第2話


どうやら俺は転生したらしい。


いわゆる異世界転生というやつだ。


転生前、俺は日本の中小企業でこき使われる社畜だった。


それが、轢かれそうになっていた子供を助けようとして自分が轢かれて死んでしまい、気がつけば剣と魔法の異世界に転生していた。


前世での俺は一般家庭に生まれた中間層だったが、今世での俺は皇族という特権階級の生まれだった。


と言ってもかなり冷遇されているタイプの皇族だ。


この国……エルド帝国の現皇帝、ガレス・エルドが娼婦との間にもうけてしまった望まれない子供、それが俺だ。


ガレスは皇帝として、正妻とは別に何人もの側室を侍らせており、皇帝の子供を孕んだことで娼婦だった俺の母親のソーニャも皇帝の側室となった。


そして生まれた子供である俺は、皇帝の7番目の息子として第七皇子ということになったのだった。


エルド帝国では、皇位継承権は皇帝の男の子供にしか与えられない。


俺は男なので皇位継承権があるわけなのだが、後宮内での地位はものすごく低かった。


理由は、俺が生まれると同時に即魔力測定が行われ、俺の体内魔力量がゴミであることが判明したからだ。


エルド王国の次期皇帝は、たくさん生まれる王子たちによる権力闘争の果てに決定されるのだが、魔力がゴミでしかも元娼婦の子供である俺が皇帝になる道はほとんど閉ざされていると言ってよく、よって使用人たちからの扱いも適当で後宮内での地位は低いと言わざるを得なかった。


皇帝の正妻や愛されている側室たちが広い部屋に住む一方で、ソーニャとルクスと名付けられた俺が住む部屋はとても小さかった。


「お前は私が守りますからね…大丈夫だから…」


たとえ望まれない子供だったとしても、ソーニャは腹を痛めて産んだ俺のことを心の底から愛しているようだった。


口癖のように私がお前を守る、私の愛しい子供、と俺に話しかけていた。


前世の記憶が残っている俺だが、しかし不思議とソーニャには親近感のようなものが湧いていた。


大きくなったら俺が母親であるソーニャを守らなければならないという責任感が知らずのうちに俺の中に芽生えていた。

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