第218話 2人の連携
「ミラさん!」
「私は大丈夫だ、キヒ達は弱点を見つけてくれ。」
「わ、分かりました。次あたしが危ないと判断したら交代してもらいますからね。」
「ああ、判断は任せる!」
ズザッ!
ミラは両手に切り傷が生まれているが、痛がるそぶりも見せず突き進む。
「ミラさんに無理ばかりさせられない!うちらも行くで!サリア!」
シュンッ!
ガギーンッ!ガギーンッ!
2人はゴーレムにダメージを与えつつ、回避を優先する。
「今までのゴーレムとは何か違うね、うちらがこの力でこんなに押されるんや、相当の手が加えられてる可能性が高いな。」
「目の前で多くの巨人族が犠牲になったのは分かるが、それ以外に何かあるということか?」
「多分だけどね。うちらの予測では、モンスターと人間、そこに何かを混ぜて新生モンスターは生まれてると予測してたんや。」
「なるほどな、だとしたら今回はモンスターは見当たっていないな、その例に沿わない特殊な力を使ったのは間違いなそうだな。」
「ぐぁぁ、怖い、来るな!」
バヒューンッ!バヒューンッ!
勢いに乗る拳の風圧が、地面を削り取る。
やはり、サイズ感も力もこれまでのゴーレムと比べ物にならない。
2人の動きから、ゴーレムの弱点はないかリィンとノエルは分析していた。
「ダメージは着実に入ってる。それが再生することはない、変わったのはサイズ感と力だけ?他に何か違う場所は。」
「何度かゴーレムと戦ってはいるが、見た目上は他に変化は見られない。動きは早いような気もするが、それだけじゃ何も解決にはならなそうだ。」
「通常個体のゴーレムも、特に弱点はない。でもそれは、あたし達が見つけられてないだけと仮定できる。他のモンスターには、確実に1つは弱点がある。……そういえば、蠢く会は何か石を割ってた?」
リィンは巨人族が犠牲になる瞬間を思い出す。
「私のショーに付き合ってもらうって行ってたけど、狙いはクロウさんに仮面をつけさせることだった?その力を奪うのか、クロウさんごと連れ去るとか?」
「僕たちをクロウから分断させるためにあのゴーレムは作られたということか。だとしたら、危険なのは僕たちというよりライラの方だ。正直、あの状態のクロウに勝てる人は存在するのか予想もつかない。」
「てことは、こちらのゴーレムは実験台ってこと?実験する……もしこれまでの個体が、1人とモンスター1体無配合なら、今回は人が数十名。それに赤い光、まさかっ!?」
ジャギンッ!ジャギンッ!
サリアの刃が、右足に深く入りそこから赤い光が漏れ出た。
「なんや?赤い光がさらに消えていく?おわっ!?」
「やめろ!痛い!」
ガギーンッ!
ズザーッ!
ゴーレムの拳を植物魔法で根を生やし、目の前に盾を作り受け止める。
「リィンちゃん!何かゴーレムから出ているの!何か予想できない!?」
「赤い光、やっぱりその可能性がある。考えたくはないけど。」
「何かわかったのかい、リィンさん?」
「はい、あたしの予測ですが、あのゴーレムは吸収した人の数だけ命がある、つまり数十回倒さないといけないかもしれません。」
「そんなっ、だとしたらあの光は。」
「1回分の命が流れ出たのだと思います。あの光が漏れた時だけ、痛みを訴えるのが異常でした。可能性は大きいかと。」
ブンッ!
ガギーンッ!
ミラの大ぶりの一撃が、肩から腹にかけて切り裂き、さらに赤い光が漏れ出る。
「ぐぁぁ!!やめろ、やめろ!」
「私の今の一撃で赤い光が漏れてる、その時は動きが遅くなるようだな。」
「みなさん!聞いてください!あたしの予測をお伝えします!」
「お願い!リィンちゃん!」
「今までのゴーレムも、弱点は正直見つかりませんでした。ただ、このゴーレムと通常のゴーレムの違いの予想は、犠牲にされた人の数だと思います。つまり、このゴーレムは犠牲にされた人の分だけ命がある。」
「まさか、数十回このゴーレムを倒せということか?」
ズザーッ!
ミラとサリアが、リィンたちと合流する。
「そうだと思います。あの赤い光は、失われた命が体から漏れ出してるんだと思います。つまり、2回分の命が今消えていった。」
「てことは、うちらが持久戦をしなきゃあかんということやな。サリア達は1発でも受けたら危険なのに、何度も倒さないとなんて、かなり厄介だね。」
「次は、あたしとノエルさんでいきます!お2人は、少し休憩をしててください!」
「無理しないでね、2人とも。」
ズザッ!
リィンとノエルが武器を構え突撃する。
「うがぁぁ!!」
「
グルンッ!
ガゴーンッ!
風を纏ったサマーソルトが、顎を捉える。
それに合わせて、
「
ザッザッザッ!
槍の連撃が、顔を捉える。
ブワァ!
さらに赤い光が漏れ出る。
「リィンさんは、僕が隙を作ったところを狙ってくれ。こいつの攻撃は必ず避けるんだ!」
「お気遣いありがとうございます、ノエルさんに合わせます!」
ズザッ!
リィンとノエルの華麗な連携で、第二ラウンドを開始した。
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