第24話

昼のチャイムが鳴って、一斉にみんながランチに向かった。昼休みに外部から電話が鳴ることはそんなにないが、もしもの時のために、お昼当番がいる。

正直言って、私は毎日でも昼当番をしたい。

理由は簡単で、1時から休憩に入ると、午後の時間が短くなって、早く就業時間になるような気がするからだ。

当番表を作るのも総務の仕事で、当番専用のシートに名前を入力するだけの簡単なシートで、

管理職以外は、この当番表をもとに昼当番をしている。


(もうあの場所はだめね)


部長がまた来るだろうし、また何かあって私がどうなってしまうか分からない。

外は太陽が照りつけて暑そうだけど、社内で一人になれる場所は、あそこ以外にまだ知らない。会社の前公園は、ベンチもあるし、この暑さで外でランチをする人もそうそういないだろうから、しょうがなく外に出ることにした。

外に出てみると、日傘を差して歩いていても、体感の暑さは変わらない。意地を張って失敗したなと思っても、また戻るのは時間の無駄。


「暑い……」


本当に暑くてどうにかなりそうだ。このままでは私もアイスの様に溶けてしまうかもしれない。

狙った通り、この暑さで公園にいる人はほとんどいない。日陰のベンチも空いていて、座ってお弁当を広げる。蝉がミンミンミンと鳴いて、更に暑く感じた。


「早く食べて戻ろう」


長くは居られない暑さだった。食べながらカフェのフルーツアイスティーを思い出す。


「なんでこんなに高いの?」


スマホでカフェメニューを検索して見ると、私の価値観にあわない金額だった。おいしいかもしれないけれど、私に出せる金額じゃない。



「そういえば、部長はコーヒーが好きだったはず」


部署内で使っているコーヒーマシンは、親睦会費で買った物だけど、購入金額の半分は部長がアメリカに行く前に「おき土産だ」と言って、ご芳志してくれたものだ。


「一杯くらい入れてあげてもいいわよね」


本社に復帰したばかりだし、これくらいは周りから見られても何も言われないはず。


「あっつい……」


夏が大の苦手なのに、外でランチなんてどうかしてる。首筋には汗が伝って、このままいたら熱中症になってしまいそう。


「もう限界だわ。夏の間は覚悟を決めてあそこでランチをしよう」


部長がいようがいまいが、どうでも良くなるほどの暑さに、お手上げだ。

一日で挫折をしてしまった私は、根性がないようだ。


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