娼婦の子供と冷遇された第七皇子、赤ちゃんの頃から努力していたらいつの間にか世界最強の魔法使いになっていた件

taki

第51話


「あの…助けてくれてありがとうございました」


気絶して状態で魔法学校の医務室に運ばれていくカイザーを見送っていると、後ろから声をかけられた。


振り返ると、カイザーに絡まれていた平民の少女がそこに立っていた。


両手を胸の前で合わせて、潤んだ瞳で俺を見上げてくる。


「あなたがいなかったら、あの人になにをされていたかわかりませんでした……助けていただいて本当に感謝しています」


「構わない。力になれたのなら良かった」


俺は恭しく頭を下げる少女に笑いかけた。


「名前を聞いてもいいか?」


「はい。私はニーナ。ただのニーナです。平民ですので家名はありません…えっと、あなたは第七皇子のルクス様、ですよね?」


「そうだ。ニーナは新入生なんだよな?俺と同じで」


「そうです。と、特待生制度を使って、この学校に入りました…はい…」


まるで悪いことでもしたかのように、視線を落としてそんなことを言うニーナ。


どうやら先ほどカイザーにいびられたこともあり、平民としてこの学校に通うことに対して気後れしているのかもしれなかった。


「すごいな、ニーナは」


「え…?」


「平民のために用意された特待生制度の数少ない枠を利用してこの学校に入るなんて。入試も俺たちが受けたのよりずっと難しい内容だったはずだ。それを突破するなんて、本当に頭上がらない」


「…っ!?」


ニーナが驚いたような表情で俺を見た。


そんなこと言われるなんて夢にも思わなかったって顔だ。


「い、いえ…私なんて…別にそんな…」


「謙遜することない。ニーナがしたことは十分すごいことだと思う。誇るべきことだ。先ほどのカイザーの君に対する非礼は目も当てられないものだった。この国の特権階級が全員ああだなんて思わないでくれないか?」


「も、もちろんです!る、ルクス様は私を助けてくださいましたし…」


「ありがとう。それから俺に対して敬語は必要ない。帝国魔法学校の中には身分の差は存在しないからな。タメ口で構わない」


「で、でも…皇子様に対してそんな…」


「俺が構わないと言っている。お互いにラフな口調の方が、仲良くなりやすいだろ?」


「る、ルクス様がそう言うのでしたら…」


ニーナがおずおずと頷いた。


「こ、これからは……こんな感じの口調でいいかな?る、ルクス」


「ああ、いい感じだ。よろしくな、ニーナ」


俺は身分の差のない新入生同士としてニーナと握手を交わしたのだった。




その後俺はニーナと共に入学式の会場へと向かった。


200名を超える今年の新入生とともに整列し、理事長の話を聞く。


オズワルドと名乗った老年の理事長の話は、主に新入生に対する祝辞と主な校則についてだった。


そこでは、



・帝国魔法学校の敷地の中では身分の差は存在せず、権力が強いものが、それを振りかざすことは認められない。

・一学年には、AクラスからDクラスの四つのクラスがあり、クラス対抗戦の成績いかんによっては、入れ替わりが発生することもあり得る。

・年に一回、進級試験があり、それに落第すると次の学年へ進級することができない。


と言うようなことが語られた。


帝国魔法学校の創設の目的は、とにかく強い魔法使いを輩出し、帝国の国益に役立てることだ。


そのために、所属する生徒たちは、在学中ひたすら競争をさせられる。


クラスの入れ替え制度などがそのいい例だ。


そうやって厳しい競争を勝ち抜いて卒業した生徒こそが、エルド帝国の社会から一流の魔法使いであると認められるのである。


「分かってはいたけど…やっぱり過酷だな。ここの環境は…」


「ああ……ぼやぼやしてるとすぐに落第しそうだ…」


「クラスによって待遇も全然違うらしいぜ……なんとか上のクラスにしがみつかないと…」


理事長オズワルドの口から明かされる競争のための校則の数々に、新入生たちはだいぶ怖気付いているようだった。


「…」


一方で俺はというと、別段この学校の校則や方針に対して思うこともなかった。


なぜならどのような環境にいようと、俺のやることは変わらないからだ。


日々研鑽を積み、魔法を極める。


結局後宮にいようが、帝国魔法学校にいようが、俺の方針は変わらない。


大切な人たちを守るために、俺はこれからも努力を続けるつもりでいた。


「それでは次に、新入生たちのクラスを発表しようかの」


一通り校則を語り終えたオズワルドが、早速

新入生のクラス分けを発表すると言い出した。


入学試験の点数を基準に、新入生たちをAからDの四つのクラスに振り分けるのである。



「ヴォルグ・ゼノン……Aクラス!」

「よっしゃぁ!」



「エリヴィン・マリアス……Cクラス!」

「くっ……ギリ耐えたか…」



「ニーナ……Dクラス」

「こ、ここから頑張らなきゃ……」



新入生たちの名前が順番に呼ばれていき、クラスが告げられた。


反応はそれぞれで、上のクラスに振り分けられて喜ぶ者や当然だと言う表情の者もいれば、下のクラスに振り分けられ、肩を落として落ち込む者、これから頑張らなければと気合を入れる者もいる。


俺は一喜一憂する新入生たちを見ながら、自分の番を待った。


「ルクス・エルド」


やがて俺の名前が呼ばれた。


俺が皇子だからか、あるいは先ほどカイザーと騒ぎを起こしたこともあるだろうが……周囲の新入生たちが一斉にコチラを見た。


大勢の注目を一身に浴びながら、俺は自分のクラスが告げられるのを待つ。


「ルクス・エルド……Dクラス」

「…」


「「「えっ!?」」」


「「「まじ!?」」」


会場がざわつく。


新入生たちが、俺を見ながらヒソヒソと噂をしている。


俺は特にリアクションをすることもなく、元の姿勢と視線を保った。


その後も残った生徒の名前が呼ばれ、クラスが告げられて行ったが、新入生たちの間に広がったざわめきは消えることはなかった。




〜お知らせ〜


お世話になってます。


taki210です。


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