第228話 目覚め
レイヴァーとゴーレム及びライアとの戦闘に終止符をうち、クロウとの死闘も何とか終わりをむかえた。
しかし、クロウとアーシェ、ミラは重傷を負い、サリアとノエルも動くのがやっと、リィンも連戦で疲れが出ていた。
そこに、戦闘の激しさに危機感を覚えたコリントスの巨人族が助けに訪れた。
辺りは戦闘の激しさを物語っていた。
地面は凹み、至る所に血が飛び散り、木々や岩は崩れていた。
そこに、かろうじて生き残っていたレイヴァーを巨人族がコリントスへと連れ帰り事なきを得た。
サリアとノエルは打撲などの怪我を身体中にしており、1週間は動かないよう命じられた。
リィンも軽傷ではなかったが、3日で元通り動けるようになった。
アーシェは、魔力を0に近いほど使い切っていたので、体の傷も含め10日間は療養が必要と伝えられた。
ミラは巨人族が到着すると同時に気を失うも、次の日の昼には目を覚まし、アーシェと同じく10日間の療養を指示される。
そして、クロウだけはまだ眠っていた。
アーシェの必死の治療で、なんとか一命を取り留めた。
だが、出血がひどく体の筋繊維も引き裂かれ、生きてることが奇跡だと医者は話していた。
この傷では、起きるまで何日かかるのか、そもそも目を覚ますのかも怪しいとすら言われていた。
そんな中、2日後の夜。
「……っ。」
パチッ。
クロウはうっすらと目を開き、木でできた茶色い天井を見つめる。
まだ意識がはっきりしていないのだろう、言葉を発することもできない。
スッ、スッ。
首を動かし、今の状況を把握しようとする。
「……れは、生き……のか。」
なんとか言葉を捻り出し、誰かいないか周囲を探す。
そこには、
「アレス!目を覚ましたか!」
ズザッ!
全身至る所に包帯を巻き、痛々しい姿のミラが隣のベッドから起き上がり声をかけた。
「ミ、ラ。」
「ああ、良かった。さすが、アフロディテが言っていたように頑丈だな、本当に生きているとは。」
「ミ、ラ。声、が。」
「ああ、乾燥して声が出ないのか?今水を飲ませてやる。」
スタッ。
ミラは立ち上がり、近くのテーブルに置かれたコップに入った水をクロウの口元に持っていく。
ゴクッ。
まだ体を動かせないクロウは、ミラに水を飲ませてもらう。
「あ、ありがとう。話せそうだ。」
「アレス、生きててくれて本当に良かった。」
ニコッ。
初めてではないだろうか、ミラがクロウに対して微笑みかける。
その反応に、クロウも気づいていた。
「ミラ、そんなふうに、笑うんだな。」
「うん?私が、笑っていたか?」
「ああ、初めて見たよ、ミラの笑顔。明日は、雨でも降るか?いや、槍か?」
「ほう、どうやらバカにされてるようだからもう一度眠るか?」
「ごめんなさい、もう寝過ぎました。」
ミラはクロウのベッドに腰掛け、
「なあ、アレス。起きていきなりで悪いんだが、聞いてもいいか?」
「仮面のことか?」
「……ああ、そうだ。私は、仮面のお前を正直殺すつもりで全力で戦っていた。それでも、私だけでは力負けしていた、アフロディテがいなかったら私はどうなっていたか分からない。」
「悪かった、俺が呑み込まれたせいでーー。」
「いや、謝るのは私にじゃない。その言葉は、彼女のためにとっておけ。私が聞きたいのは、声を聞いたのか知りたいのだ。」
真剣な眼差しで、ミラはクロウを見つめる。
「ああ、聞いたよ。真っ暗闇の中で、
「
「それって、父さんから受け取ったこの指輪と関係があるのか?黒烏野郎って言ったら、あいつも同じことを言ってたって伝えられたんだ。」
「そうだな、後で皆にも話すが、まずはお前に話そう。この世界には、私、そしてアレスを含む6人が神として祀られてる存在の力を継承している。」
ミラは落ち着いた声で話していく。
「神、俺がこの体に宿しているのが
「
「戦闘に特化した2人ということか。それじゃあ、残りの4人はどこにいるんだ?」
「詳しいことは分からない。ただ、噂で聞いたことがあるのは、その家系の人は既に死んでいるということだ。」
「そんな……そもそも何なんだ、俺たちの仮面は?なんで神が継承されてる?」
スッ。
ミラは戸惑いを見せる。
その表情を、クロウは見逃さなかった。
「言いにくいことなのか?」
「……正直な、今のお前に伝えていいことなのか分からない。」
「そうか、けど俺は、自分の運命から目を背けたくない、父さんが成せなかったことを、俺がやるべきことを知っておきたいんだ。」
「……分かった、ならば簡潔に伝えよう。」
スッ。
ミラはクロウの耳のそばによる。
そして、放たれた言葉。
「この世界を壊し、創造した者の名前が私達に引き継がれてる。」
「っ!?世界を、壊す?創造する?……まさか、代々伝えられてる不殺の掟ってのは。」
「ああ、私たちの先祖から続く贖罪だよ。」
仮面、そしてクロウとミラの家系がだんだんと明らかになる。
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