VRMMOの世界が現実になったらステータスが引き継がれてレベル100スキルで無双できちゃいました

@re-lu

全章

第1話 ゲームが現実になって無双した

前編


「なんだよ、これは……」


 学校に入ると、そこはバーチャルMMOの世界が広がっていた。


「みんな、どこに行ったんだよ!」





「あなた、目が死んでいるわよ?」


 目の前に現れたのは白髪長髪で青目で端正な顔立ちの女子生徒だった。


 初対面だが、制服を見るに俺と同じ学校だろうか。


「あ、あの……どちら様ですか?」


「ふふ、それをあなたに言う必要はないわ」


「凄くミステリアスな返しですね」


「これから、あなたの身に降りかかる災難を考えたら、この程度はミスリアスに入るのかしら?」


「?」


 この子はいったい何を言っているのだろうか? 俺の身に降りかかる災難? 心当たりもないし気味が悪い。


 見知らぬ人に災難に会うと言われ気味が悪くなった俺は、その場をすぐにでも立ち去りたくなった。


「あ、そうですか! 気を使っていただきありがとうございます! それじゃあ」


 気が付けば駆け足になって、その場から離れていた。


 幸いその子は俺の後を追ってこなかったようだ。


 というより、俺が離れた瞬間怪しげな笑みを浮かべていた。


「一体、なんだったんだ」




「お! 春樹君じゃん!」


「れ、麗美」


「こんなところで何やってるのよ!」


 麗美、俺の同級生の友達だ。中学時代に一緒のクラスで仲が良かったものの、進学した高校が違うため疎遠になっていた。


「何って、別にお前に関係ねえよ!」


 俺は正直麗美が嫌いだった。中学時代は一緒の高校に進学するのかと思っていたのに、現実は違っていたからだ。


 麗美は偏差値の高いエリート校に入学した。俺もそれを知って同じ高校への進学を考えたが絶望的に勉強が出来ない現実に直面していたのだ。


 結果俺は地元の偏差値の低い、いわゆるヤンキー高校に進学することになっていた。


「そんな言い方はないんじゃないの? 私は春樹君と久しぶりに会えてとても嬉しかったよ」


「エリート校のお嬢様が、俺なんかに会って嬉しいかよ」


「あたりまえでしょ、だって私たち中学の頃は、付き合おうか考えていた仲じゃないの」


「!」


 そうだ、俺は中学時代麗美と付き合おうと考えていた。


 それくらい仲が良かったんだ。でも進学のための学業を優先するから、お互いに付き合うのは、同じ高校に入ってからにしようと約束していた。


 しかしそんな約束はただの理想に過ぎなかったのだ。


「過去形かよ……お前の天然さには、あきれしかない」


「麗美ちゃんじゃないか、こんなところで何やってるんだ?」


「あ、智蔵じゃない!ちょうどよかった今中学時代の同級生だった春樹君と話していたのよ」


 麗美と同じ学生服を着た男が現れた。眼鏡をかけて顔が整っている、一言でいうと真面目系イケメンだ。


「春樹君紹介するね! 私の高校の同級生の智蔵よ。凄く頭がよくて頼りになるのよ」


「ほうほう、麗美ちゃんの中学時代の同級生か! これは失礼したね。僕は智蔵というものだ、麗美ちゃんとは仲が良かったのかな?それじゃあよろしくね」


 智蔵は俺に手を差し伸べてくれた。流石エリート校のイケメンはモノが違うな。初対面の俺にもここまで誠実に接してくれるのか。


「バシッ」


「痛っ」


「ちょっと! 春樹君! 智蔵に何してくれるのよ!」


「ふん、あいにく俺はエリートが嫌いなんでな」


 そういって俺は、イケメンの手を振り払い、その場を立ち去って行った。


「いったい何がしたかったのよ春樹君は、大丈夫なの智蔵くん?」


「あ、はははは、僕は大丈夫だよ、さ気にせず行こうか麗美ちゃん」


「そうね」




「ふん、エリート校の連中が俺の気持ちなんて分かるわけねえだろ」


「よ、春樹君」


「ちっ誰だてめえら」


 麗美から離れて、歩いていると目の前に三人組の男子生徒が現れた。


 俺と同じ制服、そう同級生のヤンキーである。


「春樹君、今日ちょっと金欠でさ、金くんないかな?」


「悪いが俺も金欠なんだよ。今日はこれくらいにしてっ……グハっ」


 ヤンキー三人組をスルーしようとすると、突如腹部を殴られた。


「悪いが選択権はお前にないんだ! おい裏路地につれてくぞ」


 俺はヤンキー三人組にボコられた。


「たっくこれしかねえのかよ」


「今日はこれくらいにしといてやるよ、じゃあまた学校でな春樹くーん、ぎゃははは」


「く、クソが」


 俺の意識は遠のいた。


「絵にかいたような理不尽だな。もうなんか、この世の中はクソゲーだ」


 目を覚ますと夜になっていた。まあ、俺の帰りが遅くなろうが気にする人はいない。親は全国転勤でほぼ家にはいないからだ。


 ほぼ一人暮らしのような生活をしている。


 裏路地で一人仰向けになる俺は、真っ暗な空を見て、現実に不満を漏らすのだった。


「帰ってゲームでもするか」




 こんなクソゲーの世界にもいいことはある。


 それはバーチャルMMOゲームだ。


 バーチャルMMOゲームは全てをリセットすることができる。生まれた環境、人間関係、自身の能力、つまり理想の自分を体現できるのだ。


「ゲームの中の俺は無敵だ」


 レベルはカンスト済み、既に全てのNPCに負けることはない。


 唯一脅威となりうる相手はマルチの他プレイヤーであろうな。


 だが、マルチをやらない俺には関係のない話だ。


「うん?」


 突如メールが送られてきた。


「現時点のログインプレイヤーは全てログアウト機能が消失します」


「あ?」


 意味の分からないメールだ。運営にクレームを入れてやろうかなと思った。


「おかしい」


 そう思ってログアウト画面を見るとコマンドが消失していた。


「これはもしかしてゲームから出ることが出来ないということなのか……」


「やっぱりこうなったわね」


「誰だ?」


 気づくと目の前に白髪青目のアバターの少女がいた。


「君、春樹でしょ?」


「なんで俺の本名を知っているんだ!」


「私の名前は岩本里音、君と同じ高校の2年よ」


「俺の高校の先輩……あっ、もしかして、昨日俺に話しかけてきたあの子?」


 見知らぬ災難にあうといきなり言われて気味が悪くて逃げたのだ。


「気づいたようね、私の言った通り災難は起きたでしょ?」


「見知らぬ災難、それは俺がMMOの世界に閉じ込められることだったのか!」


 ログアウトできないということは、ずっとこの世界に閉じ込められたと同じ事。これから俺はどうすればいいのだろうか。


「いいね! その絶望した表情」


「は?」


 里音先輩は絶望した俺の顔を見て嬉しそうにほほ笑んだ。


「人の不幸を笑って楽しいかよ。というかあなたもゲーム世界に閉じ込められてるじゃないか」


「うん、知ってる! だってこれは私が引き起こしたイベントだもの」


「どういうこと?」


「プレイヤーキリング、これは一種のウイルスよ、ゲームが現実のものとして具現化するの」


「は? ゲームが具現化?」


「そうよ、ここは現実世界の仮想領域として具現化した場所、ここを出るには目の前の敵を倒すことが条件となる」


「敵?」


「へへ? 今回の敵はお前たちか」


 正面に眼帯をした男が現れた。こいつはNPCじゃない、紛れもないプレイヤーだ。


「これは俺が嫌いなマルチでしかもPVPか? このゲームにPVPはないはずだろうが!」


「いったでしょこれは、ゲームじゃない。ウイルスによって具現化された仮想領域。先ずはあなたの実力を見せてもらうわ」


「は?」


 次の瞬間俺は里音先輩に押し出された。


「お前が俺の相手か」


「いや、知らねーよ。ちょっといきなり何をするんですか!」


「あなた、このゲームでは敵なしなんでしょ? それじゃあその実力とやらを見せてもらおうじゃない、ステータスは引き継がれているわ」


「うん?」


 俺のレベルは100のままだった。


「なるほどね、これは問題なさそうだ」


 そうだ、仮想領域とはいえ、ゲームのステータスが引き継がれるなら、俺に敵はいない。


 だが、マルチとは無縁だった俺が果たしてPVPで通じるだろうか。


「やり取りは終わったか! いちゃつきやがってよ!」


「は? 誰がいちゃついてたもんか。ですよね里音先輩」


「……」


「なんか反応しろよ!」


 里音先輩は無表情だった。無関心のようである。


「速攻で終わらせてやるぜ!」


「ッ!」


 眼帯を掛けた男はいきなりジャブを繰り出してきた。


 しかしあまりにもそれは遅すぎるものだった。


「うん? 今何かしたか?」


「なんだってえええ?」


 眼帯男のジャブは空を切り、続いて俺のジャブが眼帯男の腹部に入った。


「グハッ!」


「GAME CLEAR!」


「うん? 終わったか?」


 気づくと眼帯男は白目を向いていた。


「お見事ね、あなたの勝利よ」


「なるほど、こんな感じなのか」


 あまりの手ごたえのなさに驚きしかない。俺ってこんなに強かったのか?


 いままで、NPCとしか戦ってなかったから驚きである。


「これで仮想領域は解除されるわ。無事ゲームクリアであなたもログアウトできる。それじゃあまたね!」


「ちょっと待ってくれよ!」


「……」


 里音先輩は一瞬だけこっちを見た後、そのまま姿を消した。


「なんだったんだ」


 俺は気づけばログアウトして、現実世界に戻っていた。

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