第28話 堀本凛の正体
「どうしてβの籠がない君が一人で僕の元に来て無事でいられると思ったのかな? 不思議でならない。やっぱり麗美ちゃんのことがよっぽど効いちゃったの?」
「……」
「返す言葉もないようだね。でも君たちには感謝してるよ。仮想領域の構想は僕のαを覚醒させるに至った。今ではあらゆる変化をもたらして、こんな感じで未知のゲームの具現化にも成功したんだ」
「……」
「君ずいぶん性格が変わったね。なーんかつまらなくなっちゃたな。もう君に会うことはないから、僕はここらへんでお暇させてもらうよ。君はだーれも来ないこのゲーム世界で一人孤独にただ命が尽きるところを待つんだね。じゃあね!」
「……」
もう終わりだ。俺は無力でなにもすることはできない。
目の前が真っ暗になり、頭の中は真っ白になって、俺は気力を失った。
「あら? 新しいお客か。最近高校生が多いね。アポの1つくらいとって欲しいものだ」
「単刀直入に言いますが春樹を返して」
「ちょっと! 里音先輩私のセリフを奪うのやめてくれます?」
「何が、別にいいでしょそれくらい」
「よくないわ、こういうのは私が言った方が締まるのよ。堀本凜! とっとと春樹を返しなさい!」
「はあ、それが、初対面の大人を前にする態度かね君たちは。それに春樹……ああ、こないだの高校生か。君たちは同級生か何かかい?」
「私は春樹の先輩だわ」
「私は春樹の……その友達よ」
「ふーん、いい仲間を持ったものだね。彼も。まあ2人とも席について話でもしようか」
「ええ」
「春樹君のことは覚えているよ。なんせ昨日あったばかりだからね」
「いったいあなたは何を春樹に吹き込んだのよ」
「琴音沙月という記者の連絡先を教えただけだよ。彼女はゲームの具現化についてを追っている記者だからね。彼の望む情報が手に入ると思ったわけさ」
「そしたら私たちにもその連絡先を教えなさい!」
「おっと、夏菜ちゃんっていったっけ? そっちの子は結構血気盛んなのね。まあ連絡先を教えてあげないこともないけども、情報料をいただきたいかな」
「誰が血気盛んですって?」
「あなた自分の立場が分かっているの? ゲームの具現化についての情報を集めるホームページとこのクラブ、今から私がゲームの具現化を直接見せてあげましょうか?」
「ちょっと、ちょっと、里音ちゃんっていったっけ? 意外と冷静な子かと思ったらとんでもない恐ろしいこと言うわね。でもそれはそれで興味あるかも?」
「ちょっと、里音先輩! 何を言ってるかさっぱりだわ。しかも堀本凜は一般人だしその言い方じゃ、わからないでしょ」
「夏菜、あなたに見せるのは初めてかしらね。それにおそらく彼女は一般人じゃない……αの内通者」
「え?」
「始めるわよ覚悟しなさい堀本凜、春樹を返してもらう」
「何を言ってるのかさっぱりだわ」
「GAME START」
「なんだいこれは! 本当にゲームの世界が広がっているじゃないか!」
「いつまで演技を続けるのかしら? あなたナノの関係者でしょ。その顔、私は見たことがある」
「あっれー? もしかして私の顔見られてた? βさん」
「どういうことよこれは里音先輩」
「こいつは春樹の敵ってことよ」
「やっぱりそうなのね! そんな感じしてたわ」
「ふーん、よく気付いたと褒めておくわ。ただ実力を見極められないのは残念だわよβちゃん」
「何? ルール書き換えが打ち消された」
「こーんにちわー、私、堀本凜はギルド「ナノ」の裏リーダーなのでした。つまり私の実力はαを上回るってことね」
「くっ」
「里音先輩、私も手伝います!」
「夏菜さん、あなたは逃げなさい。このままではあなたも危険よ」
「そんな、分かったわよ!」
「ああ、逃げちゃったか。まあ夏菜ちゃんにできることなんて、なーんにもないと思うからほっとこうかな。実力差がわかったようだわね。それじゃあこれでトドメ」
「うっ」
「βちゃん捕獲完了!」
「何も、見えない、暗い、ここはどこだろう?」
「君はこのままなにもしなくていいの」
「君は誰?」
「私は天才ハッカーと呼ばれているわ」
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