第222話 烏と狼の対面

クロウは顔全体に烏の黒い仮面を付けている。



それに対して、ミラは顔の右半分にのみ白い狼の仮面をつけていた。


そして、いやでもわかるミラの戦闘力の上がりよう。



覇気のようなものを体から放ち、少しでも油断すれば意識が持っていかれそうな雰囲気。


「ミラさん、仮面をつけたの!?それって、いったいどんな力ーー。」

「すまない、アフロディテ。この力は、アレスを取り返してからしっかりと話す。時間がないんだ、私に合わせられるか?」

「……分かったわ、あなたの動きに合わせるから好きに暴れてちょうだい、隙があったらあの気味悪い仮面を砕いてやるんだから。」

「頼もしいな、ではサポートは任せるぞ!」


シュンッ!

アーシェの視界からミラが消え、気付いたらクロウの目の前まで迫っていた。


「お前、俺と同じ力を使えるのか。」

「同じであって同じでない。その力は、貴様が勝手に使っているもの、アレスを返してもらうぞ!」

「そんなこと出来るものか、こいつはもう死んでるからな!」

「ふざけたことを吐かすな!アレスはそこで生きてる、私が証明だ! 始の光イチノヒカリ金剛の一撃アルデバラン!」


スッ!

バゴーンッ!

ミラの大ぶりの一撃が、クロウの大剣と火花を散らす。


バヒューンッ!

武器同士の衝突から生まれた風圧は、辺りの木々を吹き飛ばしかねない威力。


「いい力だ、さっきの女よりは楽しめそうだ!」

「戦いを楽しむとは、私には理解ができないな!」

「楽しいものだろう!戦いに勝ち、自分の強さを証明する。それが、何よりも俺を幸せにする!」


ガギーンッ!

クロウはミラを弾き返すと、


「お前も分かるだろ、狼女!奪われるより、奪う側にいる方がこの世界は生きやすいと!」

「だからといって、1人の人間でしかない貴様が全てを手にするとでもいうのか!そんなのは不可能だーー。」

「不可能ではない!俺は、誰にも負けない力を持っている。現に、お前に力負けをしないことがその証明だ!」


ズザッ!

ガギーンッ!ガギーンッ!

斧と大剣が何度も激しくぶつかり合う。


アーシェは目で追うのがやっとの状態だった。



「早いなんてものじゃないわ、下手に魔法を打てばミラさんに当たりかねない。何か、何かいい方法は。」


アーシェは考えを巡らしている中、ミラは全力でクロウを止めようと奮戦する。


「お前の目的は、全ての人間を倒して自分が王になることだとでもいうのか!そんな生き方は、自分を滅ぼすだけだ!」

「なぜそんなことが分かる?俺は1人で生きてきた、俺は生きられるのさ!」

「その時点で間違っている!お前は、アレスの体がなければ生きていない、人は1人じゃ生きていけない生き物だ、なぜそんなことも分からない!」

「こいつは俺のただの器だ。こいつが生きてるってことは、俺が生きてる証明になる。こいつは他の人間よりも数段強い、ならこの先も生きていける光になる!」


ガゴーンッ!

ズザーッ!

ミラを吹き飛ばすほどの大剣の一撃。


なんとか耐えるが、ミラの全身に傷がつけられる。


「くっ、あの衝撃に肌が負けたか、厄介なんてものじゃない、下手したらこの世界を滅ぼしかねない力だな。」

「おいおい!そんなものかよ狼女!俺はもっと楽しみてえ、生きてるって感覚をもっと味合わせてくれよ!」


シュンッ!

ミラ目掛け、折りたたみ式剣が迫る。



そこに、


「燃え上がれ!白炎花フローラム!」


ピカーンッ!

ボァァ!!

クロウの進んだ真下の地面から、炎が立ち昇る。



「うっ、熱いな!邪魔だ!」


バヒューンッ!

折りたたみ式剣で炎の柱をかき消す。


「なんだお前、まさか自殺志願者か?」

「違うわ、あなたを連れ戻す救世主の間違いよ。」

「こいつを連れ戻す?はっ!無理だな、お前にそんな力はない、俺とやり合って勝てるわけがーー。」

「だからこそ、2人でやるのだ! 参の光サンノヒカリ覇王の咆哮レグルス!」


グルンッ!

ガギーンッ!

ドゴーンッ!

隙をついたミラの回転斬りが、クロウを吹き飛ばす。


その衝撃は、木を数本薙ぎ倒すほど。



「ははっ、2人で俺を倒すか。安く見られたもんだな、俺の力を!」

「安くなんて見てないわよ、あなたの力は危険なほど強い。だから、私たちはお互いを託し合うの。」

「そうだな、アフロディテがいなかったら、私はお前を殺すという選択肢しかなかった。だが、この2人ならアレスを連れ戻せる可能性がある。」

「可能性を信じて殺されるぞ?それでもいいんだな、愚かな人間ども!」


バヒューンッ!

クロウはさらに力を増し、辺りに風圧が巻き起こる。



「ミラさん、まだいけるわよね?」

「ああ、アレスを止めるまでは止まるわけにいかない!」

「ええ、いきましょう!」


2人はさらに攻撃を強めていった。





そんな中、ここはとある暗い空間。



「……っ、ここは、どこだ。」


そこには、肉の壁のようなところに顔以外埋め込まれているクロウの姿が。


「なんだ、これ、どうなってる。」

「目を覚ましやがったか、器。」

「お前は、誰だ。」


クロウが目にしたものとは、いったい。

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