第246話 闘技会の秘密

ズザッ、ズザッ。

図書室に入ってきた男は、辺りを見渡す。


そして、あるものが目に飛び込んでくる。


「ん?あれは。」


1歩ずつ図書室を進み、その大きい足で着実に目についた場所に近づく。


そんな中、サリアとノエルは息を潜ませていた。


(サリアリット、これで本当にばれなのかい!?)

(多分大丈夫!サリアを信じて!)

(多分って!それにかなり苦しいんだが、こんなに圧迫しなくても。)

(しょうがないよ!ほら静かにして!我慢!)


そして、男が立ち止まった場所には、


「……来月の献立?そんなに飯が気になるやつがいたのか、珍しいな。」


男が向かった先のテーブルには、来月の献立が書かれた資料が。


特に疑問に思わず、目の前に開かれていた献立の資料を閉じ、棚に戻した。



そして、男は出ていった。


ガチャンッ。

図書室には再び静寂が。


「よしっ、作戦成功じゃあ解除するよ。」


シュンッ。

誰が想像しただろうか、

2人は天井から地面に着地する。



そう、2人は高く飛びサリアの植物魔法で咄嗟に天井に枝をロープの様に伸ばし、蜘蛛のように張り付いて耐えていたのだ。


だが、咄嗟のことであったため、ノエルにサリアが重なる形で強めに貼り付けてしまったため、ノエルは呼吸すらしんどい状況であった。



「ふぅ、危なかったね!」

「えほっ、えほっ、なあサリアリット、僕と君を別々に天井に張り付ける方法もあったんじゃないかい?」

「あっ、たしかにそれならもっと楽だったね、まあ助かったんだから結果オーライでしょ!」

「僕はある意味死かけたんだけどね。まあ、窮地を助けてくれてありがとう。」


そうして、2人は図書室を後にする。


「そうだ、魔力を感じるって言っていたけど今はどのあたりにいるかわかるかい?」

「ううん、それが図書室で資料を探している間に急に途絶えちゃったんだよね。」

「急に途絶えた、てことは魔力を持っていた物が遠くに移動したか、人だった場合消されたか。」

「でも、人だった場合不思議だよね、何で1人だけ王国に入ることが許されてるんだろう。コリントスでの話じゃ、国民ですらそう簡単には入れないって話だったのに。」


2人は何が起きているのか整理しながら王国内を進む。


そして、ふと違和感に気づいた。


「サリアリット、やはり変だ。先ほど出ていった兵士も含めても、王国内の兵士が多すぎる。僕らがいるのは、この城の5階にあたる。そこから見渡すだけでも1000人はいるよ。」


2人は兵士にばれないように部屋から道、道から部屋に移動していたが確かに兵士の数は異常だ。


傍から見たら、戦争の備えをしているようにすら見える。


「確かに数は多いね、それにみんな装備も潤沢。これは、待ちの人たちから徴収したもので買ったに違いないね。あとは、なんでこんなに準備をしているのか。」

「好戦的な種族だとはいえ、他国に戦争を仕掛けるようなことはここ数十年なかった。あとは、何が考えられる……。」


サリアはふとテーベのメイリンが死ぬ間際に口にした言葉を思い出す。


「ハーデン、蠢く会。」

「えっ?どういうことだい?」

「メイリンが死ぬ直前に口にした言葉は、蠢く会のハーデンだった。簡単に言えば、裏で糸を引いていたのが蠢く会になるよね。そしたら、今回も何かやろうとしているのかも。」

「……たしかに、可能性はあるね。ということは、今弱っている国はテーベだ、テーベを侵攻する可能性があるねーー。」

「っ!?そんな!?」


サリアの目がぎょっと見開かれる。


「どうした、サリアリット?」

「この城の1階、入り口からかなり奥の方に魔力がいきなり現れた。それも、ここに侵入する前に感じたものと同じ感覚。」

「てことは、無かったところに生まれた。可能性があるとしたら、蠢く会のワープしてくる魔法か!」

「その可能性は大きいよね、今もその魔力は消える雰囲気がない、ということは城の巨人族とは敵対関係じゃない。だとしたら、テーベと同じだよね。」

「ああ、むしろテーベの時よりたちが悪い。もし、王が直々に関係を構築して、アンジュ王女のような内側の助けが今回はいない。圧倒的に、僕たちが不利だね。」


2人はさらに情報を集めようと、階段から3階に降りる。


諜報活動は、今のところ上手くいっているようだった。





ところ変わり、アーシェとリィンの闘技場近く。


2人は不審な動きがないか辺りを見渡し、探っていた。


「どう、リィンの方は何かあった?」

「特に異変はありません、皆さん普通に過ごしているだけの様ですし怪しい物も特に見つかりませんね。」

「闘技会の中止とはいかなくても、何か動いてくると思うのよね。それとも、私の考えすぎかしら。」

「いえ、あたしも同じ考えです。仮に、クロウさんかミラさんが優勝したら面白く感じない人も多いと思います、それを妨げに来る可能性は大きい、何かきっかけがあればーー。」


リィンはふと離れた木を見ると、


「っ!?アーシェさん!あれ!」


スッ。

リィンが指さしたその先には、


「黒いローブ、蠢く会!まさか、直々に出てくるつもりね!」

「逃がしたら面倒です、行きましょう!」


2人は20mは離れている黒いローブを着た者のところに進む。


はたして、蠢く会は何を企んでいるのか。





さらに場所は変わり、高級そうな絹に、茶器。多くの芸術品で飾られた部屋に、1人の黒いローブ姿が。


その手には、猪の仮面がもたれていた。


そして、低い声でこぼした言葉。


「白き世界成就のために。」


男はいったい……。


第47章 完



◆◆◆お礼・お願い◆◆◆


第47章まで読んで頂きありがとうございました。


サリアとノエルも滞りなく作戦を遂行中、そして多くの疑問も浮かび上がる。

そして、アーシェとリィンの前には蠢く会が。

果たして、彼らの目的は。


蠢く会が本格活動!?

事件が多発!?

レイヴァー応援してるぞ!


と思ってくださいましたら、

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ここまで読んで頂きありがとうございます!今後とも宜しくお願いいたします!

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