第255話 王

「またそれか、いったい何なんだお前たちが作ろうとしている白き世界ってのは!」

「簡単だよ、選ばれた者しかこの世界にいらない、今の世界にはいろんな物が複雑に絡み合っている。そんな美しくも、生きやすくもない世界を続けることに、何の意味がある?」

「選ばれた人間だと、お前らだから町を襲って何人もの人たちを誘拐したのか!」

「誘拐じゃないよ、選抜しただけだ。まぁ、使い物にならなかった奴らが多すぎて、僕たちも予想していなった産物になってしまったけどね。」

「まさか、それが、。」


アーシェの口から、小さな声がこぼれる。


「さすが、元魔王の娘さんは賢いね、大正解だよ!ゴーレムはもともと人間、さらに適性があった者はさらに強いゴーレムになれる!そして、資格があった者にはとある報酬が渡される。」

「あの赤い薬か、私たちが戦った猿の仮面をつけた者が持っていた!」

「そういうこと、君たち選ばれし6つの家系の仮面はどうしても作れない、けどそれに近しいものは作れたんだ、僕たちの力でね!」

「ふざけたことをするのね、あなた達蠢く会は、世界を支配する神にでもなるつもり?」

「神か、まああながち間違いじゃないね。これが、世界をきれいにするのに一番早いやり方、白い世界を作れるんだよ!」


ドクンッ。

クロウの心臓が、激しく波打つ。


「そうだ、そこの男、アレスだったな。君が今まで何をしてきたか覚えているかい?」

「クロくんのしてきたこと……それって。」

「そうだよ、君は多くのゴーレムを殺してきた!不殺の掟だの言っておきながら、結局はもう何人もの命を奪ってきたんだよ!」

「……。」


黙り込むクロウ。



それもそう、今まで自分が仲間のためにしてきたことは救済ではない、ただの殺人と変わらなかったのだから。


その事実に、心が悲鳴を上げていた。


「ふざけたことを言ってくれるな、黒いの!自分たちの理想を叶えるためなら、何をしても良いっていうのか!」

「そうだよ、それだけの力が僕たちにはある。やるべきことをやってるんだ、何も悪いことはしていない!」

「そんなエゴで、国民がついてくると思うの!あなた達が作るのは白き世界じゃない、ドス黒い地獄よ!」

「何とでも言うがいいさ、現にそこのアレスはもう戦えそうにないよ?現実ってのは残酷だよね、今まで自分が正しいと思ってやってきたことがひっくり返されたら、心が壊れてそこでおしまい。いやぁ、可哀そうに。」

「あなた、いい加減にーー。」


ボァァ!!

アーシェの手のひらに大きな炎が。


「あははっ!怒りに呑まれたか、アフロディテ!」

「悪いけど、私はクロウほど優しくないの。いざとなったら、あなたを灰が残らないほどに燃やしつくしてあげるわ。」

「それで?アレスが立ち直ると思うのかい?」


ガクンッ。

クロウは、力なく膝から崩れ落ちる。


その手から、2本の刀が零れ落ちる。


「クロくん!」

力の入らないクロウにサリアが駆け寄る。


「俺は、間違っていたのか……。」

「クロ君しっかり!クロ君だけが背負うものじゃないよ!」

「ほら、彼はもう戦えないよ、なんてったって心はもう死んでしまっているんだからね!」

「さっきからうるさいぞ、黒いの。」


ズンッ!

ミラの斧が、地響きを起こす。


その顔は、威嚇だけで人を殺められそうなほど。


「貴様が何をしようが、どんな手を使おうが関係ない。今私は、心底キレている、こんな感覚は初めてだ。これが、このドス黒い感情がアレスが感じたものか。もちろん、貴様のその体が無傷で済むと思うなよ。」

「怖い怖い、アトラースだけが戦ってもこの先どこまで持つ!いずれはお前も壊れておしまいだーー。」

「黙りなさい!」


バヒューンッ!

アーシェの周りから、魔力により風圧が生まれる。


それは、どん底に突き落とされていたクロウにも届いていた。


「私は誓った、クロウと共に生きると。そして、クロウにできないことは私がやると、そのために私はここにいる、クロウは私の心臓。その心臓をあなたは侮辱したのよ、覚悟はできてるわね!」


2人の覚悟は、クロウを少しずつ立ち直らせていた。


(そうだ、今まで俺が間違えてきたなら、その罪を償わなくちゃいけない。ここで、楽になろうなんて考えるのは甘えているだけだ。生きて、生き続けて、俺がやるべきとを、この世界の謎を突きとめて父さんたちの願いを叶える。それが、俺の生きる意味だ!)


カチャッ。

クロウは落とした刀を手に取る。


「クロ、くん?」


サリアが細い声で心配する。


「悪い、みんな。俺は、進む、ここで諦めるのは俺らしくない。」

「なんだと、ここまで何人も殺してきたお前が、この先何ができるというのだ!」

俺が間違えたなら、間違えを経験にして先に進む、そして必ず目標にたどり着く、途中で立ち止まるのなんて俺は俺を許せない、

「面白いではないか、烏の!」



アークではない、野太い声が奥から聞こえる。


「もう1人誰かいる?」

「この声は、エリュシオンの王、ゼオンだ。」


ミラには、その声の主が分かっていた。


果たして、4人の運命は。


第49章 完



◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


第49章まで読んで頂きありがとうございました。


城に入ることに成功するレイヴァー。

そこでは、残酷な運命を突き付けられる。

しかし、クロウは受け入れ先に進む。


大きな戦いが!?

王の考えとは!?

レイヴァー応援してるぞ!


と思ってくださいましたら、

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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!

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