第265話 力の目的

30畳ほどの狭い空間に、仮面をつけた者が3人。


特にアークからは、異質な力を2人は感じていた。


「いいねいいね!バイブス上がってきたよ!」

「上がりきって、オーバーヒートするなよ! 空の光ソラノヒカリ九式キュウシキ飛輪ヒリン!」


シュンッ!シュンッ!

2刀から、数えきれない数の斬撃が放たれる。


「そんなこともできるんだ!楽しいね!」


ガギーンッ!ガギーンッ!

アークがダガーで巧みに捌きながらクロウに迫る。


「そう簡単に、リーダーの前に行けると思うなよ! 参の光サンノヒカリ覇王の咆哮レグルス!」


ガゴーンッ!

大振りの回転斬りが、壁ごと削りアークを弾き返す。


「さらに力が上がっている、これが狼かーー。」

「烏も忘れるなよ! 雨の音アメノオト九式キュウシキ天泣テンキュウ!」


ドスッ!

ザッザッザッ!

アークを踏み台にし、落ちるスピードも重ねて折りたたみ式剣の連撃がアークに傷をつける。




しかし、


「ははっ!無駄無駄!」


シュイーンッ!

傷がついた1秒後には、傷が癒えていく。


「ちっ、チート野郎が。」

「次はこっちの番だよ!」


バゴーンッ。

強烈な足蹴りが、クロウを襲う。


ズザーッ。

完全に受け流すことはできなかったが、直撃は避けた。


(あいつも相当戦闘力が上がっているな、無闇に突っ込むことはできないな。)


彼らの戦闘において、全員が感じていること。



この部屋で全力を出すには、狭すぎるということ。


その中で効率的に立ち回る方法をクロウは考えていた。



「あれ?もう休憩かな!!」

「んなわけねえだろ! 空の光ソラノヒカリ十式ジュウシキ白夜ビャクヤ!」


スッ!

ジャキンッ!

2刀の居合斬りが、アークの腹に×印を刻む。


「痛っ、やるねえ狼!」

「へぇ、痛覚は残ってるんだな、うれしい情報だ!」

「でも、回復すれば問題なし!」


シュイーンッ!

再度傷が塞がれる。


その隙を、ミラは見逃さなかった。


「傷が治り続けるなら、治らなくなるまで攻撃するだけだ! 伍の光ゴノヒカリ不滅の波動アタナシア!」


バヒューンッ!

数メートルはある斬撃がアークに突き進む。


「おわっと!」


シュンッ!

高く飛び、斬撃を避けると、


「さすがに避けるよな、ミラの攻撃は!」


クロウが先読みして飛んでいたところにアークの姿が。


「まさか、誘導されたーー。」

拳の響ケンノヒビキ十式ジュウシキ豪雷ゴウライ!」


ガッガッガッ!

空中での連続蹴りが嵐のように浴びせられる。


ドゴーンッ!

受け流せなかったアークは、地面に叩きつけられる。


「えほっ、やっぱり強いねーー。」

「まだ終わっていないぞ! 始の光イチノヒカリ金剛の一撃アルデバラン!」


バギーンッ!

鋭い縦斬りが、アークを吹き飛ばす。


クロウとミラが一緒に過ごした時間ははるかに短い、だが2人の連携は熟練のパートナーのように見えた。


「ふぅ、さすがにこの力だけじゃ2人をぶっ飛ばすのは無理か。」

「なんだ、降参でもするか?」

「冗談きついね、逆だよ逆、君たちには僕には勝てないって痛感してもらおうと思って!」


次の瞬間、


アークの髑髏の仮面がみるみる大きくなり、骸骨の手足のようなものが生え上半身を覆った。


まるで、上半身は骸骨、下半身は人間のキメラのように。



「おいおい、何だあの姿。」

「分からないが、さっきまでとは雰囲気が違う。特に、あの両爪は何かやばそうだ、触れないことをおすすめする。」

「言われなくても、力を使われる前に倒すぞ!」


ズザッ!

2人がアークに接近した瞬間、何か奇妙なものを感じ取った。


(なんだ、この道を通ったら危険なにおいがする……まさかうそだろ!)

「ミラっ!」


ガシッ。

ズザーッ。

クロウはミラを抱えながら横に跳ぶ。



すると、


バゴーンッ!

何もなかった地面から、骨の槍が無数に突き上がってきた。


「大丈夫か、ミラ。」

「ああ、すまない、これは魔法か?」

「いいや、俺が何となく感じ取れた、だとしたら魔力じゃない何か異質なもので作られたと考えるべきだろうな。」

「なるほどな、厄介なことをしてくれる。」

「……。」


アークは無言のまま立ち尽くし、指1つ動かさない。


その姿はあまりに奇妙で、近寄ることを躊躇うほど。


「なんだあいつ、さっきまでのお調子者感はどこに行きやがった。」

「あの髑髏に支配されたのではないか?さっきの攻撃も、奴がしているというより何もない空間に無理やり作り出されたという表現の方が正しい気がする。」

「でも、あいつを止めねえとな! 獣の声ケモノノコエ八式ハチシキ大蛇の咬切ヒュドラ!」


シュンッ!

バゴーンッ!

大剣から、鋭い斬撃が飛び交う。


しかし、


アークは直撃を受けたにもかかわらず、まるで何もなかったかのような素振り。


「マジかよ、白烏レイヴンの力で上乗せされてるんだぞ、びくともしないとかあり得るか?」

「実際あり得てしまっているようだぞ、あの仮面は人の命を食べ、使用者の傷を癒すものだとアークは言っていた。だが、本当はそんな都合のいいものではなかったのではないだろうか。」

「まさか、アークも取り込まれてるってことか?」

「可能性は十分ありーー。」

「コロス。」


シュンッ!

弾丸のごとくスピードで、今まで全く動かなかったアークが接近する。


「ちっ、来るぞミラ!」

「何とかあの仮面を壊すぞ、でないとこの城も持たない!」


2人も武器を構える。


はたして、アークに何が起きたのか。

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