第5話 とある旅行の準備のお話 

5話 とある旅行の準備のお話 

私は今学校の6時間目にて衝撃の事実を先生から知らされた。


「来週の6日に研修旅行行くからなーちゃんと準備しとけよー。あと班決めもするからなー」…と。


 やべ。完全に忘れてた…

 基本咲稀以外の人と話す機会があんま無いからそこら辺の情報に疎いってことを一応言い訳として置いておく。

 研修旅行は修学旅行と同じ。私の中学校は中高一貫で中学も高校も繋がってるから修学じゃなくて研修になってる。


「そういや確か2か月前くらいになんか言ってたね」


 っていうか班決めなんて1ヶ月前とかからやっとくべきだろうになんで一週間前にするかな。

 この学校たまに意味わかんない事があるからモヤッとする。


「旅行1週間前と旅行2ヶ月前の間になんで連絡しないかな」

「先生にも先生なりの考え方があるんだよ!」

「ほんとかな...」

 

 まあ確かに修学旅行の日時自体は知ってはいたけども。

 そんな会話の最中に先生の心の中の声が聞こえてきた。


(うわー完全に言うの忘れてたなー。ま、でもなんとかなるだろ。2週間あればなんでもできる)


 全然考えてない。

 やはり世の中には知った方が良いことと知らない方が良いことがある。そういった意味でも能力あんまいらないなぁって思った。映画とか普通にテレパシーでネタバレくらうし。


「先生ー!旅行ってどこ行くんでしたっけー?」


 中澤さんが先生に向かって質問した。いや場所くらい把握しておけよ…って言いたくなったけどそういえば私も知らないなって思ったから黙っといた。


「京都奈良大阪辺りに3日行く予定だな」


 確かそこら辺には法隆寺だの東大寺だの有名なお寺があったっけ。恐らく最終日にテーマパーク、1日目にお寺は確定だね。


「今から詳しく旅行について書いてあるプリントを配るから目を通しておくんだぞ」


 と言いつつ、今まで配るのを忘れていたプリントを当然のように慣れた手つきで配っていく先生。おかしいなこれ普通にヤバいと思うんだけどな。

 そういえば、毎回思うんだけど学校の先生のプリント配る速さ尋常じゃないよね。

 さすがこの道のプロ。

 まあそれはさておき、3日間のスケジュールどんなだろ。


[1日目・・・法隆寺、東大寺、ホテル]


 予想大的中。法隆寺と東大寺をまわった後にホテル行ってわいわいするよー的な感じかな。

 まあぶっちゃけお寺巡りもやってみたら楽しくはあるでしょ。

 シャワールームに湯船は無くシャワーのみって書かれてあるけどまあそれは見なかったことにしておこう。


[2日目・・・京都市内タクシー研修]


「京都市内タクシー研………は?」


 タクシー研修とは。

 一瞬何のことかマジで分からなかったけど下の方に説明が書いてあった。班ごとに自由に行先を決めてそこをタクシーで巡っていくらしい。

 要するに自由行動だタクシーで好きなとこ行けってことか。

 あ、これ迷子になったら終わりのやつだ…咲稀を見張っとかないと。


[3日目・・・USJ]


 だよねだよね。言うまでもないよね。

 最終日は遊園地的な場所に行くのがテンプレだからね。私は絶叫系とホラー系が苦手だからほぼ食べ歩きになりそう。

 楽しみ方は人それぞれ違う。

 そもそもお化け屋敷に関しては仕掛けが見えちゃうしね。


「美春はタクシーどこ行きたい?」


 私の横からニュッっと咲稀の顔が出てきた。


「スイーツ巡りとか、やってみたい」

「意外と女の子だねぇ」

 

 意外っていうか私女の子だけど。


「京都スイーツ前から食べてみたかったからいい機会」

「さっきの私の発言にはツッコまないんだ」


 ボケだったらしい。

 わかりにくい......


「あ!じゃあさ美春、3日目の時に一緒にジェットコー」

「嫌だ」

「即答…」


 絶叫系は酔うし怖いし高いし早いし無理。お金を払ってまで寿命を縮めようとは思わない。


「えへ、また美春の弱点知っちゃった」

「怖いお化け屋敷にぶち込むよ」


「じゃあその他質問があったら先生のところへくるように。じゃあ、各自帰る準備を素早く終わらせろー」


 先生は詳しい説明を放棄して終わらせた。




 私と咲稀は家へ帰るため学校から歩いて帰っていた。


「ねぇ、旅行めっちゃわくわくしない?」

「確かに楽しみかも」


 楽しみではあるけど、咲稀が迷子になって私が頑張って探す未来しか見えないから何かと疲れる気がする。


「咲稀迷子になんないでよ」

「私もそこまで馬鹿じゃないよ」


 本当かな…


「あーー、お腹空いたー。どっか食べに行こーよ」

「私最近少し金欠だから」

「じゃあ安いとこがいいよね」


 まあ家で食べればいいかもしれないけど親仕事でいないし食材買うのにどうせお金かかる。だから出来るだけコスパの良い店がいい。できれば無料がいいなーって思っちゃったりして。

