第340話 信じる者

レイヴァーが走り始めて、数十分が経過した。


城もだんだんと鮮明に見え、巨大な建造物ということがよく分かってきた。



そして、もう1つはっきりとしてしまった事実。


ここまで走る途中で、他の魔族達は出会えなかった。


ということは、城から放たれた光で全滅したと考えるのが妥当だろう。


「ハデスもハーデンも、魔力を集めるために何人の犠牲を出せば気が済むんだ!」

「ゴーレムとオーガも同じ、サリア達を排除するために多くのモンスターと人が犠牲になった。」

「だからこそ、僕たちは止まってはいけない。ひたすらに突き進んで、あの2人を止めないと。」

「もちろんよ、その為に私達は今、ここにいるのだから。」


さらに進むと、大きな門が見えてくる。



「あれが入り口だ!このまま乗り込むぞ!」

「っ!?待ってください!何か来ます!」


リィンの声とともに、


パリィン!

ガラスが割れるような音が聞こえ、周りを見渡すと。


「ぐぁぁ!!」


ドスンッ!ドスンッ!

複数のアーマーゴーレムが突然現れる。


「ちっ、私達を待ち伏せしていたようだな。まずは、こいつらを止めなくてはーー。」

「そう簡単に殺さないでくださいよ、我らの貴重な仲間を。」


どこからともなく、1人の声が響く。


「誰だ!」

「皆様にお会いするのは初めてですね、いや、1人を除いては。」

「この声、あなたは生きていたのね、エレボス!」


ブワンッ!

クロウ達の10m程空に、羊顔のエレボスが姿を現す。


「アフロディテの生き残り、やはり来ましたねえ。私は嬉しいですよ、あなたにまた会えて。いいや、実際は半年近く前まで、城に潜んでいたんでしたね、良くやるものです。」

「そこまで情報を手に入れているのね……待って、あなた達が使った魔法で魔族の大半が命を落としたわ。あなた達、メイドたちはどうしたの!」

「ああ、彼女たちも例外ではありませんからねぇ、白き世界のために力になってもらいましたよ。」

「くっ。」


アーシェの中に、怒りが生まれる。


ただ復讐だけを考えて、メイドとして生活をしていた約10年間、そんなアーシェにも優しくしてくれるメイドは何人もいた。


アーシェが孤独に見えたのだろう、食事に誘ってくれる人、買い物に同行すると申し出てくれるひと、悩みを打ち明けてくれる人。


今思い返せば、少しはメイドとしての信頼を得られていたことを痛感させられる。


「あの人たちまで巻き込んでまで、あなた達の作る世界はどれだけ立派なものなの!城のメイド達は、毎日を生きるため必死にあなた達に尽くしていた、そんな人たちを労わるどころか、命を奪うなんて!」

「彼女たちも喜んでいるだろう、新しい世界の礎になれたのだから!」

「どこまで自己中なんだよ、てめえらは!他人の命を弄ぶことに、何も思わないのか!」

「弄んでいるのではない、有効活用しているだけさ!命は1つしかないからね、大切に使わせてもらっているよ。」

「やはり、君たちと話をしても埒が明かないようだね。僕たちは、君たちの作る世界を否定する!」


チャキンッ!

クロウ達は武器を構える。


「いいですね、ぞくぞくしてきます!久しぶりに大暴れできそうです、アフロディテの処刑の時間までここにいてもらいましょうか!」


アーシェの両親の処刑時刻まで、残り30分。


時間は、限りなく短くなっていた。


「最初からアクセル全開で行くぜ、みんな!」

「了解!」

「来なさい、あなた方はここで死んでもらいますーー。」

「それは、俺たちが困るからやめてもらおうか。」


どこからともなく、鋭い声が聞こえる。



その声に、リィンは一瞬で反応できた。


「皆さん!伏せて!」


シュンッ!シュンッ!シュンッ!

無数の矢の雨が、ゴーレムたちに降り注ぐ。


「なんだ、この攻撃はーー。」

「お前が、ここの頭か!」

「なにっ!?」


ガゴーンッ!

エレボスは、大きな拳に殴り飛ばされる。


「あ、あんたは。」

「ゼオン王、なぜここに。」


エレボスを殴り飛ばしたのは、エリュシオンの王、ゼオンであった。


「久しぶりだな、烏のクロウガルト、狼のミラ。」

「あんた、仮面は?」

「おう、どうやら作り物の仮面だったようでな、無理やり砕いてやった。俺もやられっぱなしなのは癪でな、お返しに来てやったわ。」

「頼もしいです、我が王。」

「俺だけではない、見てみろ。」


ゼオンが指さす先には、


「次弾構え!」


多くの戦士を率いるダイカンの姿が。


「お父さん!」

「やっと会えたな、リィン!レイヴァー!」

「ちっ、なぜここまで侵入を許したのだ!」

「獅子の顔の魔族と、エルフのお嬢さんに教わったんだ!レイヴァーは、先に向かったてな!」

「くそっ、シャープはやはり裏切っただけでなく、魔力の吸収対策までしていたのかーー。」

「背中、がら空きですよ。」


ゴスンッ!

鋭い拳が、さらにエレボスを襲う。


「ジュールさん!」

「待たせてごめん、ここからは僕たちも戦わせてもらうよ!」

「くそがっ、新しい世界を邪魔する反乱分子どもが!」

「どっちが反乱分子なんだろうな。」


クロウはエレボスの前に立つ。


「お前たちは、この世界を0から作り変えようとしている。対して俺たちは、この世界の在り方を変えようとしている。どっちがこの世界に受けいれられるか、試してみようじゃねえか!」


レイヴァーを信じ、同じ志を持つ者が集まったスパルタの城前。



最終決戦は、すぐ目の前に。


第67章 完



◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


第67章まで読んで頂きありがとうございました。


アーシェは重傷を負ってしまい、苦肉の策で魔力の欠片を使う。

1度は死の淵に追いやられたが、何とか力を取り戻す。

さらに進んだ先では、エレボスと出会いレイヴァーの援軍も到着。

最期の戦いは、すぐそこに。


最終決戦スタート!

まずは誰が来る!?

これからもレイヴァー応援しているぞ!


と思ってくださいましたら、

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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!

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