第4話
「ほら、逃げろよ!!逃げろ逃げろ!!獲物みたいに逃げ回れよ!!!」
「…っ」
7歳になった。
俺は絶賛いじめの最中にいた。
後宮の中庭、そこでたくさんの使用人たちと皇帝の妻たちに失笑されながら、いじめっ子気質の第二皇子、ダストの魔法の練習台にされていた。
「ああくそっ…おっしい、なかなかすばしっこいなぁ、ルクス。ほら、これは避けられるかな!?あははははは」
ダストは笑いながら俺に対して魔法を打ち込んでくる。
俺は中庭を走り回り、決して反撃することなくなんとかダストの魔法をかわして魔力が尽きるまで逃げ回っている。
「みてあれ」
「うふふ、面白いよ今日だわ」
「娼婦の子供にはお似合いね」
「ダスト様の魔法は流石だわ」
「あの娼婦の子供は魔力がないから反撃もできないのよ」
「肉食獣から逃げるウサギのようね。惨めだわ」
皇帝の妻たちがそんな俺をみて、小馬鹿にしたような笑みを浮かべている。
皇帝に冷遇されている俺たち親子はもはや後宮内で何をしてもいい相手として扱われ、母子ともども散々な扱いを受けていた。
第二皇子のダストだけではなく、他の皇子とその母親も、俺たち親子に対して色々と意地悪をしてきたりするのだ。
「やめてくださいっ…お願いしますっ、やめてください…!」
第二皇子ダストに虐められている俺をみて慌てて駆けつけてきたのは、母親のソーニャだ。
ダストの母親の元に膝をついてダストにいじめをやめさせるように懇願している。
「お願いします…ルクスを許してやってください」
「おほほほ。惨めですこと。反撃もせずに逃げ回るなんて、あなたの子供は本当に意気地なしの出来損ないね」
「お願いします!なんでもしますから、ルクスを助けて…」
「一応あなたの子供も皇位継承権を有しているのでしょう?皇族たるもの、自分の身は自分で守るものです。それができないのなら後宮を去るべきでは?」
「そうよ」
「その通りだわ」
「おほほ…娼婦はどこまでいっても娼婦。その子供も程度が知れているというものだわ」
皇帝の妻たちは、泣いて許しをこうソーニャを相手にしていない。
妻たちを説得することができないとわかると、ソーニャはたまりかねたのか俺の元に駆け寄ってきた。
「ルクス、逃げて…!!」
「ほら、捕らえたぞ、ルクス!!」
「母さん!?危ない!!ここにきてはダメだ!!!」
俺の目の前に庇うようにして飛び出してきたソーニャ。
そんな彼女にダストのはなった魔弾が命中しそうになる。
「魔壁」
俺は咄嗟に魔力の壁を展開してソーニャを守った。
バァン!!
「なっ!?」
ダストの魔弾が弾かれて、周囲に驚愕が広がる。
「い、今魔法を…?」
「一体どうやって…?」
「嘘だろ……俺の魔法が……ルクス如きに弾かれた…?」
ダストが驚きに見開かれた瞳で俺を見る。
まずい。
しかるべき時まで実力は隠しておきたかったのに。
母さんを守るために咄嗟に魔法を使ってしまった。
「ルクス…?あなた今魔法を…?」
「よくわからないよ、母さん。それより早くここを離れよう」
「え、えぇ…」
俺は母さんと共にすぐにその場を離れた。
「今のは本当にあの娼婦の子供が?」
「たまたま運よく魔法を発動できたのでは…?」
「魔力が乏しいあの子供に魔法が使えるとは思えませんわ……きっと他の誰かが…」
「誰か他のものが魔法を発動して親子を守ったのでは…?」
人々がざわめく中、俺はソーニャの手を取って中庭を離れたのだった。
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