姫巫女さまは世界を救いたいっ!

井上咲楽

おてんば姫、召喚する

「さま…」


うーん、まだ寝てたいよ~


「ひめさま…」


あともう少し~


「アリア姫さま! 」

「わあっ! ! 」


 大きな声で驚いたあたし、アリアは飛び起きた。いい夢見てたのに…でもどんな夢だったっけ? それに、


「びっくりしたじゃない! パルル! もっと静かに起こしてよね」


あたしを起こしたのはメイドのパルル。綺麗な緑のふわっとした髪をしてて羨ましい限りよ。


「何度も声かけましたよ~なのにアリアさまは起きないし」

「それはゴメン」


あたし、朝が苦手なのよ。


「それはそうとパルル、あたしの髪って変? 」

「どうしてそんなことを言うのですか? アリアさまの髪は素敵な銀髪ではないですか」


素敵、ねぇ…


「お母さまもお父さまも輝く金色の髪なのにあたしはなんで銀髪なの…? 」


そう。あたしのコンプレックスはこの髪色。


 みんなあたしの髪色は素敵って言ってくれるけど、あたしはお母さまやお父さまの髪色で産まれたかったわ


そう思っているとパルルが


「そうでした! アリア姫さま、王さまがお呼びですよ」

「お父さまが! ? それを早く言ってよ!」


 パタパタと私は自分の部屋をでる。パジャマなんて気にしないもんね!だってここはアルノゾラムにあるお城の中。そう。パルルに姫さまって言われてるからみんなわかるよね。


「お父さま! アリアです! お話があるとパルルから聞きました。お部屋に通してください」


すると少ししてから


「入りなさい」


とお父さまの声が聞こえた。


扉が開く。


「アリア、さすがに城内をパジャマで走るのはよくないよ? 」

「ごめんなさい、お父さまのお話ってなんだろって思ったら、つい」

「そうだね、嬉しいのはわかるけど今度からは気をつけなさい? 」

「はい! 」

「うん、いい返事だ。それでは本題に入ろう。もう少ししたら、アリアの誕生日が来るね。それをもうこのアルノゾラムでは半成人と見る。そこで、この王家に継がれる遺跡の巫女としてアリア、頼みたいんだよ」

「あたしに務まるかなぁ」

「それは私も少し心配しているのだ」

「お母さま! 」


 スっとお父さまの隣に座るお母さま。やっぱり私の将来の夢はお母さまみたいな気高くお父さまみたいな優しい人になることだわ! 


「ふたりで話した結果、お前に守護者ガーディアンをつけることにしたよ」


とお母さま。


守護者ガーディアン? 」

「きっとお前を助けてくれる存在だ。お前の誕生日に披露会をしようね」

「じゃあ、明後日の昼ってこと? お父さま」

「そうだよ」

「やったあ! あたし頑張るね! お父さま、お母さま」


 そこで扉から声が聞こえた。


「アリアさまー! 」


 この声は、パルルだわ! いっけないあたし、パジャマのままだった! 着替えてお勉強しなきゃ


「じゃあ、また来ます! 」


あたしは長い廊下をまた走り出した。

あれから、あたしはパルルとお勉強してたんだけど…


「ねぇパルル」

「どうしました? 姫さま」

「明後日って何の日? 」

「明後日はアリアさまの誕生日ですよね? 」


うん。そうなんだけど、ええーい言っちゃえ! 


「あのね! 召喚の儀ってやつやりたいの! 」


そうあたしが言うとパルルは3秒程沈黙した後、


「それはダメですよ~王も王妃もちゃんと明後日と仰ってましたでしょ~」

「ええーケチ」


 いいもん! あたしひとりでやるもん! どうしたらひとりになれるかな…そうだ !お手洗いって言えばいいんだよ。あたし天才かも。


「パルル、ちょっとお手洗い…」

「ダメですよ~ひとりで召喚の儀をしようとしてもわたしにはわかります」


何年の付き合いなんですか~と言われたよ。


うう、ひとりになりたーい! ! 


そんなこんなしてるうちに、夜になった。


今日の夕飯なんだろ…考えてると


「お夕飯のお時間ですよ姫さま」


 とコックのリーレイが来てくれた。リーレイはちょっと怖い顔してるけど優しいし、美味しいご飯作ってくれるから大好きなおじさん。


「ありがとう、リーレイ。今から向かうとこだったの」


 あたしはこの夜の家族の団らんが1番好き。お父さまもお母さまもいるし、3人での会話が楽しいもの


「わあ! 今日はグラタン! 」


あたしの1番好きな料理だぁ! ん〜、この香ばしいチーズの香り…あっ、ジャガイモたっぷり! リーレイわかってるぅ! 


「リーレイ、今日もありがとう」

「ああ、感謝しているぞ」


お父さまもお母さまも、リーレイのお料理、大好きだもんね。


「いえいえ、王に王妃、姫さまの疲れをとることを目標にしておりますゆえ」


と、リーレイは一礼した。


「ふう、お腹いっぱい」


 リーレイの美味しいグラタンをたらふく食べたあたしは、長い渡り廊下を歩いていた。すると、使用人室からこんな声が聞こえてきた。


「アリアさまはどんな聖獣を召喚するのかしら」

「きっと、グリフォンよ! 」

「いやいや、もっと格上のドラゴンかもしれんぞ」

「楽しみねぇ」


 そんな、そんなに期待されたら、今すぐ召喚したいじゃない! ううん、あたしは気高く、優しく…気高く、優しく…あーー! 明後日まで待てないや! 


 あたしは、誰にも気づかれないように慎重な急ぎ足で今は使われていない馬小屋にやってきた。

えーっと、召喚の呪文は確か…


「”我はアリア・フィン・フォンセリア。神々に祈りを捧げる者なり”」


えと、続きなんだっけ。


「”とりあえず、あたしの守護者ガーディアンこいこいこーいっ! ”」


ドッカーーーーーン


黒い煙がもくもくと出てくる。あ、あれ? これもしかすると失敗しちゃった感じ? 

「おい」

 確かにあたし、詠唱忘れちゃってたけど

「おい、お前」

 え、誰かいる…? も、もしかして見られてた!? 

でも、それもあるけど、あたしの名前はお前じゃなくってお父さまとお母さまが名付けてくれた…

「あたしにはアリアって名前があるの…! って」

初めてみた。闇夜のような黒い髪に漆黒の瞳の男の子を。月あかりでとても

「きれい…」

そうやって見とれていると

「ここ、どこだよ」

「え? 」

 アルノゾラムのこと、知らないの…? ていうかここ、城の敷地内だし

「もしかして、侵入者!? 」

 あたしは少し身構える。どうしよう、お父さまとお母さまに伝えなきゃ!走ってその場を離れようとすると

「なんだよ、これ」

 男の子の手が、光り、紋様ができていた。そういえば、パルルと召喚の儀のことを勉強したとき、契約印が現れるって言ってたっけ… 

 あれ、もしかして

「あたしこの子、召喚しちゃった…? 」

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姫巫女さまは世界を救いたいっ! 井上咲楽 @sakuraneko0310

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