第256話 対面

ガガガガガッ。

部屋の奥が扉のように開き、その奥には大柄な男が金色に輝く椅子に座っていた。


奥の部屋は他のどの部屋よりも広く、眩しいほどに宝石が飾られていた。


これが、裕福さの象徴と言わんばかりに。


「あの人が、エリュシオンの王なの?」

「そうだ、血のホワイトデイの後、王が奴に変わりそのままこの国もおかしくなってしまった。」

「ゼオン、だったか。あいつが何をしたいのか、聞き出さねえとな。」

「あははっ、良かったねレイヴァー!僕に殺される前に王に会えて!」


スッー。

アークはふわふわ浮かびながら王のそばによる。


「王様、レイヴァー6人のうち4人はここにいます。こいつらがいなくなれば、それに、あなたの力も使いたいですよね?」

「そうだな、役に立ってくれて助かったよ、アーク。もうお前は下がっていろ、ここからは俺の狩りの時間だ。」

「はぁい、それでは。」


スッー。

アークは10mほど離れた隣の部屋に続くドアに向かう。


「貴様、待て!」

「ミラさん!」


ズザッ!

ミラとサリアがアークを追う。


「俺の獲物が、勝手に動くんじゃねえよ!」


ガゴーンッ!

椅子から姿を消した瞬間、ミラの目の前にゼオンの姿が。


「早い!?」

「お前が、ハーフの狼か。殺し甲斐がありそうだーー。」


ガギーンッ!

王が振り下ろす拳を、クロウが折りたたみ式剣で受け止めた。


「なんだ、お前から死にたいのか、烏。」

「死にたいわけねぇだろ、てめぇに話をつけに来たんだよ!調子に乗ってる王様よ!」


ギンッ!

拳を弾き、クロウはゼオンと対峙する。


そして、ミラとサリアに向き、


「ミラ!サリア!アークは2人に任せる!こっちは、俺とアーシェでやる!」

「分かった、後で会おう。気をつけろよ。」


タタタタタッ。

逃げたアークを、ミラとサリアは追いかける。


王は斧を持ち、どっしりと構える。


「なんだ、獲物が2人に減ってしまったか、勿体ないことをしたな。」

「安心しろ、王様。てめぇが目にしてる獲物の牙は、どんなものよりも鋭いぜ、四肢が千切れないように、命が喰いちぎられないように気をつけな。」

「それと、勝手に灰にもならないようにお願いね。」


ズザッ。

クロウとアーシェは戦闘態勢に入る。


「はははっ!威勢のいい獲物たちだ!まあいい、お前たちを殺して、俺の世界を作り出す足場となってもらおう!邪魔をする奴は、この手で捻りつぶすのが、エリュシオン流だ。後悔しながら、死んでいけ!」


ズザッ!

王が弾丸のようなスピードで突撃してくる。


「さぁて、アーシェ。こっからは!」

「私たちの力の見せ所ね、私に合わせなさい、クロウ!」

「いいや逆だね、俺に付いてこい!アーシェ!」


シュンッ!

クロウが前衛、アーシェは後衛で戦闘を始める。


「烏、貴様は狼と同じくらい邪魔な存在だ!」

「ミラのことか、光栄だな、俺の中で最強の戦士と同等に見てもらえるなんてな! 雨の音アメノオト四式シシキ叢雨ムラクモ!」


ガギーンッ。

折りたたみ式剣の突き刺しが、斧と火花を散らす。


「やはり戦闘狂だな、烏!」

「はっ、てめぇにはそう映るのか。俺はただ、お前を静まらせたいだけだ、なにも狂ってはいねぇよ!なぁ、アーシェ!」

「そうね! 爆ぜなさい!爆焔華アマリリス!」


ズザッ。

バゴーンッ!バゴーンッ!

巨大な火球が、クロウが王から離れた瞬間に直撃する。


「ぐっ、やはり魔法は厄介だな。」

「あら、それは好都合ね。こっちは、得意分野だから!」

「お前、今俺事燃やそうとしてなかったか?」

「気のせいよ、まぁウェルダンにならないようには気を付けておくわ! 落ちろ!六水晶クリスタル!」


バキバキバキッ!

ガギーンッ。

王の頭上から、氷の塊が降り注ぐ。


「ちっ、邪魔だ!」

「おなかがお留守だぜ!」


スッ!

目にもとまらぬ速さでクロウは接近していた。


「ちっ、ちょこまかとーー。」

雨の音アメノオト初式ショシキ時雨シグレ!」


ジャギンッ!

居合斬りが、王の体に傷をつける。


(なんだこの体、金属でも埋め込まれてるのか?)



そう、本来なら深く刃が突き刺さる勢いだったが、表面に傷をつけ、血が垂れる程度であった。


「ふんっ、鋭いのは見せかけか!」

「ちっ!」


ガギーンッ。

斧の切り上げを受け流し、


「穿て!紫電ライトニング!」


ビリリッ!

バゴーンッ!

鋭い雷が、王の動きを鈍らせる。


その間に、アーシェと合流する。


「なぁアーシェ、あいつの体どう思う。」

「さっきの刃の通り方からして、普通の体ではないわね。魔法も、足止めにはなっているけど、大きなダメージにはなっていなそうね。」

「頑丈さが売りってところか、じゃあやることは1つだな。」

「ええ、私たちの力で無理やりにでもこじ開ける。ギアをあげていくわよ、クロウ! 始まりの力ファーストギア入力オン!」

「そう来なくっちゃな! 憤怒の鎖レイジチェーン解除リリース。」


バヒューンッ!

2人は力を解放した。


王との戦いは、さらに激しさを増そうとしていた。

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