 …………まあそうなってくると。


「あそこだね」

「そうだね」


  必然的にこうなるわけで。

  はい来ちゃった喫茶店のポプラ。ちゃんと「poplar open」と書いてある看板も立っている。

  このお店は私たちが夜遅くまで家に親がいないということで特別に無料で飲み物とか食べ物を食べれる。神。

  そんなのアニメとか漫画じゃないとあり得ないと思ってたけどまさか現実でそんな展開になるとは。


「いやー、親切な人だよねー。直樹さんも太っ腹だねぇ~」


 私たちはお店の扉を開けた。カランカランと扉の上の方についていたベルが鳴る。


「いらっしゃ...ああ、お前らか」と、とても聞き慣れた声が聞こえてきた。


「直樹さんお久しぶりぃー」


 異常なテンションで直樹さんに絡んでいく咲稀。

 一週間も経ってないのに久しぶりとは。


 流石に毎日このお店に通っているという訳ではなく、親が早く帰ってきたり自分でご飯を作ってみたりする日も結構多い。毎日タダ飯ってのもなんか悪いからね。

 とりあえず私たちはメニューに美味しそうなカレーがあるのを見つけたから注文して座った。こんな美味しそうなのが無料。ほんとありがたい。


「なんかここやっぱりバーみたいな雰囲気あるよね」

「まあここもともとはバーだったしな」


 衝撃の事実発覚。


「ええー、なんで喫茶店にしたの?」

「夜やるのめんどいから」

「理由思ったより軽かった」

「っていうかそもそも俺がお前らに無料サービスしてるのってお前らの親と関わりがあるからだぞ?」


 またまた衝撃の事実発覚。


「え、マジ?」

「結構昔なんだがお前らの両親と仲良かったからな。まあ別にサービスしろと頼まれた訳じゃないんだがな」


 知らなかった…。咲稀のお母さんと私のお母さんが昔からの親友なのは知ってたけどまさか直樹さんとも関わりがあったなんて。


「そういえば直樹さんって京都行ったことは?」

「ん?あるけどそれがどうした?何なら数ヶ月前行ったけど」

「いやー、実は私たち研修旅行で京都に行くことになって京都どんなとこかなーって」

「京都はな、すんごい美味い八つ橋だのとろけるようなわらび餅だの店で使えそうな美味しそうなやつが沢山あったな。碓か豆腐を使った新感覚ソフトクリームとかあったような気もするな」


 美味しそう。

 私はふとこの店のメニュー表に目をやった。豆腐を使った新感覚ソフトクリーム…口に入れたらとろけるわらび餅…八つ橋...


「これパクってない?」

「参考にさせてもらっただけだ」

「パクってるよね」

「ちょっと真似しただけだ」


 いやパクリでは?


「美春~、京都行ったら食べ歩きしよー」

「確か小学校の時はお店で使える何千円くらいかのクーポンっていうかそういう系のやつが学校から貰えなかった?」


 お母さんからお小遣いをもらって、出来るだけ学校から貰う券で買い物をして、帰ってきたら母から貰ったお小遣いネコババしてちょっと稼ぐ人多かった記憶。


「あのプリントにはクーポン的なのは書かれてなかったから多分無いね」


 無かった。

「あ、ちなみに歩きながら食べるのはあまりおすすめしない」

「なんで?」

「食べながら歩くのは結構マナー悪い目で見られるし、観光客が多かった場合ぶつかって落ちるなんてこともあるからな」


 死んだような目をしながら語る直樹さん。


「俺のソフトクリーム…」


 ああ、結構萎えるやつ。


「確かにヤクザの人に飲み物がかかったりでもしたらめんどくさそう」

「お前京都を何だと思ってんの...?まあ、楽しんで来いよ。ちなみにいつ行くんだ?」

「2週間後の6日」

「楽しんで来いよって言うのちょっと早すぎたな。次会った時微妙に気まずくなるじゃんか」

「今のうちから準備しとかないとねー」

「今まではスマホとかは持って行ったらダメだったよね」

「今までは?」


 私も写真撮りたいから「学校の研修旅行にスマホを持っていくことは悪いことではない」と認知を書き換えた。

 能力の有効活用である。


「ということでスマホはOK」

「夜中ゲームする人出てきそうだな…」

「そこんとこは問題ないよ。研修旅行にスマホを持っていくこと自体が許されるだけでゲームとかそういうのは先生に見つかったらアウト。多分即没収食らうと思う」


 絶対一人くらいはスマホ没収されそう。

 あとはお財布、タオル、着替え、あとはくしにハンドクリームに.....割と多いね。家帰ってから考えよ。

 まあ極論忘れ物しても瞬間移動で取りに帰れるけどね。


「ウェットティッシュは絶対持ってけよ」


 死んだような目をしながら語る直樹さん。


「あー、確かに手が汚れちゃう時べたべたしてんの嫌だからね」


 コトッ

 直樹さんが私と咲稀の前にカレーを置いてくれた。


「あ、どうも」

「めっちゃ美味ひい!」


 ......早くない?

 咲稀速攻でカレー食べちゃった。私まだ触ってすらない。


「なんかね、普通のカレーよりめっちゃ濃厚というかなんというか、ううん、美味しい!」


 語彙力。

 私も咲稀の言うめっちゃ美味しいカレーを食べてみた。


「…!」

「美味しい…」

「そりゃあよかった」


 ふむ、確かに言葉に表すのが難しい美味しさ。これが無料か。なんか悪いことしてる気分。


「ちなみにこの俺が作ったカレーのレシピは京都のとあるカレー屋に提供したレシピなんだ」

「いやさらっとめっちゃ凄いこと言ってるけど」

「京都のカレー屋の方にとある知り合いがいてな。その知り合いがやってる店のメニューにって。俺のカレーが一番美味いんだとよ」

「え、すごい」

「流石食い倒れの街だね!!」

「咲稀それ多分大阪」


 そういえば思ったけど私たちを連れて行ってくれるタクシー運転手は私たちが食べ歩きとかしてる最中どうしてるんだろ。普通に私たちの後ろついてくるのかな。

 だとしたら気まずいね…


「いやー、修学旅行まで結構長いと思ってたけど全然そんなことなかったねー」


 咲稀のことだから何かしらのことはやらかしそう。あと迷子は確定イベントだね。


「まあ、咲稀の迷子イベントは確定だろうな」


「私の信用度低くない…?」

「この前学校への近道ーなんて言って道間違えて迷子になったのはどこの誰?」

「私です!」


 ダメじゃん…


「私の方向音痴を舐めてもらっちゃあ困るよ」


 舐めてないから安心して。

 気が抜けない...


「お、もうこんな時間だ。そろそろ帰りなよ」

「じゃあ直樹さんまた今度」

「ああ、じゃあな」


 

 1週間後に修学旅行か。楽しみ。

 準備早めにやっとかないとね。

「じゃ、美春また明日ね~!」

「うん。じゃね」


 家の前に着いたから私は咲稀と別れた。


「ただいまー」

「あら、おかえりー。そういえば美春来週修学旅行だったよね?服とかまとめて入れれるやつとバッグとサブバッグとかいろいろそこに用意してあるからー」

「ありがとう」


 流石私の母。お前心読めてんのかってくらい用意が良すぎる。

 私はお母さんが用意してくれてたのを2階の自分の部屋に持ってった。


「持ち物.....何がいるんだろう.....」


 まず着替え、歯ブラシ、ウェットティッシュ、ハンカチ、財布、スマホは絶対いるのと、あとハンドクリームとか入ってる通称女子力セットなるものもいるし、もしかしたら怪我するかもしれないから絆創膏と、雨降ったら行けないから傘と.....

 「もし~だった時のために」で持ってくものがだんだん増えてる..........。あ、あとタオルとUNOも追加で。

 他に何かいるものあるかな.....


<あとがき的なやつ>

 1話、2話、3話、4話ときてついに5話になりましたね。ここまで読んでくださり感謝です!

 それはそうとusjの名前出して良かったのかな。まあ良かったと信じておこうか。まあもしアウトだとしてもこんなクソ底辺な物語なんて訴えられるどころか見つけられもしないだろ(感謝からの唐突な自虐)。←バレなきゃ犯罪じゃないなんて考えが甘いんだよ!!!(そしてさらに唐突な自虐)

 ちなみに僕の学校は中高一貫校です。京都に研修旅行へ行ってきました。予定とかも、全部、そっくり、そのまま、パクりました!!!!

 あ、学校の先生はちゃんとオリキャラですよ。旅行の予定のプリントを生徒に渡すの忘れてた先生なんか現実にいたらやべぇよ。

 どうせ美春と咲稀は同じ部屋割りなんだろうなぁ.......まーたまたまた百合要素強めになっちゃうんだろうなぁ.......(他人事)

 いや、多分なるわ。

 許してね。

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