【不定期更新】せっかく神に助けてもらったのに、このままだと高校生活2周目も変わらないので頑張って努力します

向井 夢士(むかい ゆめと)

0章 主人公ってやっぱり偉いね

第1話 意外と神は意地汚い

 俺の名前は、はた宏隆ひろたか。勉強や運動もそこまで得意でなく、金もない。恋人なんているわけもなく、人生の楽しみと言えばアニメやラノベといった、オタ活だけだ。


 俺は今、ブラック企業に勤めている。もちろん、勤めたくて勤めているわけではない。

 俺は勉強が嫌いで、ロクに受験勉強もしなかった。それが理由で良い大学にも行けず、就職活動も大変なものだった。

 何とか内定となった俺だったが、そんなダメダメな俺が何とか入れた企業が、もちろん良い会社なわけもなく……


「もう限界だなぁ……」


 俺は暗くなったオフィスを見渡しながら、そう一人で呟く。俺の他に人はおらず、ポツンといるのが余計虚しく感じてくる。

 今日は色々と仕事を押し付けられたな……無能な俺が、サクサクと仕事を終わらせられるわけもないのに。


 家族や好きな事、少ない友達。俺はそういったことを考えて、何とか頑張って生きてきた。だけど、俺の精神は限界をもうとっくに超えていた。


 もっと勉強しておけばよかった。もっと何か努力すればよかった。

 

 人生とやらは難しいもので、後からその重要性に気付くのだ。

 人間は贅沢で、自分にないものを勝手に求める傲慢な生き物である。


「ラブコメしたかったなぁ。そして結婚して、幸せな家庭を築いて……」


 俺は高校時代の事を思い出す。俺はずっと陰で過ごし、青春とは無縁の高校生活だった。

 それでも親友はいたし、何より――






 ◇◇◇




「畑 宏隆さん。そろそろ起きていただけますか?」


(あれ、俺寝ちゃってたか……?)


 目を覚ますと、何もない無機質な空間と知らない大人の女性のセット。


(あっ、まだここは夢の中か)


 疲れが溜まっていて、変な夢でも見ているのだろう。俺はそう思いながら、また寝ようとする。


「残念ながら、ここは夢の中ではありません。現実です。正確に言うと、あなたはもうお亡くなりになられましたが」


「……ん、なんて?」


 知らない女性の言葉に、俺はスルーできずにツッコミを入れる。

 えっ、俺が亡くなった? また面白い冗談を言うものだ。


「人間という生き物は、突然変異的なものです。だからこそ、色々な事が起きてしまう。あなたの場合は、過労とストレスが主な原因なようですね」


「待て。お前は誰だ?」


「私は、ただの神ですよ。主にこういった死者を取り扱うのが、私の業務となっています」


「何じゃそりゃ」


 神様なんているものか。きっと昨日読んだ、タイムリープするラブコメのラノベが原因だろう。こういったご都合の展開だったからなぁ。


「もう一度言いますが、夢ではありません。全てあなたの事は知っていますよ。親の金をこっそり使って怒られたこと、好きな子の私物をこっそり触ったこと、今も心残りがあるのか、高校の卒業アルバムを見て泣いていること」


「なっ……!」


「自己中心的な人間が嫌い、ほうれん草とチーズが苦手、鍋のシメは麺、大の甘党、恥ずかしくなるとすぐ誤魔化す、むっつりスケベ、臆病でビビり、窓側の席が好き、箸の使い方が下手、というよりそもそも不器用、猫舌……」


「どうでもいい情報も含まれすぎじゃないか? まぁ、夢じゃないというのは一旦信じるとしよう。用件は何だ?」


 話が進まないので、俺はとりあえず全て受け入れることにした。

 まとめると、俺は過労死して、今こうして神と話しているという状況である。俺としても信じ難い内容だが、ここまで意識がハッキリしている夢も珍しいので、今起きている事を少し信じつつある。


「私はたまに、こういった哀れな人たちを救済するといったことをしています」


「哀れだけど、哀れって言うなよ」


「これは失礼。救済して、その人たちがどうなるか観察するしゅみ……ではなく、仕事をしています」


「趣味って言ったよ。この神、趣味って言ったよ」


 神様とは、いかにも性格が意地汚い。生きてきた世の中を思い出せば、まぁ納得するが。


「まぁ、俗にいう実験ですね。ただ楽し……じゃなくて、よりよい環境を作ろうとしているんです」


「色々と言いたい事はあるが、とりあえず分かった。神様には、こんな意地汚い奴もいるんだな」


「地球で語られる神様は、良い神ばかりですしね。もっとひどい方もいらっしゃいますよ。神は、いざとなったら何でも自由に動かせますから」


「俺の幻想がぶち壊れていくんだが」


 神様って怖すぎる……人間って、こんなちっぽけな存在なのか。所詮は、モルモットに過ぎないのか?


「異世界転生やタイムリープを流行らせたのは、私なんですよ? 色々と事前の知識があった方が便利でしょうし」


「お前が始祖なのかよ」


「タイムリープして、その経験を書く人なんかもいましたね。作家というものは、経験したことになると筆がのるみたいですね。実に便利でした」


「そんな裏側があったのかよ。もう素直に楽しめねぇよ」


 もう情報量が多すぎて、少し混乱してきたんだが。

 神様は、少し遊びすぎじゃない? もう少し、俺たちの事を考えてくれてもいいじゃん。


「さて、本題に行きましょう。あなたは、人生をひどく後悔していますよね。そんなあなたに、チャンスを与えましょう」


「それってまさか」


「ええ、タイムリープですよ。あなたが特に強く思っていた、高校時代が始まる直前に戻りたくはありませんか?」


 俺は、できることならもう一度高校生活をやり直したいと思っていた。

 勉強、楽しい思い出、恋愛……青春を謳歌したかったな、と強く後悔していた。大人になってから、本当に強く思う。


「本当に戻れるのか?」


「ええ。高校生、というものは楽しい時期ですよね。あなたとしても後悔はあると思いますし、可愛い子もたくさんいましたよね。あなたのも」


 神様は何でも知っているため、俺の痛い所も平気で踏み込んでくる。全く、デリカシーのない奴は嫌いなんだ。


「なら、俺の答えはイェスだ。神様の悪趣味に、付き合ってやるよ」


「あなたなら、そう言うと思いました。それと注意事項ですが、一周目の記憶を悪用するのは、辞めといたほうが良いですよ。高校生活ぐらいなら文句は言いませんが、お金を大量に稼いだりと変な悪用をしない事」


 なるほど。未来を知っているから、それを利用して利益を得るのは許されないのか。せっかく、ギャンブルや転売で稼ごうと思ったのに。


「分かったよ。普通の生活を送れば、いいんだろ」


「助かります。私が怒られずに済みます。私も見守っていますからね」


 笑顔で何言ってるんだよ。良い事言った! みたいな誇らしい顔をするな。結局、お前が怒られたくないだけじゃねーか。


「では、二周目の高校生活を楽しんできてください。行きますよ」


「よし来い。今度こそ、青春を謳歌してやるよ」



 こうして、俺の二回目の高校生活がスタートする――










◇◇◇

(あとがき)

 作品を読んでいただき、ありがとうございます! 向井夢士と申します。

 この作品は、タイムリープものです! コメディだったり、伝えたい事を伝えられる作品になると良いなと思います!


 私情により、なかなか書けないなどの都合もありますが、どうか応援していただけると幸いです。

 読んでいく中で面白いと思ってくださった方は、評価などお待ちしております!

 







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