34 いざサバイバルゲームへ

 アーテル・デビルとイブは、まさしく訝るような表情だった。なぜキズナがここにいるか、分かっていない様子である。


「き、キズナちゃん。そ、その──」吃音気味のアーテルにイブが言葉を被せ、「貴方、なんでここにいるのかしら? 中等部一学年の貴方が出張ることもないでしょう?」

「そりゃあ、“セブン・スターズ”の予備生? を倒さないとならないんで」

「「“セブン・スターズ”!?」」


 またもや声がかぶさった。やはりこのふたり、本質的には仲が良いらしい、とキズナはまたずれたことを思う。


「随分仲良しだな」


 そんな中、ふたりよりは年下に見える少女、基元男性だとうそぶくルーシが会話に割って入ってきた。


「ホープからの通達じゃ、オマエら揉めに揉めたらしいが、仲直りしたようだな。よろしいことだ」


 そんなどこか上から目線のルーシを、イブが睨む。彼女は言った。


「……、貴方、私たちより年下でしょ?」

「そうだよ」


 転生だか転移を挟んでいるルーシのほうが年上な気もするが、とりあえず隣にいるキズナと同じ銀髪を持つ少女はそう答えた。


「年下に教えてもらうことなんて、なにもない──」

「キズナの“カイザ・マギア”でぶっ倒れたのに?」即答しイブが押し黙ったところで、「年齢なんて、実力の前じゃなんの意味もない。オマエは13歳のキズナの魔力にブルって気絶したんだから、それくらい分かっているだろう?」

「そ、それは……」

「言い返せないのだったら、さっさと行くぞ。私だって時間が惜しいんだよ。君らと違って」


 いきなり険悪な雰囲気だ。アーテルは慌てているだけだし、イブの眉間にはしわが寄っている。

 キズナに至っては、まあそうなるだろうな、くらいの感想しか湧かない。


「……ところで、ルーシ様。私たちの向かう無人島とはどこなんでしょうか?」

「ああ。無人島って言い方には語弊があったな。より正しく言うと、ヒトデナシどもを収容する監獄島ってところかね」


 ルーシの言葉に、3人はポカンと口を空けた。間抜けな表情なのは間違いない。そして、3人は同じことを考える。この灰色に近い銀髪を持つ少女、自分らを殺すつもりか? と。


「そんな顔するなよ。大丈夫、確かに連中は女に飢えているが、オマエらKOM学園の首席と次席、それに7,000万メニーの13歳だろ? だったらなんとかなるよ」

「いや、なにをもってなんとかなるって思ってるの──」キズナの言葉をルーシが遮り、「なんともならなきゃ、オマエらがひどい目に遭うだけだしな。なに、サバイバルみたいなものだよ。収容者どもとオマエらの鬼ごっこだ。3日間も必死にやっていりゃ、コツもつかめるさ」


 ひどい言い草だ。


「ま、行きますか。サバイバルゲームへ」


 とはいえ、キズナに選択肢はない。パーラやメントの、いや、ロスト・エンジェルスに来てからの情報を精査すれば、“セブン・スターズ”の候補生が強いのは分かりきっている。それをたった3日で倒せ、となれば、こんなふざけた提案でもすがるしかない。

 そんな銀髪の半サキュバスの態度に、アーテルとイブは肩を分かりやすいほどしぼめた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る