をすると怒ると思いますが・・・」「そうね、怒りそうね。」
「大丈夫なのですか。」「大丈夫ではないわ。私の腕の見せ所ね。」「はあ。」
アニタは俺に呆れているようである。
私は館に戻ると魔法の本を読みながら父の帰宅を待つ。夕食に近い時間、父は帰ってくる。
「お帰りなさい。お父様、お話があるの。」「アニー、ただいま。何かな。」
「今日、商人ギルドのマスター・アルベルトさんにお会いしましたわ。」「よく会えたね。何か話をしたのかい。」
「はい、契約をしてきました。」「契約?」
「契約です。商人ギルドで食料の備蓄をする代わりに飢饉が起きなかったら1年間商人ギルドの通行料は無料にします。」「なにー」
「もう契約は済んでいますわ。」「何てことしてくれるんだ。すべての商人の通行料がタダだぞ。大打撃だ。」
「飢饉が起きなかったらですわ。」「飢饉なんて、ここ十数年起きていないんだぞ。」
「存じています。それでお願いがあるんですが。」「何を言っている。契約の話がまだだぞ。」
「飢饉に備えて食料を備蓄してほしいのです。」「起きるかわからない飢饉のために食料を買いこめと言うのか。」
「はい、飢饉が起きると食料は値上がりします。貧しい人のために食料を分配するのです。」「貧民のために金を使えと・・・」
「彼らも大切な領民です。」「飢饉が起きなかったらどうするのだ。」
「起きなければそれが一番良いです。」「飢饉が起きなかったら私は笑いものだぞ。」
「笑いたい者は笑わせておけば良いのです。」「商人の通行料をタダにする件はどうなる。」
「通行料をタダにすれば流通が増えますので街が発展します。通行料は減りますが税収は増えます。」「確かに税収は増えそうだが・・・」
「通行料の減少は1年だけです。税収の増加は将来まで続きます。いずれ元は取れるでしょう。」「そこまで考えているのか。」
「お父様、お願い聞いていただけますね。」「仕方がない。私は道化を演じよう。」
「ありがとうございます。お父様。」「アニーの願いだ仕方がない。」
俺は父を説得するのに成功する。女神テイアの言うことが本当でないとボドリヤール家は大変なことになる。女神の言葉だ頼むぞ。
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