第34話 帰宅する
俺たちは、バレーヌ伯の街を「アニエス様をあがめ隊」に見つからずに出る。旅は順調に進み、バレーヌ伯領を出てボドリヤール伯領に入る。道は森の中を通るが野盗は出てこない。
緑の草原を通り、途中、村を通りながら進む。俺は何か起こるんじゃないかと思っていたが安心する。
街の門を通り、屋敷に着く。馬車を降りると父と母が駆け寄ってくる。
「アニー、大丈夫か。バレーヌの小僧に押し倒されたそうだが怪我していないよな。」「あの~、お父様、外に聞こえていますよ。」
「それはいかん。すぐに家の中に入るぞ。」「そうね、それがいいわ。」「お父様、お母様、落ち着いてください。」
「そうだな。落ち着こう。」
父と母は揃って深呼吸する。ローズとアニタが唖然として見ている。俺たちは家の中の広間に行く。
「ファヴィアン殿の手紙には息子が寝ているアニーに襲い掛かったとあったぞ。」「確かにそうですが、ドアには探知の魔法をかけていましたので襲われる前にブレーズ様を撃退しました。」
「ローズ嬢、それは本当か。」「は、はい、アニーは泣いていましたけど無事でした。」
「なに、アニーを泣かせたのか、許せん。」「お父様、ファヴィアン様はこのことを心の底から悔いています。許してはいただけないでしょうか。」
「アニー、お前はなんて優しいんだ。天使のようだ。」
ブレーズの件は、俺のチャームの能力のせいでもある。厳しい処罰は後味が悪いのだ。
「では、ブレーズ様を許していただけますか。」「アニーの言う通りにしょう。処罰はファヴィアン殿に任せることにする。」
これでブレーズは死罪を免れたはずである。父と母はようやく落ち着いたようである。
「アニー、中級魔法士の試験はどうだった。」「首席で合格しました。」
「それはすごい、よくやったぞ。」「合格者の勝ち抜き戦でも優勝して金バッチをもらいました。」
俺は、中級魔法士の免状と金バッチを両親に見せる。両親は喜び抱きしめてくれる。
「良かった。良かった。それではこのまま食事にしようか。」「はい、お父様。」
そこで父は気づいたように俺に言う。
「そこにいる獣人の子は誰かな。」「私の従者です。お父様。」
「何、従者。アニーは従者が欲しかったのか。行ってくれればよい従者を雇ったのに・・・」「いいえ、私が決めました。」
「しかし、獣人だぞ。それに子供だ、務まるわけがない。」「彼女は役に立ちます。すでに手柄を上げています。」
「手柄だと。」「お姉さまから財布を奪った泥棒を捕まえています。」
「そこの獣人の子よ。名前は何という。」「アニタ・パレスです。6歳になります。」
「そうか。アニエスに命を懸けて仕えると約束できるか。」「すでにアニエス様に誓っています。」
「仕方ない、明日から騎士団の者をつけるから剣を学んで剣士になりなさい。」「はい、励みます。」
父はアニタを従者にすることを認める。ここでもアニタは俺たちと食事は別になる。俺は一緒に食べたいが仕方がない。
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