第258話 アークの罠

時を同じくして、アークはミラとサリアに追いつかれ、戦闘態勢をとっていた。


腰にダガーを差し、サリアと同じスタイルのようだ。


「なんだかなあ、僕はもうお役御免で帰ろうと思ってたのに、しつこいな君たちは!」


ズザーッ!

ミラとサリアが隣の部屋に入り込んでくる。


「逃がさないよ、アークさん!サリア達もあなた達とたくさん戦ってる、なんでこんなことするのか教えてもらうよ!」

「そうだな、エリュシオンにお前達は何をするつもりなのか、白状してもらおうか。」

「はぁ、蠢く会の大ファンで困るね、本当に。じゃあ、僕もやすやすと話すわけに行かないからさ、僕の手で死んでくれよ!」


シュンッ!

まばたきをした瞬間、サリアの目の前にアークが。


「早い! 初舞ハジマリノマイ剣舞ブレイドダンス!」


ガギーンッ!ガギーンッ!

ダガーとダガーが激しくぶつかり合う。


蝶のように舞うサリアに対し、蛇のように柔軟にしつこくアークは攻撃を仕掛ける。


サリアもアークの動きに対応していく。


その間に、ミラは斧に力を溜めていた。



そして、


「ミラさん!」

「待っていたぞ! 伍の光ゴノヒカリ不滅の波動アタナシア!」


ギュイーンッ!

バゴーンッ!

大斧から放たれた斬撃が、サリアが引くと同時にアークを襲う。



「うぐっ!」


バゴーンッ!

アークは壁に叩きつけられる。


「どうした、お前の力はそんなものではないだろ。」

「はははっ、僕の力はこんなものですよ、だからもっと優しくしてもらえないかな。」

「ふざけないで、あなたの体から魔力は微かにしか感じない、ニューマンだとしたら明らかに隠してる証拠です。」

「……厄介なエルフだな、このまま終わらせてお前達も苦しまないようにしてやれたのにな。」


ガギーンッ!ガギーンッ!

サリアとミラが、アークとぶつかり合う。


「さっきの言葉、どういう意味だ。私たちが苦しむとは、聞き捨てならないな。」

「えー、そんな簡単に教えてあげないよ!まあ、もう少し僕を傷つけられたら教えてあげなくもないかな!」

「じゃあ、望み通り傷だらけになっても後悔しないでね! 伍の舞ゴノマイ眠りの小夜曲スリープセレナーデ!」


グルルンッ!

ジャギンッ!

縦回転しながら、アークにさらに傷をつける。



ここで、サリアは違和感を覚える。


(何、さっきから何度も攻撃を当ててる、サリアだけじゃなくてミラさんも。なのに、なんでアークは、笑っているの?)


サリアに迫るアークに対して、ミラが斧を振り下ろす。


ズジャンッ!

さらに右手に傷が入り、アークの体には多くの血が。


「へぇ、やっぱり強いんだね、レイヴァーは。」

「当たり前だ、私が唯一認めてるチームだからな、貴様が思ってるよりも遥かに強いだろうな。」

「うん、本当に強いよ。だから、僕の本質が出てきてしまいそうで困っちゃうよ!」

「何言ってるんだ、貴様はーー。」

「ミラさん!離れて!」


ズザッ!

ミラは、サリアに手を引かれアークから離れる。



その瞬間、


バゴーンッ!

魔力の波が、アークの周りに生まれ衝撃波として放たれる。


その威力は、壁や地面に大きな傷が生まれる。


「な、何が起きた。」

「魔力を隠してたのに、一瞬で数百倍に膨れ上がったんだよ。多分、魔力を隠すのがアークの特技なんだと思う。」

「さすがだエルフ、半分正解だ。それともう1つ、僕の特技は残ってるんだよね。」

「私には、傷つけられることが怖くないように見えるがな、むしろ楽しんでるように見えるーー。」

「大正解!!」


ミラの言葉に対し、アークが大きな反応を示す。


「僕さ、自分でも気持ち悪いって思うくらい痛いのが好きなの!でも、僕が傷つくだけじゃないよ、傷ついて苦しんで、顔が歪む相手の姿を見るのも大好き!だから、僕はあることをしたんだよ!」

「まさか、仮面か!」

「そう!巨人さん、いや、狼さんは鋭いね!あの仮面はね、まだ完成してないんだよ。でも、一瞬なら君のような力を宿すことができる。まあ、そのあとは。」

「命の灯火が消えるってことだよね、これまで仮面をつけた人がそうだったように!」


ニヤリ。

アークは奇妙な笑みを浮かべる。


「正解正解!!2人とも賢いね、ぜひ蠢く会に入って欲しいなーー。」

「ふざけたことをしてくれてるな、貴様!」


バゴーンッ!

ミラの怒りが斧を伝わり、地面を凹ませる。


「命の大切さを、貴様は知らないな。そんな風に扱うとは、もはや同じ人間とすら思えん。」

「そんな酷いこと言わないでよ、僕も君も同じ人間なんだよ!君だって、何人も殺してるだろ?つまり、そこのエルフは知らないけど、狼さんと僕は同志と言っても過言じゃない!」

「ふざけないで!ミラさんはあなたとは違う、命を助けるために力を尽くした、あなたは命を好きなように遊んで使ってるだけ、全く別だよ!」

「じゃあ本当にそうか、これから確認しようか!」


バヒューンッ!

アークが迫ってくる。


3人の戦いもさらに激しくなっていった。

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