第274話 犯罪者

晴れ渡る次の日を迎え、レイヴァーはパノラマに向かい歩を進めていた。


残り3割ほどだろう、アテナイへと続く結界が見えてくる。


「今回は問題なく入れるね、リィンちゃんとノエルくんがニューマンだし、クロくんも平気なのかな?」

「際どいところだろうな、この結界は血のホワイトデイが起きてから作られたものだから俺だけだと弾かれるかもな。」

「昔のことはどうでもいいわ、早く入るわよ。」


スッ。

アーシェが先頭で、アテナイに入っていく。


「気を遣ってくれてるのか、あいつ。珍しいな。」

「珍しくはないと思うよ、クロくんが気付いてないだけで!」

「え?そうなのか!?」

「クロは戦闘以外のことをもっと鍛えるべきだな。」


スタッ、スタッ。

全員がアーシェの後を追うようにアテナイに入る。



何ヶ月ぶりのアテナイだろう、新しくなったレイヴァーは帰ってきた。


より強く、より固い絆で結ばれた彼らはパノラマに向かった。



「ダイカンさんはかなり急いでる様子だった、僕たちじゃなく他のギルドに任せることは難しいのだろうか?」

「そこも疑問なんです、ナウサも人手は少ないですが強い戦士の方がいます。お父さんなら、たとえあたし達が必要だとしても何か対策を考える気がするんです。」

「対策をしても、どうにもならなかった可能性はないのか?レイヴァーは正直この世界で1位2位を争える力を持ってると私は思う。その力が必要なほど、緊急事態な可能性も。」

「ミラ達が考えてることが全てあってるとしたら、尚のこと急がなきゃだな。あと1時間くらいか。」


事実を確認するべく、レイヴァーは足早にパノラマに向かう。




そして、パノラマに入ると、



「ここが、目的地か?」

「そうみたいだね、ただ。」

「何も異常は感じられませんね、普通の町というよりそれ以上に閑散としたところですね。」


レイヴァーが目にしたものは、そこに人の姿はなく建物だけがある状態。


だが、誰かに侵略されたということもなさそうだ。



町は荒れているわけではなく、ただただ静寂に包まれているだけなのだ。


「なぜ私たちをここに呼んだのだろうか、人がいる気配もないし緊急事態とは感じられないな。」

「少し調べてみようか、こんなに静かな町は何か変だ。」


クロウとアーシェ、サリアとノエル、ミラとリィンで別々に町の中を捜索する。



だが、入った時と同じ。


周りの建物は綺麗なままで、人だけがいないというのが見て取れる状況だった。


「なあ、ここをどう思う、アーシェ?」

「あまり考えたくはないけど、人だけがこの町から消えてるというのが正しい気がするわ。魔力も全く感じないし、人の気配も全くないのが不安だわ。」

「そうだな、けど人だけを消すことなんて可能なのか?どんな魔法や戦い方だって、傷一つくらいはつくだろ。」


全員が捜索を終え、再度入り口に集まる。


「何か、情報は手に入ったか?」

「ううん、サリア達の方も何もなかった。」

「あたし達の方も、ここと同じく誰もいませんでした。……皆さん、1つ気になることが。」


リィンが手紙を取り出し、皆に見せる。


「あの時は慌てていて気付けなかったのですが、この手紙はお父さんからのものではない気がします。」

「え!?リィンちゃんなんでそう思うの?」

「書き方です。お父さんは、かなり口下手なところもあって文字にするのも箇条書きで簡潔な文しか書けないんです。ですが、これほどしっかりとした手紙をあたしは見たことがありません。」

「仮にそうだとして、何のために僕たちをここに送る必要が?それに、ダイカンさんのことを知っている人なのは間違い無い、後はーー。」


ズンッ!

今まで何もなかったパノラマに、一瞬にして大きな魔力が生まれる。


「何か来るわ!」

「私たちが感じられないということは、魔力持ちか!」

「そう見たいです、しかもいきなり現れたことを踏まえると可能性があるのは。」

「蠢く会のやつらか!」


ドスッ、ドスッ。

レイヴァーの前に、黒いローブを着た者、そして、体が人の3倍はある大きな存在も一緒に現れた。



そして、その後ろにはパノラマの町民であろう多くの人が。


「やっぱり蠢く会ね、今度は何をする気かしら!」

「まあまあそんなに焦るなよ、魔王の娘!ちゃんと公開してやるからよ、なあ、ノエル!」

「その声、兄さん!」


バサッ。

フードを脱ぐと、その姿はノエルの兄であるホルムであった。


「あれが、ノエルさんのお兄さん。」

「貴様、この町に何をした!」

「何もしてないさ、俺の後ろに全員いるだろう?」


スッ。

ホルムの後ろには、目が虚になっている人達が大勢。


「なんだ、あの人たちは何かおかしい、僕たちが出会ってきたアテナイの人達とは何か違う。」

「さあ、聞けお前ら!」


ホルムは、大きな声で話し始める。


「この町は、食事もろくに与えられず、飢餓に瀕していた!そして、周りに頼ってもだれも助けには来なかった、それは誰のせいかわかるか!!」

「……。」

「分からねえよな、だから俺が教えてやるよ!!お前達の目の前にいる、魔族の女!アーシェリーゼ・ヴァン・アフロディテのせいなんだよ!!」

「はっ!?てめえ、何言って!」


ホルムはアーシェを町の元凶として公表しだした。


アーシェが狙われた理由は、ホルムの狙いは、はたして。


第53章 完



◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


第53章まで読んで頂きありがとうございました。


エリュシオンでゆっくりと時間を過ごそうとしていたレイヴァー。

そこに、ダイカンからの不思議な手紙が。

アテナイのパノラマに向かうと、そこにはホルムが、彼の狙いはいったい。


アテナイ編スタート!

蠢く会の目的は?

レイヴァー応援しているぞ!


と思ってくださいましたら、

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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!

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