金の斧 銀の斧

 昔あるところに、正直者のきこりが居ました。ある日きこりがいつものように山で木を切っている時、きこりはうっかりワキを滑らせてしまい、手からスッポ抜けるかたちで斧をブン投げてしまいました。そして不幸な事に飛んでいった斧は近くの池に落ちてしまいます。

 どうしたものかときこりが悩んでいると、なんと池の中から女神様が現れてこう言いました。


「正直者のきこりよ。貴方が斧を落とした池は金の池ですか? 銀の池ですか? それとも普通のイケイケですか?」

「?」

 正直女神様の言っている事が良くわからなかったきこりは頭に疑問符を浮かべると、もう一度言ってもらっていいかお願いしました。すると――


「ではもう一度言います。きこりよ。貴方が落としたのは金のイケイケですか? 銀のイケイケですか? それとも普通のパリピですか?」

「!?」

 きこりは自分の聞き間違いではない事を確信しますが、意味がわかりませんでした。

 なので正直に自分が落としたのは普通の斧なんですが? ……と進言してみると女神は。

「マジ卍?」

 と言うので。

「マジ卍」

 ときこりは返しました。

 すると女神様は正直者のきこりに感心し、金の斧と銀の斧とドラゴンをも一撃で葬る普通の斧をあげました。


 ――翌日。


 この話を聞いた欲張りで嘘吐きのきこりは、殺人鬼が156人殺したという曰く付きの斧をワザと池に落とします。

 すると池から出てきたのは女神様ではなく、かといって斧が返ってきた訳でもなく、出てきたのは普通のハンマーでもなく。普通のハンマーヘッドシャークでした。

 欲張りで嘘吐きのきこりはある意味プレミア級の斧がただのハンマーヘッドシャークになったので、怒りに身を任せハンマーヘッドシャークを拾い上げたところ、うっかり股を滑らせてハンマーヘッドシャークを手からスッポ抜けるかたちでブン投げてしまい、ハンマーヘッドシャークすら失ってしまいました。


 人間。正直者が得をし、欲張りは損をするという教訓話ですが……


 ……実際にはそういう話ではなく。実はこの時のハンマーヘッドシャーク投げが後に競技性を増し、ルールを整備されたものがオリンピック競技のハンマー投げになり、最初期のオリンピックではハンマー投げの1位の選手には金メダルではなく金の斧。2位の選手には銀メダルではなく銀の斧。3位の選手には銅メダルではなくハンマーヘッドシャーク。そしてそれ以下の選手には156人の殺人鬼が差し向けられるようになったそうです。めでたしめでたし。

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