第68話 宝石虫

 危険なバラの園を抜け、小さな白い花が沢山咲いている木の側にやって来た。


 花畑には多種多様な花が咲き乱れていたけど、桜や梅、紫の花が綺麗なジャカランダ等の木に花が咲く種類は、ある程度同種の木が群生しており、それもまた見応えがあった。


 それより何だっけ、この白い花の咲く木は……空木うつぎ、ウノハナだったか?花は小振りで綺麗なのにな…。


 これが大量の虫がついているんだ。あれアブラムシか?多過ぎてキモい。

 


「しかもアブラムシのくせにデカいよ!」

「あの虫は刺激しなければ大丈夫だよ。余計な手出しをすると、一斉に飛んできて集られるから気を付けてね〜。」



 小さい集合体でもキモいのに、スナネズミくらいのアブラムシがモゾモゾしてる。こんなにいたら、フ◯キラー様のご助力を頂かないと駆逐出来ないだろ!


 さっさと不穏な虫の側を離れて先に進もう。


 ウノハナのエリアを抜け、暫くすると多肉植物の群生している場所に着いた。その多肉植物にもしっかり花が咲き、その葉の色も相まって、中々に鮮やかな風景を作っている。


 すると、変な音が耳に届いた。耳元で蚊が飛んでいる時の様なプ~ンに近い音だ。



「ん?なんか音がするな……ププ〜〜ンって変な音だ。」

「……あ!コレは宝石虫の羽音だ!!カイ、この5階層で一番高価なドロップを落とす魔物だよ!逃さず全部倒そう!」

「なに?!分かった!!」



 おし!気合注入だ!名前からすると、もしか しなくてもドロップは宝石なのか?俺の1LDKへの夢がまた一歩近づく!


 そう夢想していると、ププ〜〜ンと気の抜ける様な間抜けな音が大きくなって来た。音のする方を見ると、ピカピカと光る飛来物が複数見える。それが『宝石虫』なのか、陽の光を受けながらこちらへ向かって来ていた。



「ちょっ!逆光で見にくい!」

「それが宝石虫の攻撃時の常套手段なんだ!狙いにくいけど頑張ろう!それと、魔法だと一撃で倒すのは難しいから、体力削って宝石虫の飛空高度を下げさせて、トドメは剣が良いよ!」



 ダンジョンの疑似太陽をしっかりと背にして、その光で自らも反射光を放つ。更にそれが他の宝石虫にも反射して激しく乱反射。お前等ブリリアントカット虫かよ?!


 こんな風にチカチカとその光が目に入って視界が奪われると、ついあのセリフを言いたくなる。だけどきっとソルスは乗ってくれないだろうと思い、言うのを思い留まった。まさに今言うべき鉄板ネタなんだけどな…。



 しょうが無い。今回は攻撃魔法より麻痺が効くか先に試してみるか。それで駄目なら水玉だな。デカい水玉は魔力ガッツリ減るから、日の早い内から使いたくないけど、これも大介をでっかくする為。


 麻痺を連射を使って太陽に向かい放つ。


 その麻痺が効いたのか、光の数が減った。それでもまだピカピカしてるせいで、虫が何匹いるのかは正確に視認出来ない。



「ソルス、麻痺が効いた虫が落ちてると思うから倒してくれるか?俺は飛んでるヤツを魔法で落とす方に専念するよ。」

「分かった!でもカイ、麻痺の魔法使えたの?!麻痺は魔導書が高価なんだよ!100万ゼルもするんだよ!!」



 最初に行った洞窟ダンジョンでスライムから出た魔導書が『麻痺』だったけど、ソルス達は取得出来て無いのか。あそこで只管ひたすらスライムを倒してればその内に出ると思う。けど、よくよく見ていると、他の探索者達は向かって来ない限りスライムを無視してる。


 もしかして『麻痺』の魔導書が出るほどのスライムを倒していないのかもな。



「その話は後でな、今は先にこのピカピカを倒そう。眩しくてしょうがない!」

「そうだね、分かったよ。」



 虫の数が減って、多少は狙いが付けやすくなった。でもサングラスが欲しい。

 これだけ眩しい光を見てると、暫くは目に残るかもな。



 宝石虫に麻痺を当てられれば、あとは簡単な作業だ。ソルスが落ちた宝石虫を剣で討伐して完了。



「やったね!結構な数の宝石虫を討伐出来たよ!しかも一匹も逃げられなかった!」

「え?この虫逃げるのか?」

「そう。自分から向って来るくせに、体力が減ると逃げちゃうんだよ。」

「そうか、麻痺が効いて良かった。……それより、このドロップは…やっぱり宝石なのか?」



 討伐された宝石虫は、既に魔導書と光り輝く石に変わっていた。その色も様々あり、鑑定した所、青い石は『サファイア』と表示された。


 魔導書はどんな物が出たのかな?



【閃光の魔導書……瞬間的に強い光を発光させる事が出来る。但し、自身にもその効果が有効となるので注意が必要。レベルによって光る範囲が広がる】



 そのまんまだな……。しかも敵だけに効果を与える事が出来ないのか。下手をすれば、自分の方がデカいダメージを受ける可能性があるぞ。



「こんなに宝石がドロップしてる。どうしようカイ!僕達お金持ちだよ!」

「落ち着けソルス。お前、もうかなりのゼルを持ってるだろ?だから今更だぞ?それでこれは、組合に出すといくらで買い取ってくれるんだ?」

「あ!そうだった。え〜と値段は正確には覚えて無いんだけど、色で価値が変わるんだ。ピンクと黄色の宝石は、討伐しても出る確率が低いから高値だったよ。僕が知ってる最高価格は、ピンクの宝石が500万ゼルで買い取られたって噂になったよ。」

「………500万ゼルか。」



 その色とりどりの宝石は、1つがテニスボールよりも大きい。それを考えると、500万ゼルって価格は安い気がした。


 これは一発『等価交換』に賭けてみよう。



「ソルス、取りあえず今は宝石を仕舞って、この場を離れよう。ボスのドロップと違って、ここには他の組合員もいるしさ。」

「そうだね。じゃあカイが持っててよ。あ、僕は魔導書は要らないよ。それ『自滅魔法』って言われてるから、もしカイが使うなら気を付けてね?」



 やっぱりかよ。魔法を使って、自分で『目が!目がぁーー!』と叫びたい時には使えるけどな。







□ □ □ □ □




既出のお話を一部訂正しました。


人物の名前間違ってたり、魔法被ってたりと色々あったので。他にもあると思いますが、素人作品としてお読み頂けますと幸いです。









  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る