第320話 進むべき道
「あれは、あの事件が起きてからまだ1か月も満たない。我の妻は、我の知らないところで秘密裏に殺された。魔力の塵が残っていたから分かった、あの塵は、オーガが生み出す魔力だった。」
「オーガ!?まさか、私たちが戦った個体だけじゃないというの。」
「オーガは、ゴーレムの何倍もの魔力を必要とする、その分誰にも止められないほどの力を得る。お前たちが戦ったオーガというのは、試作段階のものであったはずだ。」
ある日、シャープはゴーレムを作るためにモンスターを捕獲しに王国を離れていた。
スパルタは比較的他の地域よりモンスターが多く存在しており、ゴーレムの素材を作ることに関しては困ることがなかった。
だが、その日はいつもの狩場に向かってもモンスター1匹もおらず、疑問を抱えつつもさらに奥に進んだ。
さらなる強敵がいると言われている森にも入り、警戒しながら探索するもアテナイとの国境が先に見えてきてしまった。
「この先はアテナイに入ってしまうな、ここまで来るのに数時間は歩いた、なぜ1匹もモンスターがいないのだ?」
日が沈みかけていたので、シャープは異変が起きていることをハデスに伝えに戻っていた。
彼の足は、時速40㎞ほど出せるため日が沈み終える前に走って戻ることが出来た。
そのまま、城に入りハデスのいる魔王の間に向かった。
「ハデス様、お耳に入れておきたいことがあります、お時間を頂きたくーー。」
「この者はいらないと俺は考えますよ、ハデス殿。」
「そうか、ハーデンはそう考えるか。であればここのやつらは全て実験体にしてしまえばいい、あとは……。」
物騒な話をしていることを感じ取り、シャープは報告を辞め家に戻ることにした。
(やはり、この世界を白き世界に変えるというのは、ハデス様もお望みの事なのか。我には疑問でならない、神でもない我らが生きるべき生き物を選別してよいのだろうか。)
頭を回転させながら、シャープは家の前に辿り着くと、
「な、何をしているお前!」
シャープの家の前には、モンスターとも、ゴーレムとも言えない中途半端な存在が口を赤く染めて立っており、不気味な笑みを浮かべていた。
身長は130㎝ほど、子供のような体系だが、体中が緑色で目、鼻、口など顔は成り立っているがおおよそこの世の生き物と言えるものではなかった。
さらに、
「美味しい、もっと、くれ!」
「こいつっ!」
ズザッ!
人の言葉を話しながら、シャープに襲い掛かってきた。
「寄るな、お前は何者だ!」
「俺、美味しいもの食べた、お前も美味しそう、食わせろ!」
「わけの分からぬことを、ここから去れ!でなければ斬るぞ!」
「美味しいもの、美味しいもの!」
小柄の特徴を生かし、スピーディーにシャープに傷をつける。
「うぐっ、忠告はしたからな、覚悟しろ!」
「美味しいものーー。」
ズシャンッ!
大斧により、真っ二つに切り裂かれる。
「なんだったんだ、今の化け物は。」
大斧を納め、シャープが家に入ると、
「ただいま帰った……っ!?」
そこには、無残にも体に複数の傷をつけられ、涙を流しながら倒れる自分の妻の姿が。
「……おいっ、なにがあった!」
シャープが駆け寄ると、
バチッ!
静電気のような衝撃が体を走る。
「この魔力は、ハデス様!?いや、ハデス様は城におられた、だとしたら。」
シャープは、妻の体に触れると、
感じられたのは冷たさと、後悔のみ。
「くっ、そういうことか、先ほどの化け物に、食われたということか……。」
体からは血が抜かれ、青ざめた顔は一生頭から消えることはないだろう。
「くそっ、すまない、我が判断を誤らなければ、お前を死なせることはなかった、あと少し早く帰っていれば守れたのに、我は、何をやっているんだ!!」
ガゴーンッ!
怒りの拳が、床を凹ませる。
「我にはわからない、この世界を変えることが正しいのか、変えることでこんな悲劇が生まれるのであれば、我は今のままでいい。いがみ合っていても、生きることはできる、だが、死んだら、全て終わりだ……。」
妻を抱きしめながら、シャープの心の叫びが、夜の町に響き渡った。
「それから、我はハデス様から距離を置いている。白き世界は、我と同じ気持ちを味わう者が何人も出て来る、そんな世界が正しいのか、我には分からない。」
「シャープ、だからお前は自分の罪を償おうとして死の道を選ぼうとしたんだな。」
「ああ、この世界に生きるのが怖くなった、だから逃げ出そうとしたんだ。その為に、お前たちを利用しようとした。」
「……シャープ、俺ならお前をその呪縛から解放出来るかもしれない。けど、俺はこう思うんだ。無念に死んでいった者への償いは、生き続けることなんじゃないかって。だって、たとえ死んでも先に逝った奴らに会える保証なんて1%もないんだから。」
「クロウガルト……我にまだ苦しめというのか。」
クロウはシャープの前にしゃがむ。
「今は苦しいだろう、俺も父さんと兄さんが死んだって分かった時は、後を追おうとした。けど、父さんから教えられたことを思い出したんだ、どうせ死ぬなら、最後まで生き抜いて死ぬべきだって。」
「……なら我は、どうすればよいのだ。」
「簡単よ、私たちが今回の事態の解明をする。それまで、スパルタを守ってくれれば私たちの勝ち、ハデス達の好きなようにさえたら負け、至極簡単だわ。」
「……そうか、なら我は、レイヴァーに賭けてみよう。この身が亡ぶまで、あがいて見せよう。」
「ありがとうな、シャープ。俺たちは先に進む、また会おうぜ。」
レイヴァーはシャープを置いて先に進む。
「レイヴァー、何て眩しい存在だ、この光は、スパルタにもさすのだろうか。いや、彼らなら。」
スパルタ内で、多くの事件が起きていることが分かってきた。
第63章 完
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第63章まで読んで頂きありがとうございました。
スパルタに入ると、そこには魔王10将軍の幹部、獅子のシャープがいた。
クロウが1対1の攻防を繰り広げ、スパルタに起きていることを知ることに成功。
スパルタでは、いったい何が起きているのか。
まだまだ戦いはこれから!
さらなる敵の登場!?
これからもレイヴァー応援しているぞ!
と思ってくださいましたら、
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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!
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