第252話 真の巨人
「
ガゴーンッ。
鋭いかかと落としが巨人族の兵士をダウンさせる。
相手は数にして50人。
対するレイヴァーは6人。
数だけ見れば、圧倒的に不利だが、
彼らだけは例外の様だった。
「落ちろ!
バキバキッ!
ドスンッ!
氷の塊が、複数の巨人を吹き飛ばせば、
「
ゴスッ。
ミラの峰打ちでさらに数を減らす。
リィンが前に出れば、サリアが後ろに下がりバックアップ。
ミラとクロウが道を切り開けば、アーシェがその道を閉ざさぬよう巨人たちを足止めする。
さながら、彼らの戦いは1つのショーにすら見えた。
数で優っていた巨人族の中にも焦りが生じる。
「なんだこいつら、俺たちが倒すどころかまだ1発も入れられていないぞ!」
「逃げ帰ってきた兵士の話だったら、力はあるが個人個人ではそこまで危険じゃないって報告だったろ……。」
「その報告が間違ってたんだ、その時のこいつらは本気じゃなかった、そして6人が集まることで、足し算じゃない、掛け算で強くなってやがる。」
ガゴーンッ!
さらに多くの兵士が吹き飛ばされる。
まるで、目の前で嵐が起きたかのような激しさ、そして圧倒的な破壊力に戦意を喪失している者も。
ただし、クロウたちは1つのことを必ず守っている。
誰1人殺していない。
クロウが守る掟は、レイヴァーにもしっかり浸透しており日常のごとく対応していた。
その戦い方が、さらに兵士たちに力の差を示していた。
「アーシェ、あと何人いるかわかるか?」
「残り半分、20人強っていうところね。それと、誰も死んでいないわ、そこも心配なく。」
「さすが、レイヴァーは強いな、恐れ入ることが多すぎる。」
「ミラさんも、サリア達と一緒に動いてるんだから、強い人の中の1人だからね!」
「まぁ、力だけは誰もミラに勝てないだろうな。」
「アレス、貴様バカにしているな?後で、みっちり私の力を教え込んでやろう。」
ガゴーンッ。
ミラの1振りが、3人の兵士を吹き飛ばす。
(あれにみっちり教え込まれたら、体が何個あっても足りねえよ。)
「クロウさん大変そうですね、遠くから応援しています!」
「見捨てるのが早くないか?リィン?」
余裕を持ちながら、着実に数を減らしていく。
「くそっ、騎士団長はまだか!あの方がいらっしゃれば、こんなやつらすぐにでもーー。」
ガシッ。
ノエルの手が、男の頭を掴む。
「今、騎士団長と言ったかい?それはどこにいるんだ?」
「あがっ、わ、分からぬ。だが、あの方がここに来たらお前たちの終わりは確定しても同然だ!」
「ふぅん、そうかい、ありがとう教えてくれて。」
ドサッ。
ノエルは手から離し、
「クロウガルト!こいつらの中には、まだ騎士団長がいるらしい!現れる前に、早く王国の中に!」
「王国の中にいることは考えられないんですか?」
「僕とサリアリットは王国内で兵士から追われた、その時に気配を感じなかったから可能性は低いだろう。」
「なるほどな、そんじゃあ全員中に入るぞ。」
「いや、全員じゃない。」
ゴスンッ。
ノエルの肘が、兵士の顎に入る。
そして、クロウとノエルが背中合わせになる。
「どういう意味だ、全員じゃないって。」
「ここにいる兵士も、王国の中に入れたら面倒だ。それに、城の中だけならまだしも町の人にまで僕らの酷評を噂されたらたまったものじゃない。」
「なるほどな、どんな嘘だとしても王国兵士の言うことは聞き入れかねないな。だとしたら、誰が残る?」
「僕だけで十分ーー。」
「あたしも残ります!」
ジャギンッ!
槍で巨人族を吹き飛ばし、リィンが近寄る。
「リィンさん?大丈夫だよ、僕の力は知っているだろ?」
「だからです、クロウさんと同じでノエルさんも1人で背負いがちです、まぁ、クロウさんより頭がいいので無茶はしないと思いますが。」
「何で今俺のことしれっとディスった?」
「なので、あたしのことは保険くらいに考えておいてください。もし、騎士団長が来たとき、2人ほしかったってなるかもしれません!」
「……そうだね、分かった。クロウガルト、そっちは任せるよ。」
ガギーンッ。
さらにノエルは兵士をノックダウンさせる。
「あぁ、そっちも気をつけろよ!アーシェ、サリア、ミラ!城の中まで強行突破する、俺に続け!」
「えっ!?まぁ、ノエルくんとリィンちゃんが残るなら平気かな。」
「そうね、私たちの頭脳担当の2人だもの、クロウに続くわよ!」
「了解した!」
ダダダダダッ。
4人は、門の近くの兵士を蹴散らし、城の中に入っていく。
「さぁて、じゃあリィンさん、役割を全うしようか。」
「はい、というより本当は気づいていたんじゃないですか?騎士団長がもう来ることを。」
ドシンッ!ドシンッ!
少し離れた位置から、地響きが聞こえる。
「……すまない、嘘をつくつもりはなかったんだが。」
「別に、責めたりしませんよ。むしろちょうどいいじゃないですか、頭脳担当のあたしたちの戦い方、見せてあげましょう!」
「いいね、それ乗ったよ!」
数十メートル離れた先に、明らかに大きい体が。
ノエルとリィンは、はたして。
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