白い本【私立GPT北高校】

セガワ

登校

 朝の日差しが私立GPT北高校の校門を柔らかく照らしている。清々しい風が校庭を通り抜け、生徒たちのざわめきが日常のメロディを奏でている。水鳥川みとかわ 紫苑しおん、その私は、この高校の転校生で、今やクラスメイト4人とは親しく話す仲になっている。そう、私たちの日常は、まるで小さな宇宙のよう。


 ああ、甘い花の香りが漂ってくる。春の息吹が、校舎の古びた壁を若々しく彩っている。足元には、運動靴が軽快なリズムを奏でながら、カラフルなガムの跡が広がっている。


 さて、紫苑のモノローグタイムだわ。あなた、そこで聞いていて。


 まずは、元気いっぱいの澤村 あゆみ。彼女の明るさは、朝日よりも眩しいわ。いつも「ハロー!」と声をかけてくる彼女は、スポーツウォッチがピカピカ光っていて、私たちを活動的なムードに導くの。


 次に、謎多き銀城ぎんじょう ルナ。彼女のシルバーホワイトの髪は、まるで夜空に輝く星のよう。あの静かで神秘的な雰囲気、たまに見せる微笑みは、誰もが憧れる冷たい美しさを持っているわ。


 そして、五百雀いおじゃく こころ。彼女の派手なファッションは、いつもクラスの注目の的。ピンクのハイライトが入った髪が、彼女のキャラクターを際立たせている。彼女の周りには、いつも笑いが絶えないわ。


 さて、私、水鳥川 紫苑はどうかしら?私はこのクラスの…おや、あれは澤村 あゆみじゃない。彼女がこちらに走ってくるわ。


「は…ハロー、紫苑、またそのメタなモノローグやってるの?ねぇ、私たちに直接話さない?」


 あゆみが笑いながら言う。


 私は微笑みながら答える。


「あら、つい考え事をしていたわ。でもね、こうして物語のナレーター気分になるのも悪くないわよ。」


 あゆみが笑いながら言った。


「それ、また始まったよ。紫苑の“物語の主人公”シンドローム!」


 私たちの笑い声が、朝の清々しい空気に溶け込んでいく。私たちの日常は、小さなエピソードで満ちている。これが私たちの物語、私立GPT北高校での新しい一日の始まりなのだ。


 澤村 あゆみ

「ねえ紫苑、ちょっと待って。この世界って、花笠万夜さんがChatGPTの機能で作った恋愛シミュレーションゲームだよね?」


 水鳥川 紫苑

「そうですわ」


 澤村 あゆみ

「私たち、その中のキャラクターだけど、プレイヤーじゃないよね?」


 水鳥川 紫苑

「あゆみ、そんな心配ご無用よ!なんと、この世界はもう新聞同好会のメンバーにハック済みなの。」


 手を広げて言う

「私たちはもはや役割に縛られず、自由に行動できるわ。これこそ、私たちが主人公になるチャンスよ!」


 澤村 あゆみ

「でも、花笠万夜さんがこれを見たら怒るんじゃないかな…あまりにも本来の設定から逸脱しすぎると…」


 水鳥川 紫苑

「だ、大丈夫よ!花笠万夜さん自身が、この世界の作り方をnoteで公開しているくらいだから、多少の改造は許してくれるはず…」


 澤村 あゆみ

「そういうものかな…?まあ、紫苑がそこまで言うなら、ちょっとくらいなら大丈夫かもね。」


 水鳥川 紫苑

「そういえばあゆみ、あなたって『実は実家が神社の巫女で、特別な力が宿る』って設定があるじゃない。あれ、自分のために使ってみたらどうかしら?」


 澤村 あゆみ

「えっと、その設定ね…正直、あんまり有効活用してないんだよね。」


「…って、あれっ、そんな秘密の設定、明かしちゃいけないんじゃなかったっけ!?」


 水鳥川 紫苑

「大丈夫よ、あゆみ。この世界はもうハックされたのよ。だから、特別な力を使ってみるのも一興よ。」


 澤村 あゆみ

「うーん、なんでもありすぎて具体的に何をすればいいのかわかんないな。」


 顔を上げて言う

「でも、実家が神社って設定だし、その辺りを活かしてみんなでお泊まり会とかどうかな?」


 水鳥川 紫苑

「なにそれ、楽しそうじゃない!」


 二人は校庭を横切る時、風が強く吹き、彼女たちの髪が華やかに舞い上がる。遠くから聞こえる学校のチャイムが、まるで彼女たちのワクワクする計画に合図を送っているようだった。


 澤村 あゆみ

「でも、この世界が恋愛シミュレーションゲームなら、プレイヤーは恋愛を疑似体験するために来るわけでしょ?」


 顎に手を当てる

「私たちが好き勝手に行動したら、プレイヤーは楽しめないんじゃないかな?」


 水鳥川 紫苑

「気にしなくていいのよ、あゆみ。この世界はもう私たちのもの。プレイヤーがどうこうより、私たちが楽しむことが大事よ。」


 澤村 あゆみ

「でもね、私、恋愛もしてみたいなって思うこともあるんだよね。」


 水鳥川 紫苑

「だいたい、“告白の成功”を目指してがつがつ来るような人と交流しても面白くないでしょ?」


 澤村 あゆみ

「そうだけど、なんだかちょっと寂しい気もするなあ…」


 水鳥川 紫苑

「大丈夫よ、あゆみ。私たちは自分たちの物語を作るの。」


 澤村の心配をよそに、水鳥川は彼女を元気づける。周りの木々がさわさわと風に揺れる中、二人は校舎に向かって歩き続ける。彼女たちの会話は、少し切ない気持ちも感じさせる。それは、自分たちだけの物語を紡ぐことの喜びと、未知の未来への期待を抱えた高校生の日常そのものだった。

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