第13話 鑑定しますわ
「準備はできたか?」
「はい。バッチリです」
今日はリンドール公爵邸を訪問する日。アルビダが毎日ソワソワと待っていた日でもある。
「その……クマも持っていくのか?」
「はい、ダメでしょうか?」
もしかして、ロビンを連れていけないのではないかと不安になるアルビダ。
〝くまのぬいぐるみを抱くアビイは可愛すぎて破壊力が……あっ、しまった不安にさせている。もちろん持ってて良いんだよ。そのクマは妻が手作りして作ってくれた、大切な形見でもあるし、肌身離さず持ってていいのだが……今までそんな事しなかったのに、母親が亡くなり寂しいのかもしれない〟
「そのっ、まぁ……いいだろう。無くさないようにしなさい」
「はい! もちろんです。お父様ありがとうございます」
アルビダは父の心の声も相俟って、嬉しくて思わず父に抱きついた。
「ファ!? あっ、ゴホンッ」
急に抱きつかれた父はというと、嬉しさのあまり変な声が出て、少しパニック状態にになるのだった。
必死に冷静さを取り戻そうとしてる父の姿を見て、アルビダはニコニコと微笑んでいた。そんなアルビダの姿を見たロビンは、(天然たらしめぇ)と心の中で呟くのだった。
★★★
この日も馬車に乗ると、アルビダの指定席は父の膝の上。
初日はかなり緊張していたが、今日は慣れたのか外の景色を楽しむ余裕すらある。
景色を楽しみながら三十分ほど走ると、リンドール領内に入る。
「後少しで到着だね。疲れてないか?」
「はい。大丈夫です」
アルビダは領内に入ると、ソワソワと緊張しだす。どうやらちゃんと鑑定できるのか不安になってきたようだ。
今日の日のために鑑定スキルを使い、新たなる使い方も発見した。
だから大丈夫だと、何度も自分を鼓舞していた。
リンドール公爵邸に到着すると、執事が先に待機して待っていた。その横にはジェイデンの姿もあった。
アルビダが馬車から降りると、ジェイデンが走り寄ってきた。
「イングリットバークマン公爵様、アルビダ嬢、今日はジュリアのためにわざわざ来てくれてありがとうございます」
ジェイデンはアルビダと父に頭を下げる。
「いいえ、お気になさらず。ところでジュリア様の体調は?」
アルビダが体調を尋ねると、ジェイデンは節目がちに「前と変わらず……いや悪くなっているかも……」と小声で話す。
「ジュリアもね、今日アルビダが来ることは楽しみにしていたんですよ。話し相手をしてくれると嬉しい」
精一杯口角を上げジェイデンは微笑んだ。
———ジェイデン様……そんな泣きそうな目で。
ずっと不安で心配なんですよね。その気持ちは分かります。わたくしもお母様のことが毎日心配でしたから。
「では私はリンドール公爵と話があるので、アルビダは先にジュリア嬢のお見舞いをしてあげなさい」
〝私みたいな大人が行っても、ジュリア嬢が怖いだけだろうしね。子供同士の方がいいい。アビィがんばれ〟
「ありがっ……はい。いってきます」
嬉しくて思わず父の心の声〝がんばれ〟に、ありがとうと返事をしそうになってしまうも。途中で気づき、笑顔で誤魔化しどうにか返事を返すアルビダ。
「ではアルビダ嬢案内するよ。僕の後についてきてくださいね」
「はい」
広い屋敷を歩いていくと、扉からして可愛い女の子のお部屋だと分かる場所に着いた。ここがジュリアの部屋だろう。
「じゃあ入るね」
「はい」
ジェイデンが扉を三回ノックして開けた。
———この先にジュリア様が! 緊張してきましたわ。
中に入ると天蓋が付いた可愛いベッドに、蒼い綺麗な髪色をした少女が息を荒くして寝そべっていた。
「ジュリア、アルビダ嬢がお見舞いに来てくれたよ」
ジェイデンに促されジュリアのベッドまで近寄ると寝ていた体を起こそうと動いた体を見て、アルビダは急いで挨拶をする。
「ジュリア様、アルビダ・イングリットバークマンと申します。そのまま横になっていただいて大丈夫です」
「アルビダ様。ありがとう……はぁ……ござ……っいます」
どうやら息をするのでさえ、苦しそうに見える。ジュリアの病気はそれほどまでに悪くなっているよう。
————よし! 鑑定しますわ。
ジュリアの前に鑑定された四角いプレートが浮かび上がる。
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名前 ジュリア・リンドール
年齢 九歳
体調 不調 (病気になっている)
魔力 ★★★★
スキル ???
好感度 ♡♡
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まぁ……今日が初対面ですのに、♡が二つもありますわ。
嬉しいのですが、今はそうじゃなくて……ん? スキルが??? あっそうか、九歳だしまだ【スキル称号の儀】が行われてないからだわきっと。
体調は不調……(病気になっている)の所に触れると、細かい病名と対策が出てくるのよね。前にロビンと試し済みですわ。
アルビダは不自然じゃないように、そっとプレートに触れた。
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※病名
※症状 赤い花が咲く【
※薬 熱花草の葉を煎じて飲むとすぐに治る。
※熱花草は百年に一度だけ赤い花を咲かす不思議な草。花は一日で枯れてしまう。
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「わたくし、分かりましたわ!」
「ええっ、急にどうしたんだいアルビダ嬢!?」
いきなり大きな声を出すので驚く、ジェイデンとジュリア。
そんなことお構いなしに、声を弾ませ続けて話す。
「ジュリア様の病名が分かったんです! 治し方も! 病名は【熱花病】ですわ」
「アルビダ嬢? あの……急に何を言い出すんだい? 熱花病なんて病、僕は初めて聞いた。それになんで病名が分かるんですか?」
「それは……!」
ジェイデンの問いに固まるアルビダ。
それもそのはず、スキル称号の儀も終えていないのに、スキルを持っていること自体がおかしいのだから。
そうだった。理由を言うには、わたくしが鑑定スキルを持っていると言うことを、伝えないといけないんでした。
どうしましょう。でも伝えないとダメですよね。
「あのうジェイデン様、ジュリア様、わたくしが今からいう話を聞いてくださいますか」
アルビダは喉をごくんと鳴らした後、鑑定スキルの事を伝えるのだった。
★★★
悪役令嬢アルビダをお読みいただきありがとうございます。
今年最後の更新となりました。
来年も毎日更新頑張りたいと思いますので、コメントや★などで応援していただけると嬉しです。執筆の励みになります。
皆様良いお年を。来年もよろしくお願いいたします。
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