魔王の遺言
猫野 ジム
第1話 勇者、魔王を倒す
勇者達はついに魔王の元へ辿り着き、勇者は魔王に告げた。
「この城の魔族は全員倒した! もう残っているのはお前だけだ、覚悟しろ!」
「威勢のいいことだ。人間が私に勝てるとでも思っているのか」
魔王はそう言い放ち、勇者達を見回した。そして最後にハッと何かに気付いたような素振りを少しだけ見せ、フッと笑みを漏らした。
「何が
「そうか、フフ……」
「笑っていられるのも今のうちだ! いくぞ、みんな!」
勇者が必殺技の構えに入ると戦士・僧侶・魔法使いの三人が同時に呼応した。
「ディバインスラッシュ!」
「鬼神の戦斧!」
「ホーリーディメンション!」
「メテオスウォーム!」
「グォォアアアアアッッ……」
魔王が苦悶の表情を浮かべて体勢を崩した。
「よし、このまま一気に決着をつけるぞ!」
「グ……まだだ、私の最後の力を見せてやる」
魔王から底知れぬ闇の力が今にも放たれようとしている。とっさに勇者と戦士は足を止め、僧侶と魔法使いは詠唱を止めた。攻撃している暇は無い。
これまでの魔族との過酷な戦いのなかで勇者は数え切れない程の経験を積んだ。故に分かる。これをまともに食らえば終わりだと。
「今魔王から目を離すわけにはいかない! 俺が必ず防いでみせるから、みんなはなるべく遠くへ離れてくれ!」
勇者は盾を構えて防御態勢をとった。もう魔王はいつ力を解き放ってもおかしくない。
そんな中、一人の人物が勇者の前に出た。魔法使いだ。
「破魔の指輪!」
魔法使いがそう叫ぶと指輪からまばゆい光が放たれ、魔王めがけて飛んで行った。
それが魔王に命中すると、光はより一層激しさを増し魔王だけを包み込む。
その直後もはや言葉ともいえない叫び声を上げ、魔王はまるで天を仰ぐかのように倒れ込んだ。
「あの指輪のこと本当だったのか……」
勇者はそう
魔王はまだ息がある。それを見て勇者は剣を振り上げた。ほんの数秒、勇者はその体勢のまま動かなかった。そして魔王に語りかける。
「何か言い残すことはないか」
「フ……そのまま……剣を振り下ろせばいい……ものを」
「もしあるのなら早く言え」
「ひとつ……頼みを聞いて……くれるか」
「この
「分かって……いる。だが話だけ……でも聞いてく……れ」
そして魔王は勇者に語りかけた。
——「ッ!」
勇者は言葉を失った。そして振り上げたままの剣をゆっくりと下ろして魔王に語りかける。
「分かった。お前の頼み、引き受けてやる」
「そ……うか、良かった……。勇者、あとは頼んだ……ぞ」
それ以降、魔王と言葉を交わすことはできなかった。
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