朝、目が覚めたら…

いしも・ともり

第1章 朝、目が覚めたら「男性」になっていた

第1話

 朝、目が覚めたら、「男性」になっていた。


 私は、中島美奈子、45歳。3歳年上の会社員の夫と、高校2年生の娘と、中学2年生の息子と、小学2年生の息子の5人家族。週4回、近くのスーパーでパートをして、ごく普通の家庭で幸せに暮らしている。


 そんな私が、朝、目が覚めると男性になっていた。異変に気付いたのは、トイレに行ったとき。


 『ぎゃっ、ツイテル…。』


 しかし、結婚して19年、男児二人を育てた私にとって、「」は未知のものでもなければ、初めての経験とはいえ、上手に用も足せた。


「キャッ!恥ずかしい!」

と顔を赤らめることもなかった。あえて言うなら、

「どうゆうこと?」

って感じ。


 時刻は5:45。やばい!に時間をとられている場合ではない!主婦の朝は戦場なのだ!急いで、キッチンに向かい、弁当作りを始める。それと並行して、朝食作り。いつもより15分押している。朝の15分は、痛手だ。


 6:00の目覚ましが鳴る。夫が起きてくる。「おはよう…。」眠そうに私に声をかけ、洗面所で顔を洗い、髭を剃る電子音が聞こえてくる。

 私も、自分の顎を触ってみる。『うわ、ザラザラしてるわ!気持ちワルッ!』でも、に気をとられている場合ではない。

 味噌汁と焼き魚、卵焼きにウインナーにブロッコリー、昨日の煮物と唐揚げをレンジでチン!あとは冷まして、弁当箱に詰めるだけ。


 6:15には、朝食の盛り付けは終わっていた。夫が新聞を広げながら、朝食を食べている。『器用ですこと。』心でぼやきながら、次に、子ども3人を起こす。1階から、2階にいる子ども部屋に向けて声をかける。


「6:20よー!起きなさーい!」

あれ?声は私のままなんだ?洗面所に行き、鏡を見ると、髭がうっすら生えて、筋肉質な体になっている。見るからに男性には見えるのだが、中性的な感じで…、結構イケメンだ。


 ダイニングテーブルで食事をする夫の向かいに座ってみる。いつもこの時間に座ることがない私の不可解な行動に夫が顔を上げ、私を見た。


「ねぇ…、私、男になっちゃった…。」

箸でつまんでいた、ブロッコリーがポロリと落ちる。


「・・・。」

ぐぉっほ、ぐぉっほ。むせる夫。


「ぅえ?どういうこと…?おま…、何があったんや?」

「わからないけど、朝起きたら、男になってた。」

「なんで、おまえ、そんなに落ち着いとんねん!えらいこっちゃやで!ほんで、体調とかはどんなんや?大丈夫なんか?…てか、おまえ…、アレもついとんか?」

と下腹部を指さす。

「うん、ツイてる。トイレも何とかできた。体調も特に問題ない。

…あ、より、時間!子どもたち遅刻しちゃう!起こしてこないと!」

と席を立つ。


て…おま、『そんなこと』とちゃうぞ?」

夫の言葉を後ろ背に聞きながら、2階の子ども部屋に向かう。

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