魔王少年アスラ
バーチ君
魔王誕生
第1話 僕の名前はアスラ
「お母さん。お父さんは?」
「アスラはお寝坊さんね。お父さんはとっくに畑に行ってるわよ。顔はもう洗ったの?まだなら、早く顔を洗ってきなさい。」
「うん。」
お父さんはサム。元冒険者で現在は農家だ。お母さんはマーサ。お父さんと同じ元冒険者だ。そして、僕はアスラ。現在5歳になったばかりで、2人の唯一の子どもだ。
「アスラちょっと待ってて。今用意するからね。」
「うん。」
お母さんが台所で朝ご飯を用意してくれている。畑でとれた野菜のスープと固いパンだ。いつものようにパンをスープに浸して食べる。
「お母さん。お父さんの作ってる野菜、ものすごく甘いよね。どうして?」
「そうね。愛情をこめて育てているからよ。」
「ふ~ん。」
僕がご飯を食べているとお父さんが帰ってきた。
「あ~。いい汗かいたな~。」
「お帰り。お父さん。」
「いいな~。朝飯か!俺も腹がペコペコだ。」
「サムの分もすぐに用意するから、手を洗ってきてね。」
「ありがたい。」
お母さんはお父さんのご飯も準備していたようで、すぐにテーブルに運んできた。今日は3人で朝ご飯だ。
「お疲れ様。アスラがね、サムの作っている野菜が甘くて美味しいんだって。」
「そうか~。嬉しいこと言ってくれるじゃないか!」
「お父さんが愛情をこめて育てているからだよね?」
「なんだ?それは?」
「お母さんがそう言ってたよ。」
「そうだな~。野菜も子どもも愛情をこめて育てれば、すくすくと丈夫に育つもんだからな。」
なんか僕は自分が褒められたようで嬉しかった。
「あのさ~。ご飯の後で僕に剣を教えてくれる?」
「ああ。いいぞ。だが、いきなりどうしたんだ?ずっと嫌がってたじゃないか!」
「まあね。だって痛いのは嫌だもん。」
「剣の練習をするんだ。痛いのは当たり前じゃないか!」
「サム!アスラはまだ5歳なんだから、手加減してあげなさいよ!」
「そうだな。そうだよな。アスラはまだ5歳なんだよな~。ハッハッハッ」
その日、僕はお父さんに剣の握り方を教えてもらい、生れてはじめて木剣を振った。だが、5歳の僕には軽いはずの木剣ですら重く感じた。
「アスラ。そんなにフラフラしてたらそのうち転ぶぞ!」
「大丈夫だよ。」
フン!フ~ン!
ドテッ
「痛てて!」
「ほら!言わんこっちゃない!もっと足を踏ん張るようにするんだ!いいか~!見てろよ!」
ブン ブン ブ~ン
どうやら、今の僕には力が足りないようだ。それにしてもお父さんは凄い。木剣よりはるかに重い金属の剣をいとも簡単に振り回しているのだから。
「あ~、疲れた~!」
「もう剣の訓練は終わったの?アスラちゃん。」
「うん。」
「転んだでしょ?土だらけじゃない!」
僕の後ろからお父さんがやってきた。
「アスラはもっと基礎体力をつけないとな!剣には力やバランスが大事なんだぞ!」
「わかったよ。」
「サム!アスラちゃんは今日が初めてなのよ!無理言わないでよ!」
「ああ、そうだったな。ハッハッハッハッ」
翌日から僕はお父さんの畑仕事を手伝うようにした。基礎体力を向上させるためだ。だが5歳の僕にとってはかなりきつかった。
「お父さん手が痛いんだけど。」
「どれ、見せてみろ!あ~。マメだな。このマメがつぶれてさらにその上にマメができて一人前だ!」
「そのなの?じゃあ、お父さんは痛いのを我慢して仕事してるんだ~。」
「当たり前じゃないか!代わりにやってくれる人間もいないからな。」
やっぱりお父さんは凄い。僕にとっては尊敬すべき人だ。家に帰るとお母さんが朝ご飯を用意してくれていた。
「マーサ!今日はアスラの手にマメができたぞ!」
「アスラちゃん大丈夫?」
「うん。このマメがつぶれてそこにマメができるまで頑張るんだ~。」
「どういうことなの?」
「僕もお父さんのように一人前になるんだよ。」
「サム!あなたアスラちゃんに何を言ったのよ。」
「男になるための秘訣を教えたんだよ。なっ!アスラ!」
「うん!」
翌日からは井戸から水を汲んで台所まで運ぶようにした。そして、お父さんと畑仕事をした後、朝ご飯を食べる。
「アスラちゃんがいろいろ手伝ってくれるから、お母さん助かるわ~。」
「そうだな。畑仕事もだいぶ慣れてきたようだしな。」
「お母さん。アスラちゃんのことが大好きよ。」
「僕もお父さんとお母さんが大好きだよ。」
剣の訓練は相変わらず厳しい。でも、剣を振ってもフラフラすることはなくなった。家の手伝いをすることで自然と体力がついてきたようだ。
「アスラ!明日からは剣の訓練だけじゃなくてランニングや腕立ても始めるからな。」
「え~!」
「頑張るのよ!アスラちゃん!」
「うん!」
「なんだ!アスラはお母さんに言われると素直じゃないか!」
ハッハッハッハッ
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