第4話 リンドール公爵家

「あのう、妖精さん達にお聞きしたいのですが……わたくし、一週間後にリンドール公爵家で開催されるお茶会でお友達を作らないといけなくなりまして……どうしたらお友達ができますか?」


 アルビダは両手の指をもじもじと触りながら、妖精たちに質問する。


 その可愛い仕草に、妖精達はお決まりに大興奮するのだが、それが終わるとアルビダの質問に対して的確に答える。


〝リンドール公爵家!〟

〝アビィたんの最初のフラグ〟

〝ヤンデレ・ジェイデン〟

〝ジェイデン・ヤンデーレ〟

〝アビィたん! フラグをへし折るなら関わっちゃいかん!〟

〝その男危険につき近寄るべからず〟


「なになに……へ!? ヤンデレ? その男危険につき!?」

『あははは、面白いこと言ってるねぇ』


 アルビダは、妖精達の教えてくれる内容が頭に入ってこず、画面の前で固まってしまう。


〝アビィたんが理解出来ない言葉を使う不届き者は手打ちじゃ〟

〝草生えて森〟

〝公式のキャラクター設定貼るか〟

〝ジェイデンんぁぁぁぁ〟

〝ほいっ〟

〝【リンドール公爵家三男。ジェイデン・リンドール】

 青の公爵家とも言われ、青を基調とするリンドウの花を紋章に掲げている。

 そのリンドウの花言葉は【正義】【悲しんでいるあなたを愛する】

 ジェイデンは、リンドウの花言葉の象徴するかのように、正義感が強く悲しんでいる人を助けたい気持ちが強い。かわいそうな人を愛す癖があるのだ。


 幼少期のアルビダとお茶会で出会い、母を亡くし悲しんでいる姿のアルビダを見て、助けてあげたくて知り合ったのをきっかけにアルビダに惹かれていく。

 アルビダはジェイデンの優しさが嬉しくて、兄のように甘えていく。

 その姿が可愛らしく、ジェイデンはどんどんアルビダに夢中になり、ヤンデレ化していくこととなる。

 そのことによりでジェイデンの未来は、最悪の方向へと進んでいく。

 ジェイデンはアルビダの最初の犠牲者。〟

〝このせいでアビィたんは、ジェイデンを闇堕ちさせた責任を取らされるんだよな〟

〝ジェイデン・ヤンデーレに関わるな!〟


 こっ、これはリンドール公爵家の事を話しているのでしょうか?

 確かにリンドール公爵家のお庭には、美しいリンドウの花がたくさん咲き誇っていると聞きました。

 リンドウの花言葉……【正義】以外に【悲しい人を愛する】なんて意味があるなんて知らなかった。

 妖精さんはなんでも知ってるのですね。


 ええと……私がこの方に甘えるとヤンデレ化して、未来を最悪にしてしまう……!? そもそも初めて会った知らない人にわたくしが甘えるなんて出来るのでしょうか? 


「ヤンデレ? とは何でしょう?」

『う〜ん。今のアビィに理解するのは難しいかもね』

「……ロビンは分かりますの?」

『なんとなくね』


 ロビンが顎を少し上げて、得意げにアルビタを見る。

 まるで僕の方がアルビダよりもしっかりしているね。とでも言っているかのよう。


「……むう」


 アルビタは悔しくて口をプクッとふくらませる。そんな姿を見た妖精たちは興奮し、スパチャを投げるのだった。


「アビィはコイン稼ぐの上手いねぇ」

「ふぇ? 意味がわかりません」

「はぁ〜、無自覚はこれだから……」


 ロビンは肩を上げて、やれやれとジェスチャーをして目を細めた。

 当のアルビダはというと、なぜそんな仕草をロビンが自分にするのか、全く理解できず頭を悩ませるのだった。


 妖精たちは思う存分にスパチャを送り満足すると、再びお茶会の話に戻る。


〝アビィたん! お茶会では男の子と関わったらだめだよ!〟

〝とくにヤンデーレはアウトー!〟

〝侯爵令嬢のリリィは?〟

〝 良いねー 〟

〝【リリーローズ・シュトロン】アビィたんの一番の理解者。彼女だけは最後までアビィたんを助けようとしていたもんね〟


 リリーローズ・シュトロン?

 シュトロン侯爵家のことは、お勉強して知っていますが、どのような令嬢がいるかまでは知りませんでした。

 その方がわたくしの理解者? 妖精さんはそんな事まで分かるのですね。

 ええと……困りましたわ。文字の速度が早すぎて、目で全て追えません。


 すごい速度で羅列されていく文字が読めなくて悔しそうなアルビダだが、それでも書かれていく文字を見逃さないよう必死に読んでいく。


〝リリィはオレンジ色の髪色に緑色した瞳よ〟

〝お茶会に参加しているはずだよ〟

〝女の子と友達になると良いよ〟

〝アビィたんを守らないと!〟


 ふむふむ。リリーローズ様にお茶会で会えると。

 女の子とお友達になる……わたくしに出来るかしら。

 ……不安ですわ。でも頑張らないと!


「妖精さん、わかりましたわ! お茶会では女の子と仲良くして、リリーローズ様を見つけるのですね。そしてジェイデン様には近寄らない」


〝アビィたん頑張れ〟

〝やる気アルビダ様も可愛い〟

〝その勢いだ〟


 妖精達に色々な情報を聞き、アルビダはやる気が出てきたようで鼻息荒く、両手を握りしめた。


『じゃあ今日の配信はおしまいかな? みんなにお礼を言って終わりにしようね』

「はい! 妖精さん、今日は色々と教えていただき本当にありがとうございます。わたくし頑張りますわ」


 アルビダはお日様のような笑顔を、妖精達が見ている画面に向けた。


〝フォぉぉぉぉぉぉ尊いい!〟

〝尊死〟

〝癒された……今日一日頑張れる〟

〝可愛すぎて語彙力失うって!〟


チャリン♪【500P】

チャリン♪【1000P】

チャリン♪【10000P】

チャリン♪【2000P】


 この後。画面が揺れたかのように思えるくらいコメントで溢れかり、スパチャが飛びかいロビンが消すまで、画面がずっと金色に輝いていたのは言うまでもない。




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