第3話 女神のつぶやき

 ランベルズ親子が帰った後、父は俺に言う。

 「街に出るのはやはり危ないのではないか。」「お父様、私は街に出て自身が世間知らずだと分かりました。」

 「しかしなー。」「お父様は、私が魔法だけしか知らない無知な娘になっても良いのですか。」

 「それは困るな。」「アニタが従者として優秀なのが分かりました。これからも街に出るつもりです。」

 「お父さんは心配なんだが・・・」「心配はいりません。私も中級魔法士ですよ。」

ジルベールは反論できなくなる。しかし、俺もジルベールに心配をかけたくない。街に慣れるまで表通りを通ることにする。

 翌日の午後、俺はアニタを連れて表通りを歩く。やはり、チャームが効いているのか、男たちが振り向いて俺を見る。男の熱い視線は気持ち悪い。

 俺たちは豪華なつくりの建物の前を通ると声をかけられる。振り向くとベルント・ランベルズがいる。ここはランベルズ商会のようだ。彼は俺たちに言う。

 「私たちの商会で休んで行かれませんか。」「こんにちわ、ベルントさん、お忙しいのではないのですか。」

 「アニエス様をおもてなしするより重要な仕事はありません。」

このおやじは俺をもてなすことが一番重要なようだ。

 「分かりました。少しお邪魔します。」「ありがとうございます。アニエス様。」

俺たちは商会のベルントの執務室に通される。俺はベルントに言ってアニタも一緒に座れるようにする。俺は質問する。

 「この商会ではどのような品を取り扱っているのですか。」「宝石から食料まであらゆるものを扱っています。」

 「保存の効く食料は備蓄していますか。」「いいえ、ここ数年、麦も他の食料も豊作が続いています。備蓄すると倉庫の管理に費用が掛かりますのでそれほど蓄えてはいません。」

 「飢饉のときはどうしますか。」「ここ十数年飢饉は起きていません。品種が代わってから飢饉は起きなくなっています。」

 「そうですか。」

この時、女神テイアが意味深なことを言う。

 (自然はそんなに甘くないんだな。)(テイア様何か知っているんですか。)

 (軽々しくは話せないなー)(俺が勇者召喚に間に合わなくてもいいのか。)

 (あんた、悪知恵は働くのね。)(何が起こるんだ。)

 (川の氾濫と寒波で作物がだめになるのよね。)(いつ起きる。)

 (次の春よ。)(今、備蓄すれば。間に合うな。)

これはベルントを説得して食料を備蓄させる必要がある。それだけでない、商人ギルドを動かす必要もある。

 「ベルントさん、できる限りの倉庫に食料を備蓄してください。」「しかし、経費が掛かるだけですよ。」

 「私のお願いは聞いていただけませんか。」「いえ、アニエス様の言う通りにします。」

 「それから商人ギルドを紹介していただけませんか。」「構いませんが、何をするおつもりですか。」

 「商人を動かして食料を備蓄させます。」「アニエス様が交渉するのですか。」

 「はい、私の責任で行います。」「分かりました。今からギルドマスターを紹介します。」

俺は何とかしてギルドマスターを納得させなくてはならなくなる。

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