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 警部補はゆっくりと机に肘を突き、顔の前で手を組んだ。穏やかな表情で口元には笑みすら湛えている。

 突然、無表情になると、椅子の背もたれに寄りかかり、腕と脚を組んで斜に構え、片方の口角を吊り上げてニヒルに笑って見せた。

 私は警部補の次の言葉を聞いたとき、これぞ取調べの神髄なんだと武者震いした。これ程の感動を覚えたことは未だ嘗てない。身は硬直した。

「落とした!」

 思わず呟いてしまった。

 私の声は記録され、永久に消えることはない。だが、私の失態を咎め得る者など最早いないはずだ。22世紀を飾るに相応ふさわしい『名裁き』を前に、感嘆せずにいらりょうか。否、何人なんぴとたりともできぬ。

 感動のあまり身は震えだした。私が、この私が、歴史の生き証人になった瞬間なのだ。

 警部補の声は、除夜の鐘の音に乗って私の耳を、魂をいつまでも揺さぶり通した。

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