変わりたくないし変えたくもない
鮎河蛍石
臆病者の話
「おっはよう!」
「今日はさっむいね」
「あっこれキミが誕生日にくれたやつ」
「彼氏も気に入ってくれてさ」
「凄く似合ってるねって」
「次のデートにもつけていこうかな?」
■ ■ ■ ■
「一方的にな知らん子から話しかけられてん。誕生日とか、くれたやつ、あのとき赤いマフラー触をりながら言うてたから、誕生日にマフラー貰ったんやろね。とにかくこっちが全く身に覚えがあれへん話をやね。一方的に言うて来たんよその子。やで面食らってこっちからは何にも話されへんかったんや」
「急に怖い話?」
「その子が妙に気になってしもうて……」
「こんな入りの恋話ある?」
「そない怖い顔せんでもええやんか。それに恋話ちゃうでウチ女やし。好きなタイプは津田健次郎って普段から言うてるやん? 気になる言うんは、なんでこんなようわからん事してきたんやってこと」
「これは真顔になってるだけ、話のスピードについていけなくて」
「なんでこんな話を急にしたかというとやね。あそこに話題の子が居るんよ」
「確かにマフラー似合ってるね」
■ ■ ■ ■
私はコイツの
いいとこ友達止まり。
私はコイツのことが好きだ。
いつからコイツに恋愛感情を抱くようになったのか。どこがどういう風に好きなのか。よくわからないほどに好いている。
もし許されるのならコイツと家族になって、私の子供を産んでほしいと思っている。
しかし私は女に生まれた。
仮に男に生まれたとしてもコイツとの関係は友達止まりな気がする。
一歩前に踏み出す勇気が私にはない。
この心地よい距離感が落ち着くのだ。
放課後にフードコートでトッピングをし過ぎてよくわからない名前と化したカフェラテを片手に、コイツと取り留めのない話をする距離感がなにより愛おしい。
そしていまコイツとフードコートを出てストーキングに勤しんでいる。
赤いマフラーをした謎の美少女と、パティシエ服を着た老紳士なる、よくわからないコンビの小さくもなく大きくもない背中を追っかけている。
変わりたくないし変えたくもない 鮎河蛍石 @aomisora
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