【第4話】ひより日記

「魔法の書店は、本当に魔法……」


 窓の雪を見つめて日記を開く。ひよりは魔法の書店に想いを馳せる。

何故魔法なのか──それはね、その人だけの本を【書庫】が選んでくれるからなの。


 必要だと感じたら、開かずの書庫の鍵が勝手にガチャリと開く。店員は棚に置いてる本の管理・販売と奥の書庫の案内人でもあるの。案内と言っても、怖がらないように軽く説明するだけ。


 開いた扉の奥には、もう一枚扉があってそこからは【その人だけの空間】だから私も入れない。暫くしてお客様が笑顔で、一冊手に出てくる。中身はもちろん店員も知らない……その人自身の本だから。


 書庫には選ばれた本がいくつかあって、そこから【自分で掴み取る一冊】だから特別になるのも無理はない。


 私も幼い頃、その【書庫の空間】とセレーネさんに救われたから……だから魔法の書店が無くなるのは嫌だし他の書店も無くなるのは寂しいの。書店って各々の空間の雰囲気があるとひよりは思うから。


「ああ、今日の新店長はセレーネさんに似てたかも……ちょっと認めたくないけど」


 そう呟いてさらに日記を書き続けるひより。


 今日は「メリークリスマス、ひよりちゃん」って十四郎とうしろうさんがハーブティーセットをくれました。色んな味の種類が入ってるセットもの。本のように見開きになっててかわいいの。


「じいちゃん、現状分かってるのか──」

「まあ良いじゃないか、ほれお前にも。あんまり節約しすぎると気が滅入る」


 そんな感じで新店長、寅太郎こうたろうさんは渋々受け取っていた。


「今日はもう上がっていい。客もクリスマスで来ない」


 それに返事をして、着替えてからカウンターへ戻るとカフェラテが二つ置かれていた。


「えっと十四郎とうしろうさん?」

「ひよりちゃん、寒いから飲んでいけと……寅太郎こうたろうからじゃ」

「ありがとう……ございます」


 本を大切にしないのは許せないけど、こういう所が憎めない。味は、緑色のロゴの某カフェばりに美味しいのは確かだった。


 た、食べ物に釣られて絆されてないんだからね! 負けないから! と改めて日記に書き込んだ。


【今日の一言】

 アロマのレモンユーカリの精油って爽やかな匂いで好き。実はレモン入っていないらしいんです。それに気づきました、びっくり! レモンのような香りがすることから名前がついたそうです。虫除けと元気がほしいときにおすすめです!



──つづく。



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