第220話 烏と猿
戦いは変わり、仮面をつけたクロウとライアサイド。
「あははっ!最高だね、作戦通りにことが進むってのは!それに、あんたと殺り合えるのは想像以上さ!」
「お前は、殺す!」
ガギーンッ!ガギーンッ!
クロウの2刀とライアの槍が火花を散らす。
「槍が悲鳴を上げてるね、1発でも体で受けたら本当に殺されちまいそうだ!ゾクゾクするね!」
「うぉぉ!!」
ガギーンッ!
バゴーンッ!
ライアに振り下ろされた刀が地面に傷をつける。
傷と言っていいのだろうか、軽い落とし穴を開けるほどの威力だ。
「スピードが遅いよ!それじゃあ、狙ってくださいって言ってるようなもんだね!」
シュンッ!
シャッ。
クロウ目掛け突き進んだ槍が、頬を掠める。
だが、
ガシッ!
槍の刃が過ぎたと同時に、柄の部分を掴みそのまま投げ飛ばす。
「おうっ!怪力だね、あんたは!」
ズザーッ!
吹き飛ばされながらも体制を立て直したライアは、さらに槍で追撃に出る。
「お前が、あの人たちを!」
「そうだよ!あたしがあの巨人族どもを殺してやったのさ!」
「なんで、殺した!」
「あたしのための犠牲さ!世界を作るだとか、この世界は正しくないとか、そんなことはどうだっていい!!あたしは、戦いたい奴と戦う!そのためなら、なんだってやるさ、今回のターゲットが仮面をつけたお前だったからあいつらは死んだのさ!」
「ふざけやがって、ぶっ殺す!」
ガゴーンッ!
瞬時に大剣に持ち替え、大きな一振りでライアを吹き飛ばす。
バゴーンッ!
その衝撃は、目の前の木を綺麗に折ってしまうほど。
「いいねいいね!その姿のあんたは、今まで会ってきた中でも最高の存在だ!もっと、もっとあたしを楽しませろ!」
シュンッ!
ライラも決して無傷ではない、だが、この戦いを楽しんでいる彼女にはなんの障害でもなかった。
ガギーンッ!ガギーンッ!
クロウの力もスピードもこれまで見たことのないほど強力、だが、それを上回るスピードでライアは攻め立てる。
辺りの地面は凸凹に変わってきており、木々も折れてるものや傷だらけのもので溢れている。
相手に対する怒りが全面に出ているクロウ、戦いを心の底から楽しむライアの戦闘は他者が介入する隙すらも生み出さない。
「うぉぉ!!」
「はっ、そんなもの当たらないよーー。」
ガシッ!
クロウは両手に構えていた大剣を振る素振りをした。
だが、本命はその隙。
大剣に目がいっていたライラの右腕を左手で掴み、折りたたみ式剣を抜刀し、顔面目掛け伸ばした。
「ちっ、頭の回転も意外と早い!」
ガギーンッ!
ドゴーンッ!
確実に折りたたみ式剣は、顔面を捉えた。
気のせいだろうか、顔に突き刺さる音というよりは、金属に弾かれるような音が響いた。
木に叩きつけられたライアは、口から血を垂らす。
だが、その顔には。
「いやぁ、この力を使ってなかったらアウトだったね。あたしも、本気でやれるってことがわかって嬉しいよ!クロウガルト、いや、烏!」
ズンッ!
顔を上げたライアには、猿の仮面が付けられていた。
そう、コリントス近くで巨人族が死んだ時につけていた仮面と全く同じものが。
「お前も、仮面。関係ねえ、殺す!」
「ふんっ!今までのあたしじゃないこと頭に入れときな!」
シュンッ!
ピシャンッ!
クロウが拳で打ち込もうとした瞬間、目の前にいたライアは姿を消し、気付けば右肩に切り傷が入り背後に回られていた。
仮面をつけたライアの早さは、先ほどまでとは比べ物にならない。
鈍行の電車が、リニアに変わったかのよう。
「あははっ!やっぱり追いつけないね、あんたはその力をまだ完全に扱えていない!それが、あんたの限界ってことさ!」
「くっ、殺す!」
ガギーンッ!ガギーンッ!
ライラの目で捉えることがギリギリなスピードの攻撃を、クロウはなんとか捌く。
だが、防戦一方であるのに変わりはなかった。
「どうした、どうした!そんなんじゃ、あたしは殺せないよ!」
シュンッ!
さらに槍がクロウの顔に迫る。
その攻撃を、クロウは避けようとはしなかった。
「はっ、力を使いすぎたか、死にな!」
その距離残り20cm。
その瞬間、
「誰に口を聞いてる、猿が!」
「っ!?」
バゴーンッ!
クロウの周りに、衝撃波が生まれ槍を弾く。
「なっ、何が起きたーー。」
「ふんっ!」
ガゴーンッ!
ドスンッ!
クロウの正拳突きが、ライアを直撃し木を3本砕きながら止まる。
「えほっ、えほっ。そうかい、それがあんたの本当の力、仮面に選ばれた純粋種のそれか!」
「邪魔をするなら、殺すぞ!」
シュンッ!
ガゴーンッ!
ライラに向け、大剣が投射される。
グルンッ!
攻撃を転がり避けると共に、大剣が2本の木を貫いていた。
その力は、クロウの力とは思えない、とても危険なもの。
はたして、ライアが口にした仮面に選ばれた純粋種とは。
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