帰り道


 翌週、セガワくんが帰ろうとしているところに、五百雀こころと銀城ルナが現れます。ユックは後ろで恥ずかしそうに隠れています。


 五百雀こころと銀城ルナはセガワくんに近づき、元気よく声をかけます。


 五百雀こころ、銀城ルナ

「セガワくん、ちょっと途中まで一緒に帰らない?」


 セガワくんは少し驚きつつも、彼女たちの提案を受け入れます。四人で校門を出た時、五百雀こころと銀城ルナは突然、忘れ物をしたと言い出します。


 五百雀こころ、銀城ルナ

「あ、忘れ物した!ごめん、二人で戻ってくるね!」


 五百雀こころはユックの肩を軽く叩き、小声で囁きます。


 五百雀こころ

「頑張りな。」


 ユックとセガワは突然二人きりになります。ユックは緊張しながらも、セガワくんとの帰り道を共にすることになります。


 ユック

「えっと、帰ろうか…」


 セガワくん

「あ、うん、そうだね。」


 二人は少し気まずい空気の中、一緒に帰路につきます。


 ユックはセガワくんと一緒に帰る道すがら、五百雀こころと銀城ルナの意図について少し気にしていますが、まだ本題には触れられずにいます。


 二人はしばらく無言で歩きます。夏の初めを予感させるような天気で、日差しは強く少し眩しいですが、風は涼しく心地が良いです。


 セガワくんが会話を切り出します。


 セガワ

「…今日は天気がいいね。」


 ユックは簡潔に答えます。


 ユック

「…うん。」


 ユックは突然の決意を持って立ち止まり、セガワくんに向かって心の内を明かします。


 ユック

「セガワくん、本当に何も覚えてないの…?」


 セガワくんは不思議そうに彼女を見つめます。彼はユックの言葉の意味を理解しようとしています。


 ユック

「私たち、2009年に会ってるのよ…。前、学校で一人ぼっちだった時、セガワくんが話しかけてくれたの。この白い本のことで。」


 ユックはその白い本をバッグから取り出し、セガワくんに見せます。


 ユック

「その日の夜、私は日記を書いたの。だからここにセガワくんのことが書いてあるの。」


 セガワくん

「…そうなんだ。ごめんね。僕にとっての記憶はこの今の時代のしかないみたい…でも、当時の僕がそんなことをしてたのは嬉しいな。」


 ユック

「そう…なんだ…。本当に覚えてないんだ…」


 ユックはポケットの中にある小銭を握りしめ、手を開こうとしますが、結局、その小銭をポケットに戻してしまいます。セガワくんの言葉は彼女にとって慰めにはならず、彼女は失望感とともに静かな悲しみを感じます。


 ユックは駅でセガワくんと別れた後、そこがかつて彼に助けられた駅であることを思い出しながら、その近くでぼんやりと立ち尽くしています。


 しばらくして、五百雀こころと銀城ルナがユックを見つけます。彼女たちは心配そうにユックに近づきます。


 五百雀こころ

「ユック、どうだった?」


 ユックは何も答えられず、ただ涙を流してしまいます。


 ユック

「どうしてだろう。涙が止まらない…」


 五百雀こころと銀城ルナはユックを優しくさすると、近くのベンチに彼女を座らせて、静かに彼女の横で涙を流すユックを見守ります。




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