眠れない夜におもう……
明鏡止水
第1話
じぶん、ってなんなんだろう。
わたしをきめているものってなんだろう。
ももがすきだから、さつまいもがすきだから、わたし。
やさしいわたし。
みんなのことをかんがえられるわたし。
でもそんなことはつたわらないでつめたいにんげんだとおもわれてるわたし。
わたしってなに。
わたしはどこからきたの。うんとふかくまでもぐるようにまえへさかのぼる。
わたしがうまれたとき、とか、かんけいない。
わたしって、いつからうまれたの?
わたしはいつからわたしなの?
ねむれないよるにおもうことはきまっている。
わたしって、なに。
どこにむかうのかもこわい。
これからさき、おとなになってなんになるの。
おとなになるのがこわい。
ひとつずつ、としをとるから、おとなになっていくの?
としをとるのをとめたい。
まえにもどりたい。
うんとまえのうまれたころにもどりたい。
ずっとおとなになりたくない。
わたしがわたしなのはわからない。
わからないことがある。
夜寝る前に、考えることがある。
夜の思想は、物思いは怖かった。
心細くて、大人になるということが、輪郭も掴めずわかっていなくて恐怖心と猜疑心と嫌悪を未来に向けた。
毎晩辛くて泣いていた。
あの時期はなんだったのかとメンタルクリニックのお医者さんに問えば、小児うつ、というものもある。と教えてもらった。
心が楽になった。
あの頃の不幸な思いをうまく思い出せないけれど、自分、というものが不可思議で曖昧な存在だった。
ただでさえ両親が死んだらどうしよう、自分が死んだらどうしよう、目が見えなくなったらどうしよう。耳が聞こえなくなったらどうしよう。と毎晩布団の中で隠れて連夜泣いたあの日々。
あの日々に名前がつく。きっとこの思いにも症状や名前があるはずだ。
朝になっても誰にも相談しなかった。
朝になると、「うつ」は消えるからだ。
起きるのが辛かった。夜中まですすり泣くので寝不足で、目も腫れている。
誰か気づいてくれたとしても、きっと当時の幼稚園児や小学校低学年の自分には、恥ずかしい思いに感じて先生や親、医者に相談したり、言語化できなかったことだろう。
私が小児うつだった、と決まったわけではない。
高校生になってから、やっとメンタルクリニックの女性の先生に、話を聞いてもらえる人に相談できたのだ。
しあわせなことである。
あの日の思いに、理由と名前がつくのだから。
私は、夜を、怖がらなくて良い……。
眠れない夜におもう…… 明鏡止水 @miuraharuma30
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます