第292話 侵入者

「斬り落とせ!烈風の翼ゲイルウィング!」


ブオンッ!

大きな風の刃がアーマーゴーレムを切り裂き、2体の対処を完了する。


「はぁ、はぁ、終わったみたいですね。皆さん、ご無事ですか?」


リィンが周りを見ると、アーシェとサリアのピンピンしている姿を見て、安堵する。


「クロくんとミーちゃんを助けに行かないと!アーちゃん、この先に魔力の乱れがあるって言ってたよね?」

「ええ、クロウ達が呑み込まれるときにかすかに感じたわ。急ぎましょう、いくら2人が強いと言っても、相手が相手だわ、合流しないと面倒なことになる。」

「では、あたしが先頭を行きます。後衛をアーシェさん、真ん中をサリアさんお願いできますか?」

「サリアは構わないけど、リィンちゃん無理しないで平気だよ!まだ、レイヴァーの常識はずれな動きに慣れてないんだから。」

「確かに、皆さんの動き方は誰も予想できないものばかりです。ですが、あたしもレイヴァーの一員になるためにこれまでやってきたんです、あたしの力、信じてもらえませんか?」


リィンの提案に、アーシェとサリアは顔を見合わせ、


「分かったわ、先頭をお願いするわ、リィン。その代わり、少しでも辛そうと判断したら交代させるわよ、リィンは頑張り屋だから自分が気づかないところで無理をしそうだから。」

「その分、後ろのことは考えないでいいよ!サリアもアーちゃんも、バックアップに専念するから!」

「ありがとうございます!こんな心強いバックアップがあるだけで、すごい安心です。」


スタスタスタッ。

3人は、正面から王国に歩みを進める。



少し歩くと、建物が見え始め人々の声が聞こえる。



王国の中は、他の町と変わらず人が行きかい、商いや屋台を出しているところが多く今までのどの町、国よりも賑やかであった。


「すごい賑わいだね、ここに蠢く会がいるなんて信じられない。」

「彼らは隠れるのが得意だもの、ばれないようにこそこそしているはずだわ。」

「……やはり、疑問ですね。ラスト王が生きているとあたし達に錯覚させたとして、この状況を見れば意味のないことだというのがすぐにばれるって分かってるはず。ニューマンは、そもそもラスト王を知らない、彼らは何をさせたかったのでしょうか。」

「最悪のパターンは、ラスト王が本当に生きている、あるいはのだとしたら、蠢く会は何かしてくるに違いないわ。」


3人が歩みを進めていると、


「っ!?この感覚、そんな噓でしょ!」

「間違いありません、これは!」

「モンスターが、来る!」


シュインッ!

空の至る所に闇のゲートが現れ、そこから多くのモンスターが雨のごとく降ってくる。


ガゴーンッ!

アリゲイルが着地した家は倒壊し、王国の民たちは大混乱。


「何が起きてるの!?」

「誰か!助けて!」


悲鳴が飛び交う中、1体のボアホーンが女性に突進してくる。


「嫌だ、死にたくなーー。」

参の舞サンノマイ悲哀の挽歌ソローエレジー!」


スッ!

ジャギンッ!

サリアのすり抜けざまの一撃が、ボアホーンをクリスタルに変える。


「大丈夫ですか!」

「え、は、はい、ありがとうございます。」

「ここは危険です、ギルドに向かってください!」

「ギルド?なんですかそれは?」

「え!?」


サリアは衝撃の一言に目を真ん丸にする。


「くっ、数が多い! 赤龍セキリュウ龍波ショウリュウハ!」


ガゴーンッ!

槍の衝撃波でアサルトビーを砕く。


「リィンちゃん!王国に、ギルドってないの!?」

「え!?アテナイにギルドがない地域なんて存在しないはずです!混乱しているだけではーー。」

「そうでもなさそうよ。 燃やせ!火炎弾ファイアーショット!」


ボアァ!

火の玉が、ドスフロッグを焼き尽くす。


「私も何人か避難させようとしたけど、ギルドの意味が通じていなかったわ。」

「そんな、アテナイでギルドのことを知らない人なんているわけ……まさか、あり得るのでしょうか。」

「何か、可能性があるものがあるの?」

「噂でしか聞いたことありませんが、魔力を膨大に消費する記憶を改竄する魔法があると。まるで、血のホワイトデイの時のように。」

「っ!?確かに、クロウからニューマンは血のホワイトデイで生み出されて、オールドタイプの時の記憶はないと言ってたわね、それを小規模で再び起こしたというなら、合点がいくわね。」


シュインッ!

3人が戦っていると、目の前に1つの闇のゲートが。


「今度は何?」

「……やっぱり、来てしまうよね。」

「あなたは!」

「……そっちこそ、やっぱり出てくるよね、ノエルくん。」


3人の前にノエルが姿を現す。

その顔は、とても苦しそうで、見ていて心が痛む表情だ。


「何、あなた1人で私たちを倒せると思っているの?」

「そんなことはできないよ、僕もレイヴァーの強さは理解している。1人でも抑えられればいいと思っているよ。」

「だったら、サリアと付き合ってよ。あなたと、話したいことがたくさんあるんだ。」

「分かった、2人は先に行くなら行って構わないよ、もちろん3人で僕を倒しに来てもーー。」

「そんな無粋なことはしないわ、あなたはサリーとじっくり話し合いなさい。」


ズザッ!

アーシェとリィンは先を急ぐ。



ここに、サリアとノエルの戦いが始まろうとしていた。

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