第267話 王の言葉
レイヴァーの戦闘は終わりを迎え、王のゼオンは確保成功、アークの命は絶えておりクロウとミラは埋葬を済ませた。
戦いの後、2人の表情を見た4人は何も声をかけられなかった、蠢く会への怒りや恨みなどの感情が溢れ出していたのだ。
そして、仮面を付けたままの王は手を縄で縛られて床に座らせられていた。
王も了承して、観念したのだ。
話せることを話すということで、レイヴァーは王と話し始めた。
「それではゼオン王、あたし達から質問をさせてもらいます。その仮面は、蠢く会から手にしたものですか?」
リィンが話の中心となって、王から情報を得ていく。
「ああ、そうだ。確か、血のホワイトデイが起きたすぐ後に俺のところに奴らは現れた。」
「それって、蠢く会の人達が集団で現れたということですか?」
「ああ、何人いたかは正確に覚えてないが、7人くらいいたはずだ。」
「7人か、俺たちが出会ったのは6人だからまだ1人はいそうだな。それで、あんたはそいつらに従ったのか?」
「俺もそんなに弱くない、初めは兵士が攻めかかったが瞬殺された、俺も巨人族だからな、やられっぱなしは許せなかったからこの斧で戦ったさ。」
王は過去を思い出しながら話していく。
「腕に自信はあった、今はお前達には迷惑をかけてしまったが、あの時何人かは倒せると思っていた。……だが、目の前に出てきた大柄な男1人にすら全く叶わず敗退した。名は確か、ハーデン。」
「ハーデンですって?私とクロウが初めて出会った蠢く会のメンバーね、まだ直接戦ったことはないのだけど、王が全く歯が立たないほどの強さということ?」
「そうだ、だが違和感もあった。もちろん、俺は全力であいつらを倒そうとした、だが、その力があいつの前でだけ抜けちまうような感覚があった。その後に、気付いたらあいつらに捕まえられていた。そして、この仮面を渡された、そこからはお前らの予想してる通りだ。」
王は敗北した後、蠢く会に殺される覚悟をしていた。
だが、彼らから伝えられたことは全く予想をしていなかったこと。
エリュシオンを混乱の渦に陥れろ。
それが、蠢く会からの命令だった。
そこからは、闘技会が変わっていき、衰退を辿って行った。
「そんなことが起きて、反抗する勢力もいたはずですよね?どうやって対処したのですか?」
「確かにあった、特に俺の行動がおかしいと察知して話をしてきたのが、アトラースの2人だった。」
「っ!?私の両親か!?どうした!2人はどうなったんだ!」
「落ち着けミラ。」
クロウが飛びかかりそうなミラを、その手を引き抑える。
「ああ、2人は俺が変わってしまったと最初に気づき、力ずくでも吐かせようとした。だが、2人は俺なんかよりかなり聡い、無駄な被害を出さないために2人を追放することで、国民に俺の危険さを分からせることを提案してきた。」
「2人を追放?てことは、ミラの両親は。」
「生きているぞ、この王国から2時間ほど離れた小さい山の所に、今も暮らしていると聞いている。」
「……。」
ガクンッ。
ミラは力が抜けてしまい、体が倒れそうになる。
「おいっ、ミラ!」
スッ。
途端にクロウが支えとなり、ミラを起こす。
「生きて、いた。父も母も、生きていた。私は、私は。」
「なあみんな、俺はミラを連れて両親の所にこれから向かう。王との話は、任せてもいいか?」
「ええ、早くミラさんを安心させてあげて、クロウがついていくなら問題ないでしょ。」
「皆、すまない。恩にきるよ。」
スタタタタッ。
クロウとミラは城を出て、王が示した山へと向かった。
「良かったです、これでミラさんの旅に意味があったということが証明されそうですね。」
「あと王様、サリアは気になるんだけどさ、その仮面は蠢く会からもらったんだよね?」
「ああ、だが初めて奴らが来た時ではない、去年くらいにアークが持ってきたのだ。これが、俺に最強の力を与えると伝えてな。そして、アークはエリュシオンに度々姿を現すようになった。」
「その仮面の危険性については、何か聞かされていますか?」
「いいや、付けた瞬間から力が強くなるから管理に気をつけろとしか言われていない。」
王は自分の仮面に手をあてる。
「だが、今この状態で話をさせられているということは、外してはいけない何かがあるんだろ?」
「さすが王様、仰る通りです。落ち着いて聞いて頂きたいのですが、その仮面を渡しに来たアークは、別の仮面をつけてクロウさんとミラさんと戦闘した後、命を落としました。その仮面が、割れた時には命は絶えていたんです。」
「アークが死んだのはお前達の行動からなんとなく察してはいた、だが、仮面が原因とは知らなかった。」
王も知らなかった仮面のこと、だが徐々に情報も集まってきていた。
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