第297話 さようなら
「くそがっ、お前らなんかに負けるはずは!」
「あなたは勘違いしている!人は、1人で何でもできる存在じゃない、助け合うことでより良い存在になれるんだよ!」
「ふざけるな、げほっ、助け合いなんて言葉は片方の人間を楽させるだけの甘えだ、そんな言葉があるからこの世界は崩壊していくんだ!」
「じゃあホルム兄さんは、なんでハーデンに力を借りたの?その力は、あんたのものじゃない、ハーデンが作り出したまやかしの力だ。」
「俺はハーデンを助けてるつもりなんてない、俺が利用して俺の作る道の礎にさせるだけだ!」
ホルムも反撃しようと体を動かす。
「それは逆や!ハーデンは、ホルムの兄さんを自分の力を試す実験体としてとしか考えていない、だからエリュシオンでアークは死んだ、その後を追おうとしていることに何で気づかないんや!」
「俺は違う!アークなんかと同じにするなーー。」
「違わないよ、僕も兄さんも、他の蠢く会のメンバーも、ハーデンからしたら駒の1つでしかないんだ!もう戦いをやめてくれ、じゃないと本当に死んでしまう!」
「俺は、俺が正しいんだ!」
シュインッ!
ホルムの体から、赤い石のようなものが浮き出す。
「ノエルくん、あれだよ!あの赤い物から、禍々しい魔力を感じる。あれを壊せば!」
「ホルムを止められる。なら、僕がやることは1つ。」
シュンッ!
一瞬の隙をついて、ノエルはジュールから託された銃を取り出す。
(ジュールさん、あなたが僕に託してくれたこの武器は、こういう風に使うんですよね。誰かを、止めるための力として!)
そして、
「止まってくれ!兄さん!」
ダンッ!
パキンッ!
銃から放たれた弾丸が、赤い物に直撃しヒビが入る。
すると、
「ノエル、何をしたーー。」
ヒュイーンッ!
ホルムの体の周りを、台風のような突風が舞う。
「ノエルくん!離れて!」
「ああ!」
2人は距離を取り、ホルムを見つめる。
赤い物のヒビが広がっていくと同時に、魔力の暴走が始まりホルムを赤い魔力が包み込む。
「なに、これ。魔力が溢れ出してる、テーベの時と同じ感覚。」
「まさか、
「近づきたくても、今のこの体じゃこの圧力には勝てない、どうすれば。」
「うおぉぉぉ!!」
バァン!
ホルムの叫び声とともに、魔力がはじけ飛んだ。
集まっていた魔力は霧散し、ホルムは人間の状態に戻りその場に倒れ込む。
辺りは静寂を取り戻し、魔力も落ち着いている。
「兄さん!」
ノエルとサリアは傷だらけの体を庇いながら、ホルムのもとに駆け寄る。
「あ、ぁぁ。」
「兄さん、しっかりしてくれ。」
「待っていてや、今治癒魔法をーー。」
「いや、いい。俺は、助からない。」
「何言ってるんや!ただ魔力が枯渇しただけなら。」
スッ。
サリアがホルムの胸に手を触れると、
「っ!?うそ、でしょ。……心臓が、動いていない。」
「な!?てことは、さっきの赤いものが……。」
「多分、魔力によって形が変わってしまった心臓だったのかも。」
「そんな……。」
ノエルの顔が曇っていく。
その姿を見て動いたのは、
「ノエル、お前、は、悪く、ない。」
かろうじて話せるホルムだった。
「兄さん……。」
「俺は、ばか、だな。力が、手にはいる、なら、何でも、いいと、思った。だか、ら、あいつ、を、利用、しよう、って決めた。けど、使われ、たのは、俺、だった。」
「ごめん、兄さん。僕は、ただ兄さんを救うために蠢く会に入ったのに、それが達成できなかった。不出来な弟で、ごめんーー。」
「いや、お前、は、俺の、支え、だった。アイアコス、家を、出た時、お前は、ついて来て、くれたから。」
「え?」
ホルムはノエルの頬に手を触れる。
「アイアコス家、は、衰退する、のが、目に、見えてた。父さん、母さんの仲は、悪くなるだけ、何も、先に進まない。だから、俺は、逃げた。そんな、俺のわがままに、お前は、付き合って、くれた。」
「そんな、僕は僕の意志で兄さんと一緒にいたいと思ったんだ!だから、あの時離れたくない、僕の居場所を守りたいと思ったから兄さんを追いかけた!でも、結局は自分しか守れずに、兄さんは……。」
「気に、病むな。これは、俺のミスだ。お前は、何も、悪くない。なあ、エルフの姉ちゃん、ノエルを、託しても、いいか。」
「サリアに?」
「ああ、こいつは、真っすぐ、すぎる。だから、抑えて、くれる人が、必要、なんだ。ノエル、には、俺の後を、追わせないで、欲しい。刺した俺が、頼める立場じゃないが、聞いて、もらえないか。」
「当たり前なこと聞かないでよ。サリアが、ノエルくんを絶対に守る、レイヴァーとして、大切な仲間として、絶対に。」
サリアの目に、強い決意が現れる。
「ありが、とう。げほっ。」
口から大量の血が。
「兄さん!」
「ああ、ノエル、選択って、難しいな。お前は、間違えない、で、くれ。」
「ホルムさん。」
「レイヴァー、気を付けろ、ハーデンは、もう、最終段階、に、入っている。あいつのバックには、まだ何かがいる。気を付けーー。」
バッ!
突然、ホルムは2人を突き飛ばす。
「うわ!どうしたの、ホルムさんーー。」
「すまな、かった。」
バゴーンッ!
ホルムの体が、内側から爆発し辺りには魔力の塵が残る。
「うそ、まさかこれも、ハーデンの。」
「兄さん!」
2人の目の前に、ホルムの姿はない。
「兄さん、ごめん、僕は、助けられなかった。」
「ノエルくん。」
スッ。
サリアがノエルを優しく包み込む。
辺りの静寂の中に、ノエルの涙が零れる音が聞こえる。
「僕は、僕はぁぁ!!」
ノエルの心の叫びが木霊する。
ホルムは死んだ、ハーデンの手によって。
はたして、ハーデンの目的とは、白き世界の真の意味とは。
第58章 完
◆◆◆お礼・お願い◆◆◆
第58章まで読んで頂きありがとうございました。
サリアはノエルと戦闘をはじめ、ホルムが乱入。
レイヴァーとして生きる選択をしたノエルは、ホルムと戦闘に。
そして、ノエルの目の前で、ホルムはハーデンの力によって殺された。
蠢く会がまた動く!?
まだ戦いは続く!
これからもレイヴァー応援しているぞ!
と思ってくださいましたら、
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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!
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