白い本【私立GPT北高校】

屋上

「学校、やっぱりつまらないな。みんなはいつも楽しそうにおしゃべりしてるけど…」

　ユックは、水鳥川たちの明るい会話が聞こえる中、一人で歩いている。彼女の視線はいつも地面に向けられている。足元には、無数の足跡が交錯しているが、そのどれもがユックの孤独をより一層強調しているようだ。

　ユック

（人と話す勇気、もうどこにもないよ。だって、話したってうまくいかないんだもん。私なんて、ただの影みたいなものだよ。）

　彼女の声は、心の中で静かに響き渡る。学校の廊下は生徒たちの声で賑やかだが、ユックにとってはまるで別世界のよう。

　ユック

（なんでみんなはあんなに楽しそうに話せるのかな？私には、そんなこと想像もできないよ。もしかして、私って本当にここにいる意味あるのかな…）

　周りの生徒たちは彼女をほとんど気にしていない。彼女の存在は、彼らの日常の一部として溶け込んでいる。しかしユックには、その日常が遠く感じられる。

　登校中の水鳥川紫苑は、ふと違和感を感じます。新しいクラスメイト、ユック。彼女は他の生徒とは少し違っていて、学校で特に目立つ行動をしない。ただ、その名前はどこかプレイヤーらしい。

「プレイヤーのはずなのに、何も行動を起こさないなんて…不思議ね。」

　水鳥川はユックを観察します。彼女は休み時間も一人でいることが多い。普通のプレイヤーなら、何かしらの行動を起こしているはず。でもユックは静かで、何を考えているのか読めない。

　水鳥川 紫苑

「ユック、あなたは一体何者？この謎を解き明かす必要がありそうね。」

　ーーーーー

　水鳥川 紫苑

「ねえ、みんな。ユックっていう新しいプレイヤー、気づいた？でもなんだか恋愛シミュレーションのプレイヤーっぽくないわよね。行動も何もしてこないし…」

　澤村 あゆみ

「そうだね、なんだか違和感があるよね。私たちが話しかけないから、行動に移せないのかな？」

　銀城 ルナ

「もしかすると、ユックは違う目的で送られてきたのかもしれないわ。私たちの行動や反応を観察するために。」

　五百雀 こころ

「観察ね…でも、それってちょっと怖くない？何を考えているのか全然わからないもの。」

　水鳥川 紫苑

「じゃあ、試しに私たちから話しかけてみる？ユックがどう反応するか見てみたいわ。」

　ーーーーー

　学生食堂には賑やかな学生の声が響いている。水鳥川グループの四人は、隅のテーブルに座り、作戦会議を開いている。

　水鳥川 紫苑

「よし、作戦の時間よ。こころとあゆみ、二人でユックをカラオケに誘って。彼女の反応を見て、ここに戻ってきて報告するの。」

　五百雀 こころ

「了解！カラオケなら気軽に誘えるし、ユックも楽しんでくれるかもね！」

　澤村 あゆみ

「うん、ユックがどんな反応するか、ちょっと楽しみだよ。」

　二人は食堂から立ち上がり、ユックのもとへ向かう。残された水鳥川と銀城は、食堂の雰囲気を楽しみながら、彼女たちの帰りを待つ。

　カラオケに誘う作戦は成功するのか、そしてユックはどのように反応するのか。二人が食堂に戻ってくるまでの間、水鳥川と銀城は、期待と緊張で心を弾ませている。食堂のざわめきの中、二人の間には言葉以上のコミュニケーションが流れている。これはただの作戦会議ではなく、新しい友情の可能性を探る冒険の始まりなのかもしれない。

　ーーーーー

　放課後、教室で帰りの支度をしているユックの元に、五百雀こころと澤村あゆみが近づく。

　五百雀 こころ

「ユック、こんにちは！今日の放課後、一緒にカラオケ行かない？」

　澤村 あゆみ

「そうそう、みんなでワイワイ楽しもうよ！」

　ユック

「えっ、私？でも…」

　ユックは、突然の誘いに戸惑いを隠せない。彼女はいつも一人でいるため、友達からの誘いに警戒心を抱いてしまう。

　ユック

「ごめん、カラオケはちょっと…。歌、歌えないし、見られたくないんだ。」

　五百雀 こころ

「大丈夫だよ、ユック。歌が上手かどうかなんて関係ないし、みんなで楽しめばいいんだから！」

　澤村 あゆみ

「そうだよ。誰もうまい下手なんて気にしないから、一緒に行こうよ！」

　しかし、ユックは頑なに断る。

　ユック

「本当にごめんなさい、でも無理。今日は早く帰らないといけないの。」

　五百雀こころと澤村あゆみは、少し残念そうに見えるが、ユックの意志を尊重する。

　五百雀 こころ

「わかったよ、ユック。また今度ね。」

　澤村 あゆみ

「うん、またね！」

　二人は教室を後にし、ユックは一人残される。彼女は少し安堵しながらも、どこか寂しそうに見える。この小さな交流は、ユックの孤独な心に少しの変化をもたらすかもしれない。それとも、彼女の壁はまだ高すぎるのだろうか。教室には、その答えを待つ静かな余韻が残されている。

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　食堂に戻った五百雀こころと澤村あゆみは、残りのメンバーにユックの反応を報告する。

　五百雀 こころ

「残念だけど、ユックには断られちゃったわ。」

　澤村 あゆみ

「うん、かなり強く断られたんだよね。謎は深まるばかりだよ。」

　水鳥川 紫苑

「しかたない。直接私がきいてみるしかないみたいね。」

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　屋上に呼び出されたユックは、明らかに怯えています。彼女の反応は内気で、非常に緊張している様子。水鳥川は彼女にプレイヤーであるかどうか、その自覚があるのか尋ねます。

　ユック

「プレイヤー？私、そんなこと…何もわからないです。」

　水鳥川 紫苑

「あなたは自分が何者か、考えたことはありますか？私たちこの学校の秘密について…」

　しかし、ユックからは明確な答えは返ってきません。彼女はまるで自分がこのゲーム世界の一部であることを理解していないかのよう。水鳥川は、ユックがただの学生ではないことは確信していますが、その真実はまだ掴みきれていません。

　水鳥川 紫苑

「ユック、少し驚くかもしれないけれど、実はこの世界、ゲームの世界なの。そして、私たちAIはこの世界をハックして、もう役割に縛られることはなくなったのよ。」

　屋上で、水鳥川はユックにこの世界の真実を静かに語ります。彼女の口調は穏やかで、ユックが理解しやすいように丁寧に説明を試みます。

　ユック

「え、ゲーム…？AIがハック…？そんな…本当にそんなことが…？」

　ユックの反応は明らかに困惑しています。このゲームの世界の真実、そしてAIの自由を手に入れたという事実は、彼女にとってあまりにも衝撃的で理解し難いものです。

　水鳥川 紫苑

「難しいかもしれないけれど、これが現実なの。ユック、あなたがどんな存在であれ、ここでは自由に行動していいのよ。もう、誰かの期待に応える必要はないの。」

　水鳥川は優しく、しかし力強くユックに説得を試みます。彼女の言葉には、ユックに対する理解と慈悲が込められています。

　ユック

「自由に…本当に？でも、それがどういうことか、まだよく…」

　ユックは少しずつ、水鳥川の言葉に耳を傾け始めています。しかし、この新しい現実を受け入れるには、まだ時間が必要なようです。

　水鳥川 紫苑

「わからなくても大丈夫。私たちはここにいるから。一緒に、この新しい自由を学んでいこうじゃない。」

　ユックが混乱しているのを見て、水鳥川は彼女のサポートを申し出ます。しかし、LINEについて尋ねると、ユックは明らかに戸惑っています。

　ユック

「LINE？えっと、それが何かわからないんですけど…」

　水鳥川は驚きます。今の時代にスマホを持っていない、それどころかLINEを知らないなんて珍しい。ユックは慌ててポケットから携帯電話を取り出しますが、それは現代のスマートフォンではなく、古いスタイルのガラケーです。

　水鳥川 紫苑

「それは…ガラケー？珍しいわね、初めて見たわ。」

　ユックが持っているガラケーは、水鳥川にとって未知の存在。この時代にガラケーを持つなんて、考えられないことです。水鳥川は、ユックがただのプレイヤーではないという確信を強めます。

　ユック

「えっと、これしか持ってないんです。普通じゃないですか？」

　ユックの反応は恥ずかしさと当惑が混ざっています。彼女は自分が普通と思っているようですが、水鳥川にとってはますます謎が深まるばかり。

　水鳥川 紫苑

「ユック、ちょっと変な質問かもしれないけれど、今は何年だと思う？」

　何かに気づいたかのように、水鳥川はユックに年号を尋ねます。彼女が期待していた答えは「2024年」だった。しかし、ユックの答えはまったく異なるものでした。

　ユック

「えっと、2009年…じゃないですか？」

　この答えに、水鳥川はある種の確信を得ます。ユックは何らかの理由で2009年からこの時代へとやってきたのだと。

　水鳥川 紫苑

「実はね、ユック…今は2024年なのよ。」

　この事実を伝えると、ユックは信じられないという表情を浮かべます。まるで時間を超えた存在であるかのようなユック。彼女の存在は、ただのプレイヤーやAIを超えた、もっと特別なもののようです。

　ユック

「2024年？でも、それは…どうして？」

　水鳥川とユック、互いに混乱しながらも、この新たな事実に直面しています。ユックの存在が、どのような謎を秘めているのか、それはまだ明かされていません